ドラマ「アンチヒーロー(2024)-第一話」が”つまらない”理由と考察、その感想

⑤つまらない☆1

ドラマ 「アンチヒーロー(第一話)」

プロデューサー-飯田和孝、大形美佑葵 2024年-1時間8分

脚本-山本奈奈、李正美、宮本勇人、福田哲平

出演-長谷川博己、北村匠海、堀田真由、大島優子、一ノ瀬ワタル、他

“つまらない☆1”理由と考察、その感想

面白そうなタイトルだったが・・・

日曜夜9時から始まったドラマ、アンチヒーロー。
「あなたを無罪にして差し上げましょう」と言っている予告CMを見たがその言い方が薄く、きっとイマイチだろうなと思ったが、その格好良いタイトル名と日曜の夜に放送するということで、よほどの自信作で面白い話なのかもしれない、と思って一話を見てみた。
結果、めちゃくちゃつまらなかった。
途中からほぼ無感情でただ画面の前に座る、という非常に変な時間を過ごした。
甘く見ていた自分の頭をはたかれ、とんでもないものに手を出してしまった、と後悔した。
その主な原因は間違いなく主役の演じ方で、主役がこんな演じ方、存在感では、どんな重厚なストーリーでも駄作になるだろう。
ましてやストーリーや展開も目を見張るほどではないから、なおさらスカスカに見えた。

薄いキャラクターの主役、明墨

まず冒頭で、弁護士の明墨が拘置所らしき場所で犯人らしき人物に、犯罪者になったら終わりだ的なことを猛列
に畳みかけるシーンがあるが、もうここで萎えた。
ずっとセリフを言っているだけで、迫力もなければ説得力も存在感もない。
相手に一言一言しっかりとぶつけてるリアル感もなく、口を動かしているだけと言っても過言ではない。
物語の一番大事な、見ている者を引き付けなければいけないシーンでこれなんだから、先が思いやられる、というかもう終わったと思った。
なぜ撮り直さないんだろうか?
俳優だって失敗することもあるんだから、出来るまでやり直せば良いだけの話し。
演じた俳優も、映像見たら一発で分かるだろう、やばいやばい、まずったと。
監督含め全員分からなかったらもうお手上げだ。
これが、堺雅人ならやってのけたはずで、冒頭でガツンと引き付ける、期待感のあるドラマの始まりになり得ただろう。
作る側は、同じように出来たと思っているのか?
冒頭しかり、この明墨がドラマ中ずっと薄いので、見るのがきつかった。
怖い感じで畳み掛けるのも、ニコッと笑って敬語でしゃべるのも、余裕ぶった笑みで持論を展開するのも、ビックリするほど何も出来ていない。
こんなことを言うのはなんだが、素人演技丸出しで、演技ってこんな程度でしょ的な感じでやってるとしか思えない。
何かの表面的な真似をしようとしているようにしか見えず、独特の味が皆無だ。
そもそも、この人は演じるということの意味が分かっていないんじゃないかとすら思う。
シン・ゴジラでの演じ方もそうだった。
しかしそれは、それをやらしてる監督が悪いので、彼のせいではない、と言っておこう。
畳み掛けてしゃべる様子は半沢直樹の劣化版だし、明墨が法廷で敬語でしゃべる時に、語尾が「ですー」とちょっと伸びる感じは、古畑任三郎の表面的なインスパイアにも見える。
余裕がある感じの時はずっとカッコつけてる変なやつだし、見ていて恥ずかしくなってくる。
織田裕二が演じたスーツに似た恥ずかしさがある。
彼にだって独自の味があるはずなんだから、誰かの真似などする必要はないのに。
これが、この局が今一番力を入れているドラマの主役なんだから、この日本は狂っているのか?
最後の一番の見せ場の、あんたに障害があろうがなかろうが俺には関係ない、的な過激なセリフを畳み掛けるシーンも、見事にうわ滑っている。
その後、証人に不当解雇で訴えれば1000万はもらえる、無料で協力する、と手の平を返して優しく手を差し伸べるのも、その前のセリフが言えてないので、メリハリもない。
うさんくさい変なやつに見える。
そうだな、と一瞬金額を計算して考える仕草があるが、全然考えてる様には見えないうわべの演技。
このシーンに限らず、ほぼ全編通してこんな感じだ。
特に違和感がなく普通だったのは、明墨の実の娘だかどうかは知らないが、サヤという女子高生に電話で、サヤの好きな方で良いよ、今仕事中だから後で連絡する、などというやり取りや、
工場の子供と接する感じだった。
特に演じている感じではなく優しい普通の感じだが、きっと元々こういう人なんだろうと思う。
それならずっとこの優しい感じで演じずに行けば良いのに、無理に出来ないハードな面を演じる必要はないんじゃないかと思う
そういう演じ方に憧れているならしょうがないけど、これは練習でも発表会でもなく、本番だろう。
これが練習で、彼を育てるために高額なギャラまで払って作っているとすれば、この制作陣は彼の親族達か何かか?

