グリーン・デスティニー 英題:Crouching Tiger, Hidden Dragon
監督-アン・リー 2005年 120分
脚本-ジェームズ・シェイマス、ツァイ・クォジュン、ワン・ホエリン
出演-チョウ・ユンファ、チャン・ツィイー、ミシェル・ヨー、他
映画「グリーン・デスティニー」の簡単なあらすじ
剣士として名高いリーは、厳しい修行の末に悟りの様なものを開き、愛用した名剣「グリーン・ディスティニー」を手放して引退することを弟子の女剣士シューリンに告げる。
リーとシューリンはお互いに恋心を抱いていたが、剣士同士の恋愛は禁じられていた。
剣はシューリンが預かり、リーの言いつけどおり知人の商人に譲ったが、その晩、剣が盗賊に盗まれてしまう。
盗賊と戦うシューリンだったが、傷を負わすも逃げられてしまい、盗賊は目の前の長官の家に逃げ込んだのではないかと推測を立てる。
盗賊はリーの師匠を殺したジェイド・フォックスの可能性もあり、急遽リーを呼び寄せる。
シューリンとリーは一緒に長官邸に入り、盗んだのは長官の娘のイェンの仕業だと確信する。
その夜、イェンが今度は剣を返しに来たところをリーが待ち伏せし、そのイェンの強さを見たリーは自分の弟子になれと誘うが・・・。
“物足りない☆2”理由と考察、その感想
重厚な導入部
導入から結構惹きつけられた。
チョウ・ユンファとミシェル・ヨーの演技や、二人の近ず離れずの関係性、作り込んだ時代の雰囲気、剣にまつわる話など、実にくすぐられる。
チャン・ツィーも可愛らしく、二面性を持っている感じもよく出ている。
ミシェルとチャンの女性同士の格闘も迫力があり、見どころの一つではある。
ワイヤーアクションが不自然
剣士たちは空高くジャンプできる。
ちょっと高いくらいじゃなく、かなり高い。
それが、空を飛べるのか、ジャンプ力があるのかよく分からない。
調べてみると、武峡小説というアクション娯楽小説がもとになっているらしく、武術を極めて空を飛べるということもあるようだ。
でも、空をちゃんと飛んでいる訳でもなく、ジャンプの延長線上のように見えたり、なぜここでは飛ばないのかというところもあったりして、見ていると線引きが難しい。
SFと言われればそうなのだろうが、少し気持ちが悪い。
表現したいものがあって、CGやワイヤーをあえて使うのはいいと思うが、この作品の世界のルールがよく分からなかった。
なので、戦っているシーンがだんだんあまりすっと入ってこなくなる。
リーとシューリンの関係性が微妙
リーの持つ雰囲気は実に重厚で、シューリンに恋心をいだいているが、それをお互い剣士であるがゆえに表ざたに出さないという、相思相愛だけど結ばれない、深く切ない感じだと思っていた。
安易に恋心を押し出さないリーの姿勢は実に深みのある、格好いい男だ。
剣士に身を捧げるというのは実に厳しい。
ところが、後半リーはシューリンにばんばん告白していく。
あからさまに「君と一緒になりたい」と言って手を握ったり、あれ?こんな人だったのか?・・・とそこでちょっと幻滅してしまった。
言いたいけど言えない、そういう雰囲気が苦手、だけど心では相手を思っている、というシャイな良さがまるで立ち消えてしまう。
最初は確かにその雰囲気はあったのだが・・・。
この描写がないほうが、ラストでチョウに起きることにもより気持ちが盛り上がってくると思うのだが・・・。
きっとアン・リーという監督はダイレクトな恋愛が好きなんだろう。
イェンが何がしたいのか?
大まかに言えば「恋に走る」ということなのだろうが、城を抜け出して自分の力を見せつけたり、剣士としての名誉も欲しているように見える。
剣士としての名誉と恋を天秤にかけて葛藤しているならまだわかるが、そういった描写は特に見当たらない。
やりたい放題やっているように見えてしまう。
荒野の盗賊の頭に恋するが、それもなぜ好きになったのかいまいち分からない。
盗賊の頭はそこそこシュッとした顔をしているが、特にこれといって魅力も感じられない。
好きになる決定的な事件が起こる訳でもない。
それに、イェンはめちゃくちゃ強く、空も飛べるはずなのに、なぜこんな盗賊ごときに捕まってしまうのだろうと思う。
まだ強くないころの、かなり昔の出来事にしては今と顔も同じだ。
ラストの衝撃的な美しい終わり方
深みがあって、なんかいいなあと思う反面、どういうことだ?という疑問も湧きあがってくる。
映像自体は実に美しい。
自分がしたことを振り返り、願いをこめ身投げをしたということは分かる。
しかし、空も飛べるわけだから死なないし、死なないとしたら何のために?となる。
実の所、空も飛べるのかどうかもよく分からない。
伝えたいことは死んでしまうということなんだと思うが・・・。
全体としては映像の作り込みや世界観も良く、役者陣の演技もうまい。
ストーリーに関してはところどころ悪くないが、全体としては薄くなってしまっている印象がする。
話の深みまでは行かず、表層をなぞっただけのような感じを受けた。
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