映画「イースタン・プロミス(2007)」が“オススメ”の理由と考察、その感想

②オススメ☆4

イースタン・プロミス 英題:Eastern Promises

監督-デヴィッド・クローネンバーグ 2007年 100分

脚本-スティーブ・ナイト

出演-ヴィゴ・モーテンセン、ナオミ・ワッツ、ヴァンサン・カッセル、アーミン・ミュラー=スタール、イエジー・スコリモフスキー、シニード・キューザック、他

映画「イースタン・プロミス」のあらすじ

クリスマスが近づくロンドン、助産師として働くアンナの病院に、身元不明の妊婦の少女が運び込まれる。

赤ちゃんは無事生まれたものの少女は死んでしまい、アンナは少女が持っていた手帳を手掛かりに、少女の身元を探すことにする。

ロシア語で書いてある手帳に挟んであったロシア料理のレストランを尋ねるアンナ。

オーナーのセミオンは快く対応してくれ、手帳を持ってくるようにアンナに告げる。

後日手帳のコピーを届けたアンナだったが、バイクが故障してしまい、店の前にいたセミオンの息子の運転手、ニコライに家まで送ってもらった。

一方、日記を読んだアンナのロシア人の叔父、ステパンは、この問題に関わってはいけないとアンナに忠告する。

手帳には、ロシアマフィアの人身売買(イースタン・プロミス)の詳細が書かれており、少女を暴行し妊娠させたのはマフィアのボスであるセミオンであることが判明する。

手帳を手に入れたいセミオンの脅しが始まり、手帳を受け取りに来たのは運転手のニコライだった。

アンナは、マフィアだが優しいニコライに不思議と惹かれていくのだった。

“オススメ☆4”の理由と考察、その感想

重厚な語り口のアクション人間ドラマ

ヴィゴ・モーテンセンの落ち着いた渋い演技が光る。

ロシアマフィアにしか見えない雰囲気や振る舞いなどが格好良い。

裏社会と一般社会との関わりがリアルに描かれている作品だ。

出演者の演技もリアルで良い。

セミアンの、一見優しい人に見えるが、怖い感じも味がある。

映像自体にも重厚さがあり、気持ち悪い映像をたくさん作ってきたクローネンバーグだが、こんな人間ドラマを描けるというのはすごい。

むしろ、普通の監督よりも、怖さや恐怖のようなものを描くのに長けているから、より良いんじゃないか。

ニコライがサウナでほぼ裸で抗争相手二人と闘うシーンは、緊張感があるし新鮮だしで、中々見ごたえがある。

この作品はドラマだけでなくアクションもあり、両方が良いバランスで成り立っていると思う。

テーマがマフィア、人身売買、少女の暴行、ゲイ、潜入捜査、潜入捜査官との恋、アクション、と非常に多岐に渡っているが、それらがうまく融合して、一つのドラマに昇華していると思う。

盛りだくさんで失敗するケースは多々あるが、そんな風にはなっていない。

せっかく上手くいってるので、もう少し長くてもいいのかなと思った。

組織に上り詰めていく様というか、ニコライに関することをもう少し描いても良かったんじゃないか。

あっさりした終わり方で、それが粋といえば粋だが、もうひとスパイス欲しかった気もする。

ニコライの徹底ぶり

潜入捜査という話はよくあるが、ニコライの潜入の仕方が本気すぎて、ここまでやるのかと思ってしまう。

ここまでなりきっている潜入捜査の刑事の作品は見たことがない。

確かにばれては命が危ないし、やるからには徹底的にやる必要があるだろうが、体に組織のロゴのタトゥーまで入れて、組織内の揉め事で命の危険にさらされてもあきらめずに、さらに上を目指して上り詰めていくという意志はすごい。

一口に潜入捜査といっても、それはもう狂気と紙一重なのか?

むしろ、狂気じみた気概を持って、マフィアになりきるということをしないと、成功しない。

そう言われたら確かにそうかもしれないが、やっていることは潜入捜査の枠をはみ出ている。

いくら潜入捜査と言ったって、こんな目にあっていたら普通はもうとっくに根を上げているんじゃないか?

今回の件までは我慢できたとしても、もう続けようとは思わないはずだ。

作品内では明かされていないが、この狂気じみたニコライの潜入捜査の目的は、組織への復讐なんじゃないかと思った。

動機は、自分の家族や愛する人を組織に殺されたからで、それも組織のやり方から考えてかなりむごいことをされたのかもしれない。

そうでなければ、ここまでの苦痛を我慢できるはずがない。

寝返るにしては、警察とまだつながっているのはマイナスになりかねない。

だから、本当に完全なる復讐で、組織を上から木端微塵にするためにどんな苦痛も耐え、上り詰めようとする。

全て燃やし尽くしてやるという修羅のごとき執念を感じる。

消えない怒りが彼の原動力になっているんじゃないか。

もしかしたら、アンナに気を許したのは、亡くなった妻に似ていたからとかで、心を鬼にしているニコライが唯一安らぐ場所だったのかもしれない。

そう考えると、アンナとのラブシーンにも涙腺が緩む。

しかし、あのキスシーンはなくても良かった気もする。

むしろ、好きになってはダメだ、この人にも危険が及ぶ、と、キスのようなあからさまな愛情表現以外で気持ちを表現してくれれば、より感動しただろうと思う。

しかし、ニコライだって人間だから、むしろそれが可愛いということか?

良いところで終わっているが、彼はきっとやり遂げるはずだろう。

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