タイトルに反する泥臭い普通の弁護士ドラマ

第一話しか見てないが、ストーリーに特にタイトルにあるようなアウトロー感はない。
アンチヒーローという言葉の意味は正確には知らないが、今のところ主人公はちょっと口が悪いだけのひたむきな敏腕弁護士だし、明らかに犯罪をおかした風の容疑者を弁護しているわけでもない。
今回の事件の被害者は態度が悪く、容疑者は普通の青年であるという風に描かれているので、アンチヒーローということにしたいのであれば、この設定は逆にしなければいけなかったと思う。
被害者は人の良い雰囲気の社長で、むしろ容疑者がタトゥーが入っていて態度が良くない青年で、はたから見たら誰しもこの青年が犯人に見える、それを弁護するなら良かった。
実は青年は見た目や態度とは裏腹に真面目な働きぶりで、社長が極悪で青年は何も悪いことをしていなかった、とかなら、誰しもが抱く偏見をぶち壊す面白いストーリー展開だと思う。
じゃあ良い人なのかと言うとそうではなく、弁護士事務所の良い宣伝になるし、金のためにやっているだけだ、と言い張れば、粋な感じも出る。
しかしそうではなく、そんなに悪そうでもない青年が、悪そうな被害者を殺した容疑を晴らそうとするストーリーなので、ごく普通の弁護士法廷ドラマだ。
検察もちょっと悪く描かれているので、普通にヒーローだ。
なぜこんなストーリーにしてしまったのか分からないが、見ている者を2話に引きずり込む力のない地味なストーリーで、タイトルとも程遠い。
しかも主役の演じ方がああいう感じなんだから、これは見るのにエネルギーがいる。
というか、見る目的がない。
誰も自分に見てくれなんて頼んでないが、スカッとする、もしくは深いドラマを見たい。
演技とか度外視で、法廷ドラマやトリックだけに興味がある人には良いかもしれない。
まだ少し盛り上がったシーンは、証人は実は難聴を隠し、嘘の供述をしていたことを暴き、証人が暴れる所だ。
この証人は、セリフが棒読みの所はあるが、味があり存在感もあるので、悪くない。
ただ、その後証人に明墨がまくしたてる所は、上述した通りスカスカだったが。
なので、ストーリーも普通なので、これを面白く見せるなら、主役にマンパワーが必要だと思う。
上でも述べたが、もしこれが堺雅人なら、十分に見れたドラマになっただろう。
自分は堺雅人信者ではないが、他に分かりやすい役者の例えがないので、つい例に上げてしまう。
証人に下手に出て丁寧にしゃべる感じ、事務所の中での怖い雰囲気、かと思ったら子供とたわむれたり、アウトローな意見をまくしたてることもする、全ての顔を嘘でなく出せる、かつ一人の人間として統一感もある、という高度な演じ方も要求され、主役の負担が大分でかい役柄だと思う。
といってもそれぞれちゃんと演じられてから次のシーンを撮る、ということを監督が繰り返せば良いだけの話しで、長谷川博己にも出来ない訳ではない、分からないけど。
そういうこともせず、役者に丸投げなのかもしれないが、それも含めて監督が悪い。
堺雅人はリーガル・ハイをやっているから、アンチヒーローをやる理由はないのかもしれない。
明墨はリーガル・ハイほどぶっ飛んでいるわけでもなく、ストーリーも普通で、何を見せたいのか不明だ。
長谷川博己が主演なら、アンチヒーローなんてタイトルや設定はいらず、優しく真実を追求する普通の弁護士ものにしたほうがよっぽど面白いんじゃないか?
ただ、月曜日仕事行くの嫌だな、と思いながら見ている者の気持ちをぶち壊すほどの破壊力のない、わざわざ日曜の夜9時にやるほどでもない、普通の法廷ドラマになるだろうが。
それでもこのアンチヒーローよりはマシなはずだ。
このドラマで良かったシーンは、上記で述べた通り、証人の味のある演技くらいで、あとは普通だった。
明墨弁護士事務所の人達も、特に不自然な人がいるわけでもなく、かといって特徴的な人達でもない。
しかし、脇役なので、これで十分といえば十分だろう。
新人弁護士の感じも悪くない。
むしろ明墨がちゃんと強烈で、存在感があれば、こういった脇役のキャラクターも光って見える様になるだろう。
それだけに、明墨の存在感は必須だった。
今後は、そういう弁護士事務所のキャラクターが絡んでいって、彼らがフィーチャーされる話しもあるかもしれない。
また、一話の最後に現れた、野村萬斎演じる検察の重鎮らしき人物が次第に明墨に牙を向いていくのだろう。
木村佳乃演じる検察は、明墨の味方なのか敵なのかは分からないが。
いずれにせよ、もうこの一話のストーリーがどう完結していくのか、ほぼ興味がない。
主役もストーリーも、どちらも引き付けられるものはこの回では何も見出だせなかった。

コメント