クズとブスとゲス
監督-奥田庸介 2015年 141分
脚本-奥田庸介
出演-奥田庸介、板橋駿谷、岩田恵理、芦川誠、他
映画「クズとブスとゲス」のあらすじ
薬の売人をやっていたリーゼントの男は、自分を支えてくれるOLの恋人のためにも、堅気の仕事を探していたが見つからず、仕方なく元の売人に戻ったが、恋人にばれて愛想をつかされてしまう。
そんな最中、若い女性へのゆすりで生計を立てているスキンヘッドの男に突如恋人が拉致され、裸の写真をばらまくと脅された恋人は、無理やり風俗で働かされることになってしまう。
それを知った怒り心頭のリーゼントの男は、スキンヘッドの男の元に殴り込みに行くが・・・。
“つまらない☆1”理由と考察、その感想
本当にクズなのに格好良く描こうとしている
話し的には主人公はリーゼントの男なんだろうが、スキンヘッドの男が全面に出すぎて誰が主人公か分からない。
スキンヘッドの男は、タイトル通りクズであり、ゲスでもブスでもあり、全然魅力のない暴力的な男なので、主人公にしては足りなすぎる。
スキンヘッドの男は本当にクズなので、この男を軸として長く見せるのなら、それなりの制裁というか、クズなりの散り際というものを見せて欲しかったのに、最終的に格好つけて終わるというところがかなり胸糞が悪い。
ヤクザにボコボコにされるのも、最終的には逆転勝ちするので、制裁になっておらず、より格好良くしようという布石でしかない。
きっと、このスキンヘッドの男役兼監督は、スキンヘッドの男を格好良い男として撮っているんじゃないかと思う。
タイトルで自らクズと名乗ってはいるが、可愛げのない、美学もない、表面上強がっているだけの本当のクズであり、そんな男を生かした終わり方をするあたりで、ああ、気づいてないんだと思う。
ラストでスキンヘッドの男がヤクザをなんとかやっつけて、リーゼントに写真の場所を聞かれ、「戸棚の中だよ」と言って背中を向けて格好つけた所を思いっきり後ろから殴られてボコボコにされることを期待してしまった。
俺クズだから、と口では言ってはいるが、本当にクズだと思ってはいなく、自分に酔っている感じが終始する。
演出でわざとやっているという感じではない匂いがするから、このスキンヘッドの男を通して監督は自分がいかに凄いかというのを見せ付けようとしているんじゃないかと勘ぐってしまい、まだ若いなと思ってしまう。
スキンヘッドの男は、強がっていてもさらに強い力が来たら命乞いするし、基本的に自分より力の弱い人間ばかりしか狙わない。
ただ暴力で威嚇してることだけで自分は強いと勘違いしているクズであり、可愛げのある憎めないクズではないので、引き込まれるわけではなく、変な生き物を見ているような楽しさもない。
どう見たって二流のチンピラであり、ヤクザだとしたら本当に底辺の取り巻き程度にしか使いどころがないくらいの脇役も脇役で、これを無理やりフィーチャーしてしまう辺りが若いなと思う。
本当の暴力がリアルだとは限らない
本当に殴りあっている、本当にビール瓶で頭を殴って出血している、とか、本当にやることがリアルだから撮った映像もリアルになると勘違いしてはいけない。
実際、見てみたら殴ってるシーンは演技で殴っているより迫力がなくてごちゃごちゃっとしてしまっているし、ビール瓶で殴ったのは見てて本当かどうか区別もつかないし、本当だとして、だからなんだとなる。
大事なのは演技をする時の気持ちであり、第一そんなに高度な演技が求められるシーンでもなかったと思う。
勝手にやればいいことだろうけど、フェイクに劣るんであれば、わざわざ本当にやる理由がなくなってしまう。
フェイクで演出した方がリアルで生々しいとしたら、無理やり本当にやらせて迫力がなくなっている方の映像を選ぶというのは、もう何がリアルか見えなくなってしまっているんだと思う。
自分にはそれくらいの真剣な気持ちがあるんだと提示しているだけの行為で、中身がなければしょうがない。
それよりも、登場人物の内面の描写や、ストーリーの構築など、もっと力を入れるべき場所があると思う。
北野映画のインスパイア
受けた印象としては、北野映画の雰囲気をちらほら感じた。
長回しなどの撮り方や、登場人物の会話の雰囲気など、影響を受けたんだろうと思われる。
北野映画によく出ている役者が出ていることも然り。
しかし良かったころの北野映画のように味わい深い訳ではないから、だからなんだということではある。
劣化版ですらないような気もする。
心に響きそうな話しは、リーゼントとOLの話だが、ちょっとしか描かれていないので、物足りない。
どれだけリーゼントが恋人のことを好きなのかだとか、恋人がどういう思いでリーゼントを支えているのかなど、もっと掘り下げてもらえれば、リーゼントをもっと応援できたかもしれない。
リーゼントの人間性に可愛げがあるし、恋人の地味な普通の感じも悪くないから、もったいない気もする。
二人が恋人という感じもあまりせず、とってつけたような恋人設定という感じになっている。
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