アニメ「進撃の巨人」The Final Season(2023)が”物足りない”理由と考察、その理由

④物足りない☆2

進撃の巨人:ファイナルシーズンへの高まる期待感

自分は進撃の巨人のアニメが始まってからは、全然見ようともしていなかったが、再放送をチラチラ見ていたら、すっかり虜になってしまい、遅ればせながらテレビ放送を見だした。

主人公エレンの人間性やその強烈な声優の演じ方、ミカサやリヴァイなどの個性的で魅力的な脇役、立体起動装置の格好良さ、得体のしれない巨人という怪物が実は兵器として送られてきた、そこには隠された歴史があって…などという不気味で深い世界観。

良い所を挙げればきりがないが、そういった世界観を見事にアニメーターや声優が形にし、音楽の演出も合わせて全てが融合し、アクションもドラマも申し分ない、他に類を見ないファンタジー大作だと思う。

これを実写化するなんておこがましいほど、作り込まれたアニメ作品だ。

残虐なシーンもあり、エレンの熱さも相まって、どちらかというと男向けかもしれないが、ここまで惹きつけられた連続アニメドラマは始めてである。

特にシーズン2の最終話「叫び」で、アクション的にもドラマ的にも、そしてこれからの期待感に関しても自分的に最高潮を迎え、そこからは欠かさず毎週楽しみに見続けた。

むしろこれを見るのを楽しみに一週間過ごすようなもんだった。

シーズン4でジークとの壮絶な闘いを見終え、次のファイナルシーズンも楽しみにしていた。

そしていよいよ始まったファイナルシーズンだが、結論から言うと大分物足りなかった。

もちろん面白かった話しもあるが、全体で見ると今までのシーズンの半分にも満たない興奮度、期待感だった。

ファイナルシーズンは序盤から陰鬱な雰囲気で、政治的で難しい感じがあり、少し見るのが億劫になってしまった。

戦槌の巨人戦、ジークとエレンの結託で盛り返すが…

しかし、戦鎚の巨人と戦う「宣戦布告」で目が釘付けになり、かまってちゃんの不協和音的な音楽と不気味な映像がマッチしたオープニング映像や安藤裕子の繊細なエンディング曲も相まって、こんな良いものがただで見れるなんてと興奮し、そこから期待感が爆上がりした。

今までスパイとして潜入していたエレンがようやく姿を表す、今までの鬱屈した雰囲気をぶち壊すその一連のシーンは中々見ものだった。

謝罪をしているライナーを無表情で見つめるエレンが、タイバー家の大々的な演説のクライマックスで巨人になって登場し、そこから始まったエレンやミカサたち、マーレ軍との両軍入り乱れた息をもつかせぬ闘いは、ドラマ的にもアクション的にも、この上ないものだった。

少なからずその時はそう思っていた。

戦槌の巨人という奇妙な巨人も味があって面白い戦いだったし、今まで姿を見せなかったエレンの仲間たちが、立体起動装置でバッと現れるところも実に気持ちが良い。

自分は漫画は読んだことはないけど、この立体起動装置で敵を倒すアニメ映像は、アニメ史に残る爽快感、気持ち良さ、格好良さだと思う。

ある意味すごい発明で、映像にした側もよくやったと思う。

スパイダーマンの滑空する映像よりも断然気持ちが良い。

リヴァイがまた格好良い。

そんなこんなで、ついに始まった感がこの闘いにはあり、実に楽しめた。

少し残酷な描写はあるけれど、ドラマ的にも応援できる、惹きつけられる展開だった。

が、そこからエレンが牢獄に入れられ、また政治的な陰鬱なドラマが始まり、少し感心を失いかけたが、エレンがジークとけっ託する目的が気になってなんとか見続けた。

そしてエレンがジークに接触しようとして首を飛ばされたが、ムカデがエレンの首とつながって接触出来たシーンでまた興奮させられ、興味は盛り返した。

しかし、その後エレンの目的が地ならしを発動する、ということが判明したあたりで違和感を感じ、実際に発動され、被害者がたくさん出始めた時にはすっかり興味を失ってしまった。

