映画「回路(2001)」が“オススメ”の理由と考察、その感想

②オススメ☆4

回路 Pulse

監督-黒沢清 2001年 118分

脚本-黒沢清

出演-加藤晴彦、麻生久美子、小雪、役所広司、他

映画「回路」のあらすじ

次々と身の回りの人たちが自殺していく。

「幽霊を見たいですか?」というメッセージが載っている不気味なホームページ。

街中に次第に増えていく赤いテープで張られた部屋。

その部屋で何かを見た人は、黒い影を残して消えていくのだった。

世界が少しづつ変容していく。

それは急速な勢いで世界に蔓延していく。

この世界に一体何が起こっているのか?

“オススメ☆4”の理由と考察、その感想

昼間に現れる、全く隠れていない幽霊

これは、不気味で怖かった。

話しの真相はなんか難しくて、自分の中ですっきりはしなかったが、世界観が雰囲気があり、気持ちの悪いシーンが多い。

幽霊をこんな感じで生々しく描いている作品は、他にないと思う。

普通のホラーはだいたいが幽霊が出す音で怖がらせたり、幽霊が一瞬出てきて迫ってきて終わりだが、この映画はそんな幽霊を直視して映像にしている感じだ。

貞子とか、呪怨のような、いわゆるデフォルメしたお化けって感じではなく、幽霊というものをフィーチャーした感じ。

暗い部屋に一人きり、奥から幽霊がゆっくりと、自分に向かって走るように歩いてくるのが見える。

人間のように服を着ているが、あきらかに動きが人間ではない。

これはまるで、実際に幽霊を見た人のリアルな目線のような、生々しいものを感じた。

開かずの部屋の中で起こっていることだ。

世界観自体がなんか気持ち悪くて良い。

役所広司は、ちょっとしか出てこないけど、キーパーソンだった。

加藤晴彦は、この頃からもあんまり年取ってない感じで、大学生が合っている。

麻生久美子も自然で良い。

ホラー映画の中で、大分気持ち悪い方に入ると思う。

ホラー映画って、びっくりさえ我慢したら大丈夫みたいのが多いから、もっとこういうぞわぞわする感じの映画を作ってほしい。

この監督は他にも「ドッペルゲンガー」とか、「叫」とかのホラー映画も撮っているみたいだ。

ぜひ観てみよう。

この監督の最高峰かも 追記:2023/05/26

ドッペルゲンガーを見たが、すごくいまいちだったので、この監督の他の作品は見ていない。

この作品は、今まで見たホラー作品の中で世界も含め5本の指に入る気持ち悪さだと思う。

ホラーは基本的にサプライズだが、そこに頼っていない真っ向勝負のホラーというとほめ過ぎかもしれないが。

夜のおどろおどろしい雰囲気ではなく、昼に出る幽霊や怪奇現象だから良い、普通のホラーと一線を画している。

世界が終わっていく、というイヤーな雰囲気、希望のない雰囲気もよく描かれていると思う。

この監督のドッペルゲンガー以外の作品は見てないけど、多分これが一番良いだろうと思ってしまう。

ドッペルゲンガーは何か説教臭い感じもあり、いまいちだったので、他の作品はもう見る気がしない。

この回路のような路線、回路の良さを踏襲し、さらに発展させたホラーを黒沢が追及していっていたら、きっとものすごい作品が作れていたんじゃないかと思う。

ホラーを諦めたのか、この作品の良さや自分の良さを知らなかったのか分からないが、普通の監督になって賞をちょこちょこ取って、普通の作品しか撮らなくなったのが非常に残念である。

この作品は、ホラーだがSFでもあり、ちょうどいいバランスなんじゃないかと思う。

もし、ただの人を死に至らしめる菌だったら少し冷めるが、そうではなく「あの世」が飽和状態になっている、ということで、ホラー要素とつながっている。

考えるとよく分からない、そもそもあの世が飽和状態ってなんだ?とか、なぜ生きている人が死ぬのか?とか、なぜ今なのか?、とか、色々なんとなくわかった気になって見ている。

しかし、この作品の気持ちの悪い映像や雰囲気は非常に良いので、そこらへんの突飛さはこの作品においてそこそこ補えていると思う。

勧善懲悪という訳でもなく、見終わってスッキリする訳ではないが、変な気持ち悪い空気感を味わいたい人におススメだ。

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