映画「トップガン マーヴェリック(2022)」を“見て損はない”理由と考察、その感想

③観て損はない☆3

トップガン マーヴェリック 英題 Top Gun: Maverick

監督-ジョセフ・コシンスキー 2021年 179分

脚本-アーレン・クルーガー、エリック・ウォーレン・シンガー、クリストファー・マッカリー

出演-トム・クルーズ、マイルズ・テラー、ジェニファー・コネリー、エド・ハリス、ジョン・ハム、ヴァル・キルマー、モニカ・バルバロ、グレン・パウエル、他

映画「トップガン マーヴェリック」のあらすじ

現場主義にこだわり、昇進を拒み続けているアメリカ海軍の伝説の戦闘機パイロット、マーヴェリックは、軍が実施する新型戦闘機の速度実験にテストパイロットとして参加していた。

しかし、周りの制止を聞かず、目標のマッハ10を超えても速度を上げ続け、機体を壊してしまう。

罰として飛行禁止を言い渡されそうになるが、かつての仲間で現在は海軍大将アイスマンの計らいで、戦闘機パイロット訓練の教官に任命される。

その訓練は、某国が秘密裏に開発している核プラント施設を破壊するための予行演習で、その任務を成功させるためには高い操縦技術が求められる。

しぶしぶ教官役を引き受けたマーヴェリックだったが、その候補生の中には、かつてマーヴェリックが戦場で死なせてしまった仲間の息子が在籍しているのだった。

“見て損はない☆3”理由と考察、その感想

前作を知らなくても見やすいトップガンの続編

トップガンの続編、評判が良いので前作は見ていないが見てみた。

結論から言うと、前作を見ていなくてもそこそこ楽しめた。

ドラマ自体は少し物足りないが、アクション要素は見応えがあり、トム・クルーズらしい爽やかな話で悪くない。

恋愛や部下との確執、候補生による競い合いや、一線を退いた老兵の活躍、絶体絶命からの生還など、様々なドラマが盛り込まれた、ハリウッドらしいアクション大作だと思う。

ドラマがもっと重厚であれば良かったが、何を見ればいいのかわからない人やヒマを持て余している人にとっては見て損はないかもしれない。

爽快な空中線アクションがいい

この作品の良さは、やはりそのアクションの格好良さかもしれない。

戦闘機の空中線がこんなにも格好良いとは思わなかった。

マーヴェリックが教官として、候補生と訓練している時はもちろん、実際の作戦が実行されてからの息をもつかせぬ戦闘機による空中線は、中々爽快で釘付けになってしまう。

作戦が実行されてからのハラハラ感もいいし、ミサイルが発射されてからそれをフレアという囮を使って紙一重で交わしていく様は、実に格好良い。

きっと、空に絵を描く事しか見たことがない自衛隊のブルーインパルスも、こんな事が出来るんだろう、と思うと若者が憧れる気持ちも分かる。

空中線はもちろん、戦闘機を操作する様子や、Gがかかって意識が遠くなり視界が狭まる感じなど、CGを使っているところはあるとしても、リアルに描けていると思う。

敵の最新鋭の戦闘機すら格好良い。

なので、単純にアクションとしては申し分ないと思う。

面白くなり得る良い設定

一線を退いたかつての老兵で伝説のパイロットが若いパイロットを指導する、という設定が良い。

最初は舐めていた候補生達が、マーヴェリックが候補生とは比べ物にならない速度で仮想ミッションをクリアして、見る目が全く変わるシーンは気持ちが良い。

かつて死なせてしまった同僚の息子が候補生にいて、一緒に作戦の実行に臨むなんて、絶対に面白くなり得る設定だ。

その息子、ルースターをマーヴェリックが身を挺して敵のミサイルから守るシーンなど、実に良い。

その後、さらにルースターが帰投命令に従わず、マーヴェリックを助け返し、そんなルースターを、なぜ逃げなかったとマーヴェリックが罵倒するのも良い。

涙腺を刺激はされる。

しかし、今ひとつ振り切れないのは、ドラマが表層しか触れられておらず、振りがそこまで効いていないことだろう。

なのでもっと面白くなるはずなので、実にもったいないと思う。

ドラマの掘り下げが浅い-少ない成長物語

上述した通り、アクションやドラマの設定は実に良いが、ドラマの描き方が足りないので、もったいない。

マーヴェリックが教官で候補生をしごくのは面白いが、もっと厳しくても良かった。

マーヴェリックが求めるレベルに達しない生徒達をもっと追い詰め、険悪なムードになるほどのドラマが欲しい。

ルースターとマーヴェリックの確執もほぼ描かれていないに近く、「お前の親父は無能だから死んだんだ」くらいのことを言って煽って怒らせ、ルースターの能力を引き上げていくようなシーンがあっても良かった。