そこから見る気がなくなり放ったらかしにしていて、先日やっと最終話まで見てみたが、思っていた以上になんだかなぁという感じだった。

ラストシーズンを振り返ると、最後の盛り上がりが、エレンの首が飛ばされたがなんとかつながったシーン、一番盛り上がったシーンは、上述した通り宣戦布告から戦槌の巨人との闘いのシーンだった。

現代に通じる政治や差別がテーマ、明確な正義と悪がいなくなったラストシーズン

ラストシーズンが今ひとつ面白くならなかった理由の一つとして、明確な正義と悪が不在であった、ということが大きいと思う。

今までは巨人を送り込んできた得体のしれない理不尽な敵との戦いで、家族のかたきや市民を守るためという明確な理由があり、正悪がハッキリしていた。

しかし、実はパラディ島のフリッツ王が争いの元であり、マーレに住むエルディア人の戦士たちも洗脳されていて、ライナーたちは葛藤の中パラディ島に向かっていたなどという内幕も語られ、パラディ島勢力が完全潔白な正義ではない、と判明する。

エレンがマーレを独断で急襲したことで、パラディ島は世界から狙われる羽目になり、悪をやっつけたつもりが、そこからさらに暴力は連鎖し、むしろよりパラディ島を危険に晒すことになった。

これは、正義が悪を倒す話ではなく、完全に現代の戦争に通じる政治の話だ。

人口知能が発展しているこの現代においてさえ、未だ解決出来ていない難問がテーマなんだから、話が難しくなって然るべきかもしれない。

まさに、ハマスとイスラエルの殺し合いを見ているようだ。

どちらにも自分が思う正義があり、どちらにも落ち度がある、明確な悪は存在していない。

ハマスは残虐だが、イスラエルは国際法を破って入植を繰り返し続け、石を投げただけの少年たちを平気で牢獄に何年も入れたりする。

聖地の、故郷の奪い合いという名目で人は死に続ける。

このラストシーズンは、そういう難しい戦争の話に飲まれてしまった感じがする。

テーマがテーマだけに面白くしていくのは難しいのかもしれないが、特に正義になり得る調査兵団たちは、どうすればいいのか分からず、右往左往しているうちに終わってしまった感じがある。

主人公はもちろんエレンだが、悪も正義もいない、今までのシーズンと違って誰に気持ちを持っていけばいいのか、応援すればいいのかハッキリしないままラストまで行ってしまった感がある。

そのテーマに新しい解決策を提示している訳でもないので、ただ難しくなった、という印象を受ける。

そして最終的に悪役になったのは、エルディア人を差別してきたマーレでもなく、それを取り巻く世界でもなく、はたまたジークでもなく、エレンだった、という気持ちの持っていきようのない展開になってしまった。

また、差別の理不尽さから生まれるドラマは悪くないが、マイナスの事件が多く、見ていて暗い気持ちになる。

エルディア人は悪魔であると洗脳されていたガビが、次第に洗脳が解けていく様子や、マーレ人のニコロが恋びとのサシャの仇を打とうとして同じマーレの国の住人であるガビを殺そうとしたり、一度は差別を超えて仲良くなったカヤとガビだったが、カヤの姉同然のサシャを殺した犯人がガビだと分かって憎しみを抱くカヤなど、差別が複雑に絡み合った人間ドラマ自体は悪くない。

ジークもエルディア人としてマーレで育ち、マーレからは酷い差別を受け、父親からは愛情をもらえず、不憫な生い立ちであることはよく分かった。

しかし、そういう差別をどう乗り越え、無くしていくのか、というポジティブな描写をもっと入れて欲しかった。
カビの洗脳が解けていくように、理想を言えば、パラディ島がやらなきゃいけないのは、それを全世界に対してやることで、武力による牽制でも皆殺しにすることでもない。

