ミラーズ・クロッシング 英題:Miller’s Crossing
監督-ジョエル・コーエン 1990年 114分
脚本-イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン
出演-ガブリエル・バーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ジョン・タトゥーロ、他
映画「ミラーズ・クロッシング」のあらすじ
禁酒法時代のマフィア間の抗争を描く。
博打好きで頭が切れるマフィアのトムは、アイルランド系マフィアのボスのレオと、上下関係を超えた信頼関係を築いていた。
ある日、イタリア系のマフィアのボスのキャスパーが、バーニーという男を殺す依頼をレオに持ちかけるが、レオは了承しなかった。
次の日レオの用心棒が何者かに殺され、キャスパーの仕業だと思ったレオはキャスパーを攻撃し、二つのマフィアは激しい抗争に発展してしまう。
トムはレオの側についていたが、レオの愛人と寝たことがばれ、レオから絶縁されてしまう。
トムは言葉巧みにキャスパーの懐に潜り込み、今度はキャスパーの側につく。
うまく立ち位置を変えながらも、自分の信念を通そうとするトム。
持ち前の頭の切れで、自分に降りかかってくる火の粉を振り払っていく。
“物足りない☆2”理由と考察、その感想
頭のいいトムがあまり好きになれない
借りたお金は自分で返す、返さずにボコボコにされても相手は恨まない、浮気をしたことを正直に告白して絶縁されるとか、誤魔化さないところが男気を感じる。
粋な感じもするが、頭もかなりいいように感じる。
なりゆきがうまくいったということもあるだろうが、その頭の良さは決して誰かのためにではなく、自分の身を守るために使っていたように感じた。
決して権力に屈するわけではないが、レオの為でもない。
かといって権力も利用してうまく立ち回っている感じに、せこさも感じた。
最終的な結末も成り行きに任せた感じがする。
きっとトムは自分の身を守ることで必死だったんだろう。
むしろ、全て計算しつくして行動できるより、そういう方が人間的でリアルなのかもしれない。
そこまで魅力は感じないが、せこさも含め人間的ではある。
所々格好良い描写があるが、入ってこない
この作品は、ギャング物が好きな人には、いいかもしれない。
コロコロ変わるトムの立ち位置によって、話が複雑になっていて、ただのギャング同士の抗争にはなっていない。
所々、トムの素直さや男気のある描写が格好良く、悪くないが、上述した通りいまいちトムを好きになれなかった。
素直で隠し事が出来ない不器用な男が、成り行きのまま翻弄されていくなら良かった。
しかし、トムはかなり頭がきれる感じがするので、一見男気があるように見えて、自分のためにばかり行動している。
頭が良いという要素が邪魔な気もする。
頭が良いなら、徹底的にせこい人間にして最後にしっぺ返しを食らう、もしくは頭は普通なら人情溢れる不器用だが粋な男、など、どっちかに振り切れて欲しかった。
トムは両方あり、人情もあるが、せこくもある、どっちかというとせこい寄りだと思う。
マフィアなんて犯罪を生業にしている訳だから、所詮その程度なんだろう、むしろそれくらいがリアルだ、と言われればそうだが、そういう風に描きたかった訳じゃないんじゃないか?
筋の通ったマフィアもいるんだ、と思わして欲しかったし、思わしたかったんじゃないのか?
そんなこんなで、格好良さげな雰囲気が所々にあっても、いまいち良いと思いづらい。
マフィアとしてはまだマシな人間というくらいで、トムに魅了されるほどではない。
トムも含め、出ている連中は全員小物で魅力は少ない、その彼らのやり取りが面白くて釘付けになるほどでもない。
トムがどんな人間か、どこから来てどこへ行こうとしているのか、何が目的で何がしたいのか、はっきりと分かれば全体が面白くなったかもしれないが、彼の人間性が複雑ではっきりせず、どんな人間か分からない。
ゆえに、感動もしづらい。
話の構成などは緻密で秀逸だとしても、なんとくなく格好良いな程度で、ガツンと来ないのが残念だ。
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