「大いなる遺産(Great Expectations)」(1998年)のあらすじと感想

④物足りない

監督-アルフォンソ・キュアロン 1998年 110分

脚本-ミッチ・グレイザー

出演-イーサン・ホーク、グウィネス・パルトロー、ロバート・デ・ニーロ、アン・バンクロフト、クリス・クーパー、他

あらすじ

両親をなくし、姉とその恋人に育てられていたフィンは、10歳の時のある日、脱獄囚のアーサーと出会い、アーサーを逃げがすために協力したが、その後脱獄囚は捕まってしまう。

そんなことがあったフィンだが、ジョーの仕事で一緒に訪れた屋敷の大富豪、ディンズムア夫人に気に入られ、夫人の姪エステラの遊び相手になって欲しいと頼まれる。

夫人は、結婚式当日に婚約相手に逃げられたことで気が狂い、それ以来屋敷にこもる悲劇の富豪として知られていた。

お金がもらえることもあり、屋敷に通ってエステラと遊んでいたが、魅力的なエステラに惹きこまれ、恋をする。

時は流れ、フィンは相変わらずエステラを思っていたが実らず、エステラはパリの学校に行ってしまう。

フィンは幼いころから趣味で書いていた絵を描くことも辞め、ジョーと漁の仕事に精を出していたが、ある日、ジョーの絵を応援したいと、謎の支援者から、ニューヨークで個展を開くことを勧められる。

夫人の勧めもあり、エステラに相応しい人間になるために、ニューヨークでの成功を夢見て上京したフィンは、ニューヨークでエステラと偶然再会するのだった。

「大いなる遺産」の感想

チャールズ・ディキンズの名作が原作

ロバート・デ・ニーロが出ている、という事で借りてみた。

この作品は、イギリスの国民的作家、チャールズ・ディキンズの長編小説「大いなる遺産」が原作で、1917年から2012年まで5回も実写映画化されているらしく、自分は1998年版の作品を見た。

テレビ版でも、ドラマや映画化されているらしい。

序盤は、その子供の頃の淡い恋心が芽生える感じが、幻想的な屋敷の中で展開され、見ているこっちも素敵だな、という感じになった。

屋敷の女の子が結構ませているのが気になるが。

しかし、全体を通して見ると、何だこの話は、と思った。

一体、誰に気持ちを持っていけばいいのか、誰も好きになれないまま終わった。

原作は読んでいないが、きっと、原作の小説の面白さが表現できていないんだろう。

こんなに何回も映像化されているのだから、きっと原作は面白いに違いないだろうとは思うが。

フィンは家族以外の人間によくされている

唯一の肉親は姉であるが、その姉もどっかにいってしまい、姉の元恋人に育てられている、という感じが良い。

元恋人のジョーや、ディンズムア夫人とその姪エステラ、支援してくれた脱獄囚のラスティグなど、血のつながった家族以外の人間と接して成長していくというのは、過酷であるが、良いストーリーであるとは思う。

信念さえあれば、どうにでもなる、と言ってくれているようで悪くない。

フィンはなぜエステラを好きになったのか?

好きになった人に、なぜ好きになったのか、など言うのは愚問かもしれないが、エステラに何の魅力があるのか全然わからなかった。

いわゆる典型的なお嬢様そのもので、ツンツンしていて、思わせぶりで、フィンのことなど鼻にもかけていない感じ。

結婚する前にフィンに気持ちが向いている感じはしたが、今さらなんだ、というのもあるし、うまくいかないのが呪いによるものだ、と言われてもよく分からない。

もし本当に呪いなら、もっとそこを際立たせて欲しかった。

長年接していて、エステラの良さをフィンは知っているのかもしれないが、それならそこを描いてくれないと、画面に映っている彼女は、若者が人生をかけて振り向かせたい、というほどの人では全然ない。

騙される人は少なからずいるかもしれないが、本当の意味での魅力はない。

すごく優しくて飾らない感じの人なら分かるが。

もうそこが分からないので、頑張って応援しようという気にもなれない。

脱獄囚のラスティグの支援はどうなのか?

終盤のシーンで、かつてフィンが幼少期に接した脱獄囚のラスティグと再会し、実は彼が全て裏で手引きし、展覧会も何もかもうまくいくように援助していた、というどんでん返しがある。

これは、どう捉えていいのか分からなかった。

そうなのか、と思う反面、なんで?と思う。

このラスティグという人間がどういう人間なのか分からないから、支援した、だからなんだと思い、特にプラスに心動かされることもない。

きっと、改心して何か出来ることはないか、と思って良かれと思ってやったことは間違いないのだろうが