それをどうやるのかは分からないし、難しいし、話が変わってしまうかもしれないが、そういう希望があまり描かれていないので、どうしてもムードは暗くなってしまう。

こういうアニメは見たことがないので、これはこれで貴重ではあるが、差別の酷さだけではなく、差別に真っ向から抗う、暴力ではない強い抗議活動を行う人物なども描いて欲しかった。

それがエレンでも調査兵団でもないなら、ヒストリアがやるべきだったのだろうが。

ジークの安楽死計画も浅いし、地鳴らしによる蹂躙も違う。

それらに対抗し得る平和への道も描かれていないので、難しいテーマに触れたは良いが、どう扱っていいのか分からなくなったような印象を受ける。

暴走したエレン、その足りない描写

エレンはスパイとしてマーレに潜入していたが、実はジーク側だった、いやいや実は二重スパイで、エレンは平和のために敵のフリをしているだけだった、という結末だと思っていたので、悪い意味で大きく裏切られた。

あえて正義と悪で例えて言うなら、エレンが悪を演じていた正義ではなく、そのまま悪だった、ということにガッカリした。

いくらエレンがマーレを憎んでいたとしても、パラディ島を世界から守るためだとしても、人類の8割を殺すような残虐な人間ではないし、その動機も腑に落ちず、エレンのキャラが変わってしまっている気がする。

いや、元からそういう破壊的な人格は秘めていたのだろうが、その行動に至る理不尽なドラマをもっと描いて欲しかった。

エレンはマーレを攻撃し、その反動で世界がパラディ島を潰そうとするなら、より強い力で世界と戦う、ひれ伏せてみせる、というエレンの気持ちはよく分かる。

自分が正しいことをしているという自信があれば、たとえ世界中が敵でも関係ない、牙を向いてくるなら戦うまでだ、ということだろう。

しかし、それは自分に火の粉がかかってからで良かったんじゃないか?

確かに「宣戦布告」で世界はパラディ島を攻め込むことを決めたようなものだが、まだ世界はパラディ島を攻め込んではいなかったし、マーレ以外の国もエルディア人をひどく差別している悪い国である、ということはバッサリ描かれていない。

もし描かれていたら、まだエレンが地鳴らしを実行した理由にも多少なりとも正当化出来る、同情の余地はあるかもしれないが、それがない分エレンが行ったことは大量虐殺だと思う方に傾いてしまう。

エレンが、他の国がパラディ島に対してどう思っているのかを知っていたかどうかは不明だが、マーレに潜入して情報を集めているうちに、少なくともマーレに住んでいる一般の人達は必ずしも悪人ではない、洗脳されているだけ、明確に誰が悪いということではない、ということは分かった訳だろう。

きっと他の国も同じ様なものかもしれない、ということはエレンには容易に想像がつくだろうことで、なぜエレンが世界を滅ぼすことをやってしまったのか腑に落ちない

繰り返しになるが、エレンが地鳴らしを行うなら、世界がいかにパラディ島を差別していたのか、長くなってもいいからもっと描くべきだったと思う。

せめてパラディ島の人達が思っている以上にパラディ島は世界から差別され忌み嫌われ、何度も対話を求めるが邪険に扱われ、という理不尽を繰り返し浴びせられた描写があった後での地鳴らし発動であって欲しかった。

マーレ人から悪魔と呼ばれているだけではまだ足りない。

パラディ島に攻めてくる国と交渉しようとするが決裂し、闘う事になりパラディ島勢力が勝利する、また他の国が攻めてきて、交渉しようとするが決裂して闘い…ということを繰り返し、平和を模索するパラディ島の人達の気持ちを踏みにじり、エレンが我慢の限界になった、とかであって欲しかった。

