ナイトクローラー 英題:Nightcrawler
監督-ダン・ギルロイ 118分 2014年
脚本-ダン・ギルロイ
出演-ジェイク・ギレンホール、レネ・ルッソ、リズ・アーメッド、他
“今すぐ見るべき!☆5”理由と考察、その感想
ジェイク・ギレンホールの怪演
面白い。
ジェイク・ギレンホール演じるルーの狂気性が実に怖い。
最初は軽い気持ちで始めた事件現場を撮影するというカメラマンの仕事だったが、お金を稼げると分かり、その行為はどんどんエスカレートしていく。
もっと良く撮れていないとダメだなどとテレビ局から言われ、もともと危うい性格をしていたルーだが、さらに追い詰められ、やっていいこといけないことの線が曖昧になり、ついには一線を超えてしまう。
ルーが次第に狂気じみていく様がよく描かれていて、見ていて惹きつけられる。
いきなりおかしくなるのではなく、徐々に徐々に心が蝕まれ、気づかぬうちにもう人格も変わってしまっている。
ニュース番組の監督のニーナと夕食を食べにいき、笑いながら静かにニーナを脅すところなど実に怖い。
ルーの話口調や態度は一見紳士的で、ところどころ笑ったりしながら話を進めるが、言ってる内容はとんでもなく酷いことを言ったりするから、余計にぞっとする。
あからさまにおかしいという人間というよりも、普通の好青年にパッと見見えてしまうけど、実は内部は誰よりも狂っている、という壊れた人間をジェイク・ギレンホールが見事に演じている。
緊張感のある映像
リアルに話が進んでいくので、この話はどうなってしまうんだと常に緊張感を持ったまま見れる。
それは、きっと話の展開だけでなく、ルーの話し方や振る舞いがリアルだからだろう。
最後の展開もかなりきついものがあったが、一番緊張感があったのは、強盗犯と警察をレストランで鉢合わせにさせて、それを少し離れた場所からルーが最初からカメラで撮影していた場面だ。
警察がレストランに入ってきたことに気づいた強盗犯は、テーブルの下に銃を用意しだした。
撮影しているルーはそれに気づいているが、警察はまだそれに気づいていない。
普通だったら、撮影を中断して警察にそれとなく伝えに行かなくては警察が危ないと思うが、ルーは全く意に介さず、カメラを回し続ける。
この後に起こりうる危険な可能性はこっちも容易に想像がつくがゆえに、これはどうなってしまうんだ、とゾッとする緊張感と共に目が釘付けになる。
通報したのはルーだが、警察も犯人もレストランの外から撮影されているとは気付いていなく、その一連の流れは、ルーが撮影する映像の視点で見せられ、これは何を見せられているんだと思ってしまう。
決してド派手なアクションや、スプラッタな映像ではないにも関わらず、ここまで緊張感を煽られる映像は見たことがない。
警察、犯人の動きなど、一連の流れがリアルなので、まるで本当に事件の一部始終を見せられているような怖さを感じた。
人間の一線を超えてしまったルー
警察にその言動を疑われ、尋問を受けるが、ルーは、「こう言いたい。もしあなたが俺を見かけたら、その日はあなたにとって人生最悪の日だ。」と悪びれずに笑いながら言い放つ。
撮影のパートナーを死に追いやってもなお、全く反省をしていないどころか、この警告にも似た警察への発言がさらに怖さを増す。
実際にやっている行動も一線を超えてしまっているが、ルーの元々持っていた凶暴性がより発展し、もう人として一線を超えてしまっている。
その内面の狂気性がルーからひしひしと伝わってくるあたりが、全体を通してのリアルな描写の撮り方のみならず、ジェイク・ギレンホールの入り込み具合も見事だ。
終わり方はハッピーエンドなどではなく、さらにルーが事業を発展させ、新人に激を飛ばしている場面で終わるという、なんとも怖い終わり方だ。
我々が知らない所でこういう仕事をして生計を立てている人間は少なからずいることだろう。
そういった人間への強烈な皮肉とでも呼べる、ある意味メッセージ性の強い作品だ。
決して主人公の活躍を応援出来るなどというヒーローものでは全くなく、究極の反面教師として見てしまうという感じか。
サスペンスでもあり、現実的な怖さを備えたホラーとも言える。
リアルが故に、幽霊やお化けなどが出て来るホラーより全然怖く感じる。
ルーはどこかで人間を辞めて、妖怪になってしまったんだろう。
コメント