映画「パラダイム (1987)」が“オススメ”の理由と考察、その感想

②オススメ☆4

英題:Prince of Darkness

監督-ジョン・カーペンター 1987年 102分

脚本-マーティン・クォーターマス(カーペンターの別名)

出演-ドナルド・プレザンス、ヴィクター・ウォン、ジェームソン・パーカー、リサ・ブロント、デニス・ダン、他

映画「パラダイム」のあらすじ

ロサンゼルスの教会である異変が起こっていることに気付いた神父は、友人の大学の物理学者ハワード教授に助けを求める。

ハワード教授は、優秀な学生や知り合いの科学者を集め、教会の地下で発見された緑色の液体の分析を始める。

神父曰く、その液体とは悪魔が封印されたものであり、危険が近づいているという。

分析を始めるに連れ、狂ったような行動を始める者が出たり、寝ると皆同じ夢を見たり、不可解な現象が起き始める。

やがてその現象はエスカレートし、一同は教会に閉じ込められてしまう。

“オススメ”の理由と考察、その感想

ホラーの変態、カーペンター作品

面白かった。

ホラーというジャンルは、大抵嘘くさく、リアリティがなくて見てられないものが多いが、この作品は映像の撮り方や音楽などの演出で、独特のリアリティがあって惹きつけられる。

ジョン・カーペンターはそういう意味で、惹きつけるのがうまいというか、演出を良く知っているんだろうと思う。

ただ怖がらせるわけではなく、ドラマとしてきちんと見せ、うまい演出で緊張感を保ったまま、ここぞとばかりに気持ちの悪い映像を見せてくるなど、子供の頃に見ていたら確実に強烈に脳裏に焼き付いていたと思う。

ある種、ジョン・カーペンターは変態なんだと思う。

量子論の猫の観測の話だとかも出てきて、科学に造詣が深い臭いも悪くない。

学者や学者の卵たちが、悪魔という非科学的な存在と闘う、という真逆を対峙させるような発想に遊び心を感じる。

結局科学者たちも、悪魔の前では科学など通用せず、ただ物理的に闘うというのも良い。

最後の主人公の恋人が命を張って悪魔を封じ込める所は、いきなりすぎてびっくりと共にジーンと来た。

悪魔の近くで見る夢はみな同じで、未来から送信されている、などの発想も面白い。

なんでだろう、と思う所はあるが、演技も良いし、ホラーとしてはそれなりに楽しめた。

神父に対する皮肉

世界が終わるほどの大変なことが起きるかも知れないのに、情報が共有されていないのが、何なんだろうと思った。

あの神父が、もう少しちゃんと説明していれば、たくさんの命は救えたんじゃないかと思った。

最初から言っても信じないのはあるかもしれないが、もう少しあのタンクの危険性を教えてあげないといけない。

まあ、結局自分だけ助かろうとするような、せこい人間だった、あの女性が身を挺して世界を救ったことを、なんとも思ってない感じなんだろう。

しっかりしていなければいけない、指導者的立場の神父が頼りないという、キリスト教に対する皮肉の様な感じもして、良い。

あと、教会の周りに集まる浮浪者のような人たちは、一体何なんだろうと思う。

あの液体を飲まされている訳ではないのに、操られてしまうのは、一体何なんだろう。

まあ、そういった疑問なども、考えなくていいんだろう。

ともかくなんか見てしまう、というのが重要である。

人間ドラマがもう少し欲しい

正直、ホラーとしての演出、気持ち悪い雰囲気を、演者の演技やうまい演出で作っていくのはピカイチだと思うが、もう少しドラマがしっかりしていれば、もっと面白くなったと思う。

集まっている学者たちが、みんな浅い関係だし、主人公とその恋人も、出会ってすぐに恋人になると言う間柄で、誰かに思い入れて見る、という視点は欠如しているように思える。

カーペンターからしたらそんなものは大したことじゃない、と思っているのかもしれないが、演出に力が入っている分、そこは疎かになっている気がする。

淡々とそれぞれ学者たちが研究をしていくというのではなく、お互いのことがだんだんわかって、愛着が湧き、人間関係がある程度出来てから、それが壊れていく、というのであれば、ただ怖いだけでなく、色々な人間模様が見れて良かったと思う。

後半は、否が応でもみんなで協力せざるを得ないから、それなりに人間性が見えるが、前半はそれぞれどんな人間かまだはっきりとわからないので、前半でもっとはっきり人物像が分かっていたら、より深くなったんじゃないか。

もう少し長くなってしまってもいいから、謎の生命体について激しく議論し合う、などといった描写がもっとあっても良かった。

せっかくそこそこ優秀な学者たちが集まってるんだから、科学的な議論が行われるのも面白い。

あの中国系アメリカ人のキャラクターは分かりやすくて良かったが。

あの黒人の学者の狂いっぷりは、鬼気迫るものがあって良い、しかしどんな人だったかはほぼ分からない。

そういう意味で、もう少し登場人物たちを好きになれれば、最後に主人公の恋人が犠牲になった所もより感じられたし、全体的にもっとハラハラして見れたと思う。

まあ、それでもそこそこ楽しめたので、安上がりにお化け屋敷に行ったと思えば、コストパフォーマンスはめちゃくちゃいいが。

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