全く別の話ではあるが、そっちの方が新しいドラマが生まれるはずだし、エレンや調査兵団らしさも保てたんじゃないかと思う。

あくまで正当防衛を繰り返した先にある最終手段として地ならしは使って欲しかったが、どうせ攻撃してくるだろうから潰す、というのはあまりに雑で早すぎる。

先手で核攻撃してしまったようなもので、ドラマとして大分物足りない。

パラディ島に他に打つ手はなかったのかもしれないが、地ならしをしないために、エレンの周りのパラディ島勢力ももっともがいて欲しかった。

どうしたいのかハッキリしないパラディ島勢力、ヒストリアの力は発揮されず

エレンは独断でマーレ襲撃を始め、戦犯として牢獄に入れられるが、上述した通り、パラディ島勢力は一体どうしたいのか、よく分からなかった。

エレンがマーレを襲撃しなくても、どのみちパラディ島は世界からの攻撃にさらされていたし、エレンを牢獄に入れるくらいなら、なぜエレンに協力したのか?

協力して、一緒にマーレ軍を壊滅させておいて、エレン一人のせいにするのは卑怯で意味不明で、エレンが口火を切ってしまったから徹底的に世界と戦おうという訳でもない彼らは傍観者のようだった。

そりゃイエーガー派に乗っ取られるのも分かるほどに、態度がハッキリしていない。

エレンが始めたんだからしょうがない、最後まで戦うか、と踏ん切りをつけ、エレンと一緒に正当防衛の範囲で戦うならまだ分かる。

そもそもパラディ島が攻められるという情報を入手し、どう対応していくのか、という毅然とした国の進路を示していなかったパラディ島が、エレンの暴走を招いたとも言える。

ヒストリアがリーダーシップを取れておらず、意識が統率されていなかった。

軍事力を放棄する、エレンを巧妙に死んだことに見せかけて、代わりに攻め込むのは辞めるよう交渉するとか、憲兵を解体して市民に紛れ込ませ、もし攻めてくるなら隠しておいた立体起動装置で戦うとか、分からないけど、身を守るための嘘を含んだ、あくまで平和を模索するための知恵を使った交渉を、ヒストリアにはやって欲しかった。

地鳴らしをちらつかせ、軍事力で抑止力にするという、常識的、現実的な政治手法は、普通なのでドラマになり得ない。

なので、パラディ島を攻め込もうとしていた世界に対して、それをやめさせる効果的な交渉カードを、今まさにパラディ島が切ろうとしていた時に、エレンが暴走してマーレを襲撃した訳でもない。

エレンのおかけで計画が台無しになった、と言えるほどの計画など何も立てていなかったように見える。

そんな交渉カードなんてないかもしれないし、それだけ平和的に解決することは難しい状況かもしれないが、地鳴らしじゃなく対話で解決するんだ、という強い姿勢をパラディ島や調査兵団には示して欲しかった。

現実の世界ではそんなことはキレイごとで、核爆弾を持たなければ、力がなければ支配され、下手をすれば殺される、軍事力で国は成りたっていると言われるが、せめてこういう架空の話の中では、そういう冷たい現実に一石を投じるような新たな道を示してほしかった。

地鳴らしをしなければ殺される、それでも地鳴らしなんてやっちゃいけないんだ、という強い姿勢を、アルミンを始め調査兵団やヒストリアが強く主張し、エレンを止めて欲しかった。

そういう押し問答があり、それを振り切って地鳴らしをやるのなら、まだドラマがあって良い。

しかし、エレンを止めるようなそういう対話の描写がほぼなく、エレンを見守るだけになってしまった。

エレンが何を考えているのか探るのが困難だったとしても、そこで引かずにエレンを徹底的に問い詰めて欲しかった。

「宣戦布告」からの戦闘終わり辺りから主人公のエレンが暴走していく代わりに、調査兵団やパラディ島の態度がハッキリせずグズグズなので、平和を模索する勢力VS平和のための過激派、というドラマもちゃんと成立しておらず、見ているこっちは調査兵団と同じく、何となくエレンの動向を見守る、という形になってしまった。

