英題:The Experiment
監督-ポール・T・シュアリング 2010年 97分
脚本-ポール・T・シュアリング
出演-エイドリアン・ブロディ、フォレスト・ウィテカー、キャム・ギカンデット、他
映画「エクスペリメント」のあらすじ
仕事を探していたトラヴィスは、新聞に出ていた求人に申し込む。
その求人は、参加者を看守と囚人に分け、実際の刑務所と同じような環境で2週間過ごすという大学の実験であり、期間を終えれば高額報酬がもらえるというものだった。
気軽に参加したトラヴィスだったが、その実験はエスカレートし、凄惨な事態を招いてしまう。
“物足りない”理由と考察、その感想
エスのハリウッドリメイク版
エスを以前に見てから、どのようにリメイクされるのかと思って期待して見てみたが、エスとはテイストが違う作品に感じ、物足りなかった。
この作品は、狂気じみていく実験の怖さを見せているというよりも、囚人側と看守側に一人ずついる主要キャストの対比を見せているように感じ、囚人側と看守側、またそれを監視する側の心理もどう変化していくのか、という描写が足りないように感じた。
大物俳優が出ているのでそれぞれフィーチャーしない訳にはいかないのだろうが、エスのどろどろした感じに比べると、かなりあっさりした印象を受ける。
フォレスト・ウィテカー演じる看守がどんどん過激になっていく感じは非常に板についていて目を見張るが、それは実験でおかしくなったというよりも、元々彼が持っている素質が大きい気がして、こんな実験を行うと普通の人でもおかしくなってしまうんだ、とは思いづらい。
元々おかしいんじゃないか、という彼を看守の代表かのように扱っていることで、他の看守役の人達の気持ちがどう怖い方向に変化して行くのか、というのも霞むし、そもそも細かく描かれてもいないので、実験の怖さが分かりづらい。
この実験を扱った作品に関しては、看守側にあまり存在感のある俳優を使ってしまうのはいけないんだと思った。
看守側それぞれが目立ちすぎないくらいに揃えなければいけない。
そういう意味でも、エスと比べると主旨が大分変ってしまっている。
主要キャストの対立を見たい訳ではなくて、いかに実験で人が豹変してしまうのか、という所がストーリーの軸であり、見せ所であるはずが、そこらへんがなぜか疎かになってしまっている。
これならば、エスにインスパイアを受けた全くの別物として、実験の怖さというテーマも捨て、二人の人間の生き方の違いを軸にして見せれば良かったんじゃないかと思うが、そういう訳でもなく、ストーリーもそれなりになぞるというどっちつかずになっている。
面白い作品なんだから、有名な俳優を起用したらもっと面白くなるんじゃないかという考えでリメイクしたのだとしたら、安易だと思う。
せっかくリメイクするんだから、大元を超えるつもりで作ってほしい。
トラヴィスが旅行するような描写も入っていたりして、なんとかハッピーエンドであるような終わり方で、エスをかなりマイルドにした印象である。
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