映画「セント・オブ・ウーマン 夢の香り(Scent of a Woman)」(1992年)のあらすじと感想

①今すぐに見るべき!

監督-マーティン・ブレスト 157分 1992年

脚本-ボー・ゴールドマン

出演-アル・パチーノ、クリス・オドネル、ジェームズ・レブホーン、フィリップ・シーモア・ホフマン、サリー・マーフィー、ガブリエル・アンウォー、他

 

簡単なあらすじ

元軍人のフランク・スレイドは、軍人時代に手りゅう弾で遊んでいる時にその手りゅう弾が爆発し、盲目になってしまい、実の家族からも疎んじられ、退役してからは姪の家族と一緒に細々と暮らしていた。

姪一家が旅行に行く間、フランクを世話するため、高校生のチャーリーがアルバイトとして、彼の世話をすることになる。

破天荒な性格で、口汚いこともたくさん言うフランクに最初は戸惑うものの、一緒に過ごすうち、フランクは孤独を抱えた優しい人間なのだと気付くチャーリー。

生きる望みを失っているフランクは遂に自殺を試みるものの、チャーリーは身を挺してそれを止めようとするのだったが・・・。

「セント・オブ・ウーマン 夢の香り」の感想

アル・パチーノの最高傑作の一つ

面白い、こんなに見終わって良い意味で心に残る作品は、今までで指で数えるくらいしかない。

アル・パチーノの盲目の演技はもちろん、死を考えているフランクの人生観や、学校で悪者にされているチャーリーを助けに行くそのストーリーなど、惹きつけられる所が多い。

これは、全員見なきゃいけないと思う。

主人公のフランクの哀愁というものが、アル・パチーノの名演を通して実によく伝わってくる。

もう生きていてもしょうがない、と思っているフランクがチャーリーに促され、生きることを決めたその姿は、実に勇気づけられる。

果たして、自分はフランクに比べたら、はるかに幸せなんじゃないか、何をしているんだと、自然と前向きにさせられる。

そして、フランクが死ななかっただけでなく、チャーリーを助けに行く所がまた良い。

チャーリーの横でチャーリーを擁護しつつ、時に大迫力で校長を看破していくシーンは、完全に映画史に残る、見どころが凝縮されたシーンである。

格好良い、迫力がある、粋である、そして目が見えないという演技をした上でやっていること、これにアカデミー賞をあげなければ、一体誰にあげるのか、と思う。

賞など受賞していなくても、これはすごいので、これが見れたから良い、というレベルである。

見ていない人は、これを見ないと映画を見たとは言えないとすら思うので、ぜひ見て欲しい。

自分も大人になってから見たので、何を偉そうなことを言っているんだ、とは思うが。

金曜ロードショーや日曜洋画劇場でこれを流さないといけない、小学校や中学・高校で映画を見せるならこれを見せないといけないとすら思う。

コマンドーや沈黙シリーズも面白いが、何回も何回も刷り込むように見せるくらいなら、これも流してほしいし、学校で教訓じみた作品を見せるくらいなら、これを見せて欲しかった。

映画というものが人の心を動かす、ということを分かりやすく教えてくれる作品だと思う。

チャーリーはホフマンで良かったんじゃないか

フランクが自殺を試み、それをチャーリーが止めるシーンがあるが、チャーリーの振る舞いが大分物足りないと思った。

あの10代の年齢で、もし自分があの場にいたらと思うと大分怖いが、それにしてももう少し強く止めて欲しかった。

フランクの圧がすごい、というのもあると思うが、あまりにチャーリーが引いていて、弱弱しく止めるので、フランクはチャーリーに止められた、というよりも、自分で勝手に自殺を止めた、という感じが否めない。

フランクが自分の養子になるようチャーリーに迫っても、チャーリーは拒否し続けるが、むしろ自殺を止めるために「養子になる」、と言ってしまった方が自然だとも思う。

もしくは断るなら、毅然とした強い態度で、養子にはならないけどずっと友達だ、などと言えばいい。

そこのシーンは良いシーンだが、そういった、ただ引いている、中途半端なチャーリーの態度が非常に引っかかった。

なんだかんだでチャーリーの強い行動でフランクが思いとどまる、という事でなければ、フランクは最初から自殺する気はなかった、という事になってしまう。

死ぬ気もなく、自殺しようとしていた所をチャーリーに見せ、その後チャーリーを助けに行く、というのは、あまりに一方的に感じる。

チャーリーがフランクを助けた、そして今度はフランクがチャーリーを助けに来た、というのが一番理想的だっただろうに。

脚本と演技の落とし穴というか、監督がオッケーしてしまっているので仕方ないが、まあ、それでもやりたいことは分かるので、目をつぶろうという感じ。

生徒役でフィリップ・シーモア・ホフマンが出演しているが、ホフマンがチャーリーを演じた方が良かったんじゃないかと思った。

どうやって選ばれたのか分からないが、チャーリー役は重要なので、ホフマンだったら全然そこらへんの違和感を残さずに出来たのではないか、とも思う。

ホフマンの才能などまだ知られていない時期なので、主要キャストはルックスも良いクリス・オドネル、悪童はホフマン、と割り振られたのかもしれない。

また、ホフマンは悪童ぶりを演じるのもうまいので、そっちでも選ばれてしまう、ということもあるかもしれないが。

ホフマンの悪童っぷりも実に見応えはある。

ついついアル・パチーノの濃さに目が行ってしまうが、振り返ってみると、チャーリーの薄さがより面白くなることに水を差していると思ってしまう。

それでも、全体のストーリーやアル・パチーノの演技など、実に心に残るものになっているのは確かである。

最後のチャーリーを助ける壇上のシーンは脳裏に焼き付く

冒頭でも述べたが、この映画の最大の見どころ、ストーリーの全てが凝縮された大迫力のシーンが、このチャーリーを擁護するフランクの魂の叫びのシーンである。

チャーリーの横に座り、校長の詰問を次々と論破しながら、チャーリーがいかに潔白か、今チャーリーにやっていることがいかに無様な事なのか、圧倒的な迫力で訴え上げる。

「はみ出し者」と言われ、怒ったフランクは立ち上がり、手探りで自分の杖を探す。

これだけ怒りながらも、盲目である、という演技が全く崩れないあたりは、さすがである。

そして、自分の戦争体験を交えながら、この裁判のバカバカしさを述べ、杖でテーブルを思い切りたたくと共に、名台詞「5年前の私だったら、ここを火炎放射器で焼き払ってる!」と力強く言い放つ。

こんなに気持ちが良いシーンは他にないと思う。

もちろん気持ち良いというだけでなく、フランクの言っている事が深いし、自殺をしようとしていた人が今度はチャーリーを全力で守っている、というその状況自体、涙腺を刺激されるものがある。

フランクとしては、ただやれることはやった、くらいのもので、チャーリーのために、とか恩着せがましく思っている訳でもなんでもないので、それがまた粋で良い。

色んな意味で勇気づけられるシーンであり、見終わって実に心地良い感動に包まれる。

まだ見ていない人は、今すぐにでも見なければいけない。

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