候補生達とのそういった厳しい訓練による成長物語が少ない。

もしそこがしっかり描かれていれば、後半の実際の作戦でのドラマは跳ね上がったはずだ。

あんなに厳しく、嫌なやつだと思っていたマーヴェリックが、ルースターを身を挺して守るシーンなら、見ているこっちは涙腺が崩壊したかもしれない。

しかし、ルースターとマーヴェリックの確執はあってないようなもので、実際の出撃前にはもう解消されている感じなので、物足りない。

せめてルースターだけは、マーヴェリックをまだ心から信頼しているわけではない状態でいて欲しかった。

元々マーヴェリックのキャラクターがそういう人格ではないだろうから、いきなり鬼教官になるのは不自然かもしれないが、候補生達との訓練はもう少し長くてもいいから、重厚に描いて欲しかった。

気の強い女性パイロットや気弱に見えるパイロット、腕は良いが傲慢なパイロット、教官と確執のあるパイロットなど、候補生たちはそれぞれ個性があり悪くないが、そこに深さはあまりなく、ステレオタイプな演劇に見える。

ドラマが表層しか描かれていないので、それぞれの個性がハッキリと分かるところまで、もっと描いて欲しかった。

ちょっと気弱に見えるボブも、悪くはないが、その性格の良し悪しがハッキリ分かるほどの描写はない。

傲慢なハングマンなんて、コントで真似されるようなキャラクターだが、もっと場を荒らしまくっても良かった気もする。

傲慢だが腕の良いハングマンを、マーヴェリックに煽られて急成長したルースターが追い越すというような、その二人の熱い闘いがあっても良かった。

そこらへんは、マーヴェリックとルースターの確執も、ハングマンとルースターの関係も、ドラマが生まれそうで生まれきらないまま終わってしまった感じがする。

候補生たちの演技も良いので、やろうと思えばいくらでも出来ただろう。

描く時間がないといえばそれまでだが、そこがこの作品の肝なので、非常にもったいない。

前作から引き継がなければいけない話なので、描かないといけないことがたくさんあるから難しいのかもしれないが。

前作を見ていない自分にとっては、あのきれいなバーのおばさんとの恋愛や、アイスマンの登場など、もっと少なくても良かった気もしてしまう。

描くにしてももっとさらっとで、訓練のドラマ部分にもっと重点を置いて欲しかった。

ジェニファー・コネリーが、浜辺でマーヴェリック達が候補生とラグビーをしている様子を見ながら、微笑みながら指を噛むシーンなど、まるで演技に見えない自然で魅力的な振る舞いだ。

トム・クルーズも魅力的で、二人の恋愛は爽やかさがあり、日本人がやったら気持ち悪くなるであろう熟年カップルの恋愛が、嫌味がなく自然に描かれているのは、それ自体は素敵だろう。

ただ、個人的にはもっと男臭い物が見たかった。

バーのおばさんもマーヴェリックをのらりくらりとかわしてあまり相手にしないが、実は心配していて、命をかけたミッションが終わったら、ようやくデートの約束をする、くらいのほうが粋な感じがする。

トム・クルーズの最高のプロモーションビデオ

この作品は良い設定やアクション、トム・クルーズの好演などもあり、見やすいアクション映画になっている。

しかし、訓練では結局マーヴェリックが一番すごいところを見せつけ、ミッションでは死んだ仲間の息子をかばい、敵機を奪って神業の空中戦で生還し(最後はハングマンに助けられたが)、おまけに恋愛もうまくいく、というのが、ドラマが少し足りない分、トム・クルーズのプロモーションビデオのようにも感じた。

最初のマッハ10にチャレンジするシーンも格好良いし、バイク姿や恋愛シーンも様になっている。

良い所を全部持って行くというか、それは主人公だから当たり前なのかもしれないが、「トム・クルーズって格好良い」と思わすための作品と言っても過言ではない。

確かに格好良かった、爽やかだ。

しかしドラマが重厚でないのが残念だ。

もし重厚だったら、ものすごい作品になっていたかもしれない。

前作からの引き継ぎの描写、派手なアクション、候補生との訓練や恋愛要素など、様々な要素を盛り込み、前作への配慮や万人向け的な目線も意識した結果、全体で少し薄まっている印象を受ける。

どぎつい口論の描写や濃厚なラブシーンなどがあるわけでもないので、日本の地上波で21時から放送する分にはもってこいの作品かもしれない。

上述した通り、ドラマ的に物足りない部分はあるが、この作品に演技的にあざとい人などは特におらず、そういう意味でも見やすい作品になっている。

あざとい人がいないというの当たり前のことだが、今の日本のドラマや映画はその当たり前にすらはるか届かない。

比べてもしょうがないが、某人気日本ドラマをじっくり見た後の自分にとっては、あまりに違いすぎてビックリした。

そのドラマが日本の全てではないけど。

こんな作品を日本が撮れる日はいつか来るのか?

ちなみに先日、山崎貴監督の「ゴジラ-1.0」が日本人初、アジア初のアカデミー賞の視覚効果賞を受賞した。

視覚効果賞を獲るのは難しいらしく、予算が莫大なハリウッド陣を山崎貴のチームが低予算で凌駕したとのことだ。

だから、こんな作品が撮れる日はいつか来る。

演技やドラマは置いておいて。

そんな日なら来なくていいか。

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