そして、もしエレンが地鳴らしをして関係ない人まで不必要に殺そうものなら、容赦なくエレンを殺しに行く、というような強い姿勢を、ミカサをはじめ調査兵団には見せてほしかった。

腑に落ちない大量虐殺の理由、無視された自由意志

エレンは未来を見て、「頭がおかしくなってしまった」、「バカが力を持つとこうなる」、「始祖の力には逆らえず、未来は変えられなかった」というようなことをアルミンに言っていたが、大量殺人を犯した理由としては足りず、本当に未来は変えられなかったのかどうかも疑問が残る。

よく、SFのアニメ、ゲーム、実写映画でも、人類に絶望したからリセットするために全てを滅ぼそうとする悪役は出てくるが、その考え自体が浅いから、大抵魅力のある悪ではない。

そもそも悪の時点で浅いわけで、悪に魅力を出すというのは至難の技かもしれないが。

上述した通り、エレンが地鳴らし発動に至るまでの、エレンの鬱憤が溜まっていく描写が足りないので、エレンのその告白もいまいち入ってこない。

せめて地鳴らしをさせた世界が悪い、エレンは悪くない、と思わせて欲しかった。

そうであれば、差別を止めない世界へのアンチテーゼになったかもしれない。

もうマーレに潜入する前から、地鳴らしをすることを決めていたようにも見え、若いがゆえもあるかもしれないが、浅い行動に見えてしまう。

その考えをミカサたちがぶち壊す役目だったんだろうが、実際は何も出来なかった。

エレンが仮に始祖に支配されていたと言われても、エレンには意志が残っている。

未来は変えられなかった、とエレンは言っていたが、エレンにまだ自由意志があるなら、いくらでも未来は変えれると思えてしまう。

よく、予知か何かで見えた未来通りに事が進むというSFはあるけど、自由意志が存在している時点で、その通りになる確率なんて限りなくゼロに近い。

地震とか、隕石が落ちてくるとか、人間の意志が介入しづらい出来事なら、百歩譲ってそうなる可能性はまだ分からなくもないが、そういうものですら人間の意志を介入させればどうなるかわからない。

ましてやエレンは廃人ではなく、まだ会話もできて人間の意志があるので、未来なんていくらでも変えられるだろう。

見えた未来、始祖の力には逆らえないといっても、なぜ自由意志が無視されてしまうのか、ということに関して、明確で厳しいルールが設けられている訳でもないので、そこは破綻していると思う。

そして、もしエレンに意志があるなら、エレンは絶対に、仲間をヒーローにするために、巨人の力をなくすために人類をほとんど殺す、などという、残虐で中身のない選択肢は選ばないとも思う。

むしろ、エレンはそんなことをするやつを目の敵にして生きてきた側の人間で、自分の家族や仲間が殺された憎しみや悲しさは抱えていても、関係ない人間までも平気で殺せる人間ではない。

始祖の力が強力でも、「逆らえなかった」で済まさず、終わらさずに、人を助けることをしつこくねちっこく追求し続ける人間だろう。

なので始祖に完全に支配されていた訳でもなく、かといってエレンの意志が強く反映されている訳でもないどっちつかずの結末だ。

始祖ユミルをびっくりさせるような解決策をひねり出してしまう、という方が、エレンらしいし、気持ちの良い展開に出来たんじゃないかと思う。

結果として全部始祖の手のひらで踊っていた、始祖には叶わなかった、というような終わり方でもあるので、モヤモヤが残る。

例えば、大量殺人を犯したのは、実は全てエレンがミカサたちに見せていた幻想で、ミカサに自分を殺させて巨人の力をこの世からなくすためで、実は地鳴らしで誰も死んでいなかった、とかだったらまだ分かる。

じゃあ何もしてないエレンを殺したミカサたちが悪者になるか、というとそうではなく、まだ誰も死んでいないけど実際に地ならしは発動し、エレンは最終形態に変化して、今正に人を殺そうとしていた所をミカサたちに殺されたとしたら、大惨事を未然に防いだ英雄にもなれて辻褄は合うんじゃないか?分からないけど。

エレンは狂った悪者として語り継がれるが、本当のことを知っているのはミカサたちだけ、という終わり方の方がエレンらしくて良い。

やっぱりエレンはエレンだった、悪いやつじゃなかった、というドラマも生まれて大団円になったんじゃないか?

