見どころ!→人を好きになったかんしゃく男は強い
監督-ポール・トーマス・アンダーソン 2002年 95分
出演-アダム・サンドラー、エミリー・ワトソン、フィリップ・シーモア・ホフマン、他
あらすじ
バリーはスッポンなどを売る物販の会社で働いている、女性に対して奥手な独身男性。
真面目だが内気でかんしゃく持ちである。
特にこれといった楽しみもなく、バーコードを貯めればマイレージがもらえる商品を買い込むのが日課になっている。
そんなバリーがある朝出社すると、車を修理工場に出したいから工場が空くまで車を預かってほしい、と女性に車のキーを預けられる。
女性はリナと名乗り、奥手なバリーは彼女に惹かれつつも、どこかよそよそしい。
実は彼を心配した姉が、会社の同僚のリナにバリーの写真を見せ、バリーに一目ぼれしたリナが、車の修理を口実にバリーに会い来たのだった。
その後、姉が会社にリナを連れてきてバリーに紹介し、二人は再び対面を果たす。
バリーは、姉の誕生日パーティーで姉たちに言われた悪口でかんしゃくを起こして窓ガラスを片っ端から割ったり、さみしさからQ2ダイヤルに電話してトラぶったりしていた。
そんな変わり者だがどこか憎めない青年バリーの生き方が、リナと出会ってから、少しづつそして劇的に変わっていく。
リナが仕事でハワイに行くと聞いたバリーの突発的な行動とは?
リナと車に乗っていた時、ちんぴらに絡まれたバリーの見せた思いがけない立ち振る舞いとは?
感想
ポール・トーマス・アンダーソンの4作目の作品。
前作「マグノリア」や、後の「ザ・マスター」・「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」などの濃いめのポール作品と比べると、結構あっさり目に感じます。
良い意味で軽く見れる作品です。
ポール監督の濃いやつを期待していた人には少し物足りないかもしれません。
パンチドランクラブは、英訳すると「フラフラの恋」ですが、「強烈な一目惚れ」という意味があるそうです。
一目惚れと聞くと劇的で、出演する男性も女性も美男美女で、いわゆるイケてるという人たちの非日常のドラマという感じを思い描きますが、この作品は違います。
バリーもリナも決して美男美女ではないですが、二人とも実際に身近にいそうな人間像なので、リアルでどこか親しみを感じます。
現実には、さわやかな美男なんかよりも、バリーの様に心に少し影があるような男性の方が多い気がします。
純粋なところもあるし真面目だけど、素直に気持ちを出せない自分にむしゃくしゃしてしまうような男性。
リナも飾っていない感じが良いです。
バリーは変わっているが、それも知って包み込んで接している感じ。
リナと出会ってからのバリーの変わり具合がとても好きです。
今まで相手にしていなかったことでも、好きな人が絡むと目の色が変わるという感じ。
恐らく、リナと出会っていなかったらダラダラと処理していたであろう問題。
好きという気持ちになると、こんな感じになる、行動も変わる、という分かりやすい感じです。
その人を守るためとか、良いとこ見せようとか何も考えてなく、ただ真っ向からむかっていくという。
リナに会いに行ったバリーの嬉しそうな感じが、見ているこっちは微笑ましく、とても可愛げを感じます。
リナはそれを間近に感じて噛みしめていることでしょう。
ちんぴらのボス役のフィリップ・シーモア・ホフマンもとても良いスパイスになっています。
あれだけ少ないシーンなのに、しっかりと存在感を光らせています。
そして、ホフマンのただの薄いチンピラではない感じも、バリーの行動に深みを増すことに一役買っています。
もしちんぴらのボスがただ悪いだけの薄い人間だったら、殴り合いになる、みたいなよく見る展開になっていたかもしれません。
全編通して、いわゆる感動に持っていこうという恋愛ストーリーではなく、すっと入ってきました。
派手ではなく、ささやかですが、心に残る作品です。
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