映画「IT/イット”それ”が見えたら、終わり(2017)」を“観て損はない”理由と考察、その感想

③観て損はない☆3

ITそれが見えたら終わり 英題:It

監督-アンディ・ムスキエティ 2017年 135分

脚本-チェイス・パーマー、ゲイリー・ドーベルマン、キャリー・フクナガ

出演-ジェイデン・リーバハー、ジェレミー・レイ・テイラー、フィン・ウォルフハード、ソフィア・リリス、ワイアット・オレフ、チョーズン・ジェイコブス、ジャック・ディラン・グレイザー、ジャクソン・ロバート・スコット、ビル・スカルスガルド、他

映画「IT/イット”それ”が見えたら、終わり」のあらすじ

1980年代、アメリカのデリーという田舎町では、児童が突如として失踪する事件が頻発しており、警察は住民に注意喚起を促していた。

一緒に遊んでいた弟ジョージーが行方不明になってしまった吃音の少年ビルは、学校や家庭環境、健康に問題を抱えるなど、周りとうまく馴染めない少年少女たちを集めて”負け犬クラブ”という集会を結成する。

そのメンバーには偶然にも、それぞれ違ってはいるが、最近恐ろしい幻を見てしまうことが共通していた。

また、図書館で調べ物をしていた負け犬クラブのベンが、27年周期で子供の失踪事件が発生していること、今年はその27年目に当たることを発見する。

ジョージーの失踪と関係があるかもしれないと思ったビルは、クラブで事件を解決することを決め、話し合いを行うが、そこにピエロのような姿をした化け物が現れるのだった。

“観て損はない☆3”理由と考察、その感想

スタンド・バイ・ミーのホラー版のような感じ

まるでスタンドバイミーのホラー版の様な話だった。

子供たちが、大人の手を借りずに、残虐な妖怪と闘うという青春もので、ホラーというよりは、子供たちの成長物語だと感じた。

ホラーって、ほとんどがただのサプライズか、残虐なシーンを見せるかのどっちかで、ドラマ的な要素に中身がない物がほとんどだが、この作品はドラマが比較的しっかりしているので、好感が持てる。

気弱な主人公の少年が、弟のために勇気を出して向かっていく所や、お姉さん的存在に対する思春期の少年たち特有の憧れ、理不尽な年上のいじめっこたちとの闘いなど、少年期のドラマとして、懐かしさを感じたり、淡さや苦さなど、色々考えさせられる所がある。

終わり方も比較的爽やかな終わり方なので、前向きで悪くない。

正体不明の残虐な化け物

ただ、あの誘拐されていた子供たち、浮かんでいた子供たちは戻ってきたのか、主人公の弟はなぜ殺されてしまったのか、分からない。

そこは、続編がありそうだからそこで明かされるのか?

あの化け物も、なぜ最後は子供にやられてしまったのか、じつはそんなに強くはなかったのか、手加減していなくなったのか、など、目的も良く分からない。

しかし、結局なんだかよく分からないけど、とにかく闘うべき相手であることに間違いはなく、なんやかんやで勇気を出して撃退した、という感じが、まるでこの作品全体が子供の目線で作られた話の様な気もする。

全て主人公の少年の妄想であるという感じもする。

調べてみたら、あの化け物は意識の集合体であり、恐怖を食い物にしていて、恐怖を感じれば感じるほど美味しくなる、という残虐極まりない化け物だった。

じゃあ、とりあえず浮かせているのはなぜなのか?ストックしていて、時々怖がらせたりするのか?などよくは分からない。

しかし、その謎の感じの怖さが、スティーブン・キングらしいと言われたらそんな感じもして、悪くない。

あの化け物の登場も、負け組と言われている少年たちにとって、勇気を振り絞るための良い機会になり、少年たちを強くするために現れたような気もしなくもない。

主人公は弟が連れ去られているので、あの化け物には良心がある、などとは言えないが。

負け犬感がもっと欲しかった

負け組少年たちのドラマは悪くないが、もっと面白くなっても良かったんじゃないかと思った。

少年たちの感じは悪くないが、いまいちガツンと来る感じがなく、物足りなさは感じる。

演技はそれぞれナチュラルで非常に良いが、特に普通の少年たちであり、負け犬という感じも特にないのが物足りない。

一体何が負け犬なのか、分からない。

負け犬じゃない少年たちとの対比や、負け犬クラブで群れないと惨憺たる孤立した状態になる、などの描写がほぼないから、普通に友達と遊んでいる少年たちという感じである、ビヴァリーとマイクを除いて。

悪い上級生にいじめられるのは、その上級生がおかしいわけで、その上級生に目をつけられているだけでは負け犬にはならない。

やり返せないから負け犬ってことか?

上級生にいじめられたらほとんどの子がやり返せないんだから、みんな負け犬になる。

独特のダサさがあったり、空気を読めないオタクだったり、集団生活に馴染めない連中の集まり、これは確かに冴えないな、目を付けられるのは分かる、というどよんとした感じがもっと欲しかった。

それぞれ個性的なだけで、特に強い劣等感を抱えている感じではなく、良い個性が集まった優秀なチームの気がする。

父から暴行を受けているビヴァリーと、黒人差別を受けているマイクは、確かに理不尽な現実に直面しているが、他の子たちは普通な少年である。

なので、大方普通の少年たちの一夏の思い出、のような感じである。

いじられている、もしくは何らかの理不尽なことで自信を無くし、劣等感満載の少年少女たちが、力を合わせて悪と闘い、この夏で精神的に成長出来たなら、大いに感動できたと思う。

めちゃくちゃいじめられて暗くなっているけど、クラブのメンバーの前では見栄を張り、身を挺して誰かを守ろうとしたりして、本当に人間として強くなっていくなどの描写があれば、涙腺は崩壊したかもしれない。

なので、そこの描き方がもったいなかったなと思った。

ホラーにしてはドラマはちゃんと描いている方だと思うが、登場人物が多すぎて描き切れていないのが残念だ。

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