そうなるなら、大量殺人をおかした最終形態のエレンに対してですら、殺すのをためらっていたミカサたちの葛藤も生きてきて、エレンを信じた甲斐があったかもしれない。

でも実際には、ミカサたち、パラディ島のエレンの仲間たちは、悪いことをした奴を仲間だったからすぐには殺せなかった、という弱い行動をとっているように結果的に見えてしまった。

葛藤したのが馬鹿馬鹿しくなるくらい残虐なことをしてしまったわけで、それにも関わらず、まだエレンを大事に扱うのは、リアルな心の流れよりも、センチメンタルが先走ってしまったように感じてしまう。

「進撃の巨人」はエレンとミカサの壮大なラブストーリーだった

なので、アニメを最後まで見終えた感想としては、これは、争い合う人の愚かさをテーマにした、アクション要素のある、ミカサとエレンの自己陶酔的な壮大な恋愛ドラマだったんだと感じた。

上述した通り、エレンを応援できるような描写もなく、ミカサの態度も毅然としてはいないので、ラブストーリーとしても物足りないが。

決して単純で分かりやすい勧善懲悪やハッピーエンドを望んでいるわけでもなく、エレンとミカサが結ばれなくてもいいし、エレンが死ぬ結末でもいいと思うが、エレンが暴走しっぱなしのこの終わり方はなんとも残念である。

せめて、もう少し早くエレンを止めてあげる事はできなかったのか?

エレンも内心「早く止めろ」と思っていたかもしれない。

人類を誰一人死なすなというわけではなく、憎しみを生む差別をしている人間が、時間をかけても改心しないのであれば、それは制裁を受けるべきだろう。

かといっていきなり皆殺しはどうかと思う。

実際はパラディ島が世界から酷く不当な差別を受けていた、という設定があったとしても、それは描かれていないからそう思ってしまう。

ラストシーズンの序盤からの陰鬱な空気感、エレンが地鳴らしを始めて漂う不穏な雰囲気を、最後の結末でひっくり返してほしかったが、そうはならなかった。

あくまで原作ではなく、アニメを見た感想だが、個人的には、このシーズンはもっと時間をかけて練り上げても良かったんじゃないかと思う。

終わりに向かって展開が硬くなってしまった、急いでしまったように感じる。

地鳴らし以外に方法がないだろう、というエレンの一方的な想いがそのまま通ってしまった。

それに真っ向から対峙することで生まれるはずのドラマも欠落している。

難しい話しだけに、あと2シーズンくらいあってもいいから、地鳴らしに至るまでを丁寧に描いて欲しかった。

そういう意味でもったいないシーズンだった。

ちなみに、最終形態のエレンとの戦いは悪くない。

エレンの上で、歴代の巨人の継承者がみんな協力してくれたり、ファルコが鳥になってアニと助けに来たり、アクションとしての醍醐味はあったと思う。

かつての敵が味方になる、という展開は王道といえば王道だろうが。

しかし、ラストシーズンはそんな感じだったが、最初から最後まで全体を見ると楽しませてもらった方が多いので、プラスマイナスプラスではある。

今後もこういうクオリティーの高いファンタジーアクションドラマ大作のアニメが、また作られることを願ってやまない。

原作者はもとより、アニメーター、声優陣、音楽家など、進撃の巨人制作陣には賛辞を送りたい。

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