映画「ダージリン急行(The Darjeeling Limited)」(2007年) のあらすじ・感想

③見て損はない

監督-ウェス・アンダーソン 2007年 91分

脚本-ウェス・アンダーソン、ロマン・コッポラ、ジェイソン・シュワルツマン

出演-オーウェン・ウィルソン、エイドリアン・ブロディ、ジェイソン・シュワルツマン、アンジェリカ・ヒューストン、ワリス・アルワリア、ビル・マーレイ、他

原題「The Darjeeling Limited」の意味

「the(ダ)」=「その、あの、例の」という意味の定冠詞(定まったものにつく)で、「それだけ、ますます」という意味の副詞です。

「darjeeling(ダージリン)」=「ダージリン(インドの西ベンガル州北部の都市名)」という意味の名詞で、ダージリンティーなどのお茶の産地です。

「limited(リミテッドゥ)」=「特別列車」という意味の名詞、「られた、有限の、わずかな、特別の、特別急行の」という意味の形容詞です。

「the darjeeling limited」=「(その)ダージリン特別列車」という意味になります。

簡単なあらすじ

父を亡くし、それ以降疎遠になっていた三兄弟が、インドで尼僧になった母に会いに行くため、インドの特別急行に乗って旅を始める。

道すがら兄弟喧嘩をしたり、降りた街で靴を盗まれたり、列車に毒蛇を持ち込んで車掌に見つかって列車を下ろされたり、様々なハプニングが起こる。

そんなこんなでインドを旅していくうちに、次第にそれぞれの心が変化していく。

ついには尼僧になった母に会うことが出来るが・・・。

「ダージリン急行」の感想

インドを軽く旅した気分になる

仲の悪い三兄弟が、インドの旅を通して自身を振り、成長していくロード・ムービー。

冒頭の電車に飛び乗るシーンで惹きつけられ、インドの雰囲気溢れる味のある電車の中のシーンに触れ、まるでインドを旅しているかのような心地の良い気分になれた。

電車の中の装飾や乗務員などの登場人物、流れる音楽など、全部合わせてよく演出されていると思う。

電車は、壁に書いてある像の絵を一つ一つ職人に時間をかけて作らせたり、テーブルやイスの作成に至るまで、かなり手間がかかっているそうで、実際には、あんなに素敵な列車はないんだろうと思う。

冒頭から序盤は、インドを軽く体験しているような気分になり、ワクワク感はある。

三人のドラマが物足りない

ドラマ的には、面白くなりそうな雰囲気がずっと続いている感じで、ユーモラスな会話のやり取りや、降りた街で靴が盗まれたり、蛇が逃げ出して車掌に怒られたりなど、面白げなハプニングが起こりはするものの、だからなんだ、というか、何か起こっているようで何も起こっていないような感じ、のまま最後まで見終わってしまった。

これは良かったのか?良かったなら何が良かったのか、この三兄弟はどう成長したのか、というのがいまいちよく分からなかった。

説明をそぎ落とした描き方は、それなりに味があり悪くはないが、よく分からない。

この監督の作品は、きっとこういう感じで、ガツンと来るとかそういう訳ではなく、静かな感動という感じなんだろうとは思う。

90分にしては、色々詰め込んだ方なんじゃないかと思うが。

しかし、この三兄弟の感じがいまいちどんな人間か、というのが分かりづらく、会っていなかった理由もよく分からない。

確かにそれぞれ癖はあっても、そこまで嫌な人間ではないし、一番上の兄貴のデリカシーのなさは人を怒らす感じは分かるが、絶対会わないというほどの関係とは思えない。

むしろ、お互い癖があるんだから、お互いの悪い所に気付かず、類は友を呼ぶで、傍から見たら変な兄弟に見えても、本人たちは仲が良い、というパターンもあるだろう。

それぞれのちょっとした癖が、お互いに合わないと思い込む要因になり、なんとなく噛みあわないから会わない、という感じか?

お坊ちゃん同士の、自分のことは棚に上げて、他人を悪く見る、ゆるい価値観の兄弟関係ということか?

まあ、兄弟といえど他人であり、なんとなく興味がなく、特に理由がないから会わない、という感じがあるのは分かるが。

この作品は、世間知らずのお坊ちゃんたちがインドを旅してなんとなく成長した、というような感じか。

彼らはお金持ちだし、本当に人生のドン底でインドに行きついたとかではないから、そこまで目を見張るほどの何かを得た、という訳ではないだろう。

そこらへんの設定も含め、いまいち人間ドラマに惹かれない理由だと思う。

せっかく母に会いに行ったのに、翌日母がどっかに行っていて、それで旅が終わってしまう、という感じは面白い。

母は結構ドライでさらっとしていて、別に私に合ったからといって人生の答えが出るわけではない、と言わんばかりである。

結局家族なんてそんなものというか、家族愛を全面に押しだしたハッピーエンドという訳ではない辺りは好感を持てる。

道すがら、川に落ちてしまった少年を助けようとするが叶わず、その少年の家族に葬儀に招待されるなど、何かしら、生きるという事は何だ、と考えさせられる出来事に遭遇したのは、三人を成長させることに大きな要因にはなったんだろうとは思う。

しかし、それでも全体的に人間ドラマがゆるいので、人間ドラマというよりも、インドという国の雰囲気を感じるための映画かなと思う。

インドという国の表面的な部分を。

無理にドラマティックにする必要はないが、三人がもっと険悪になってもいいし、やりようはあると思うし、ドラマ的にはかなり物足りなく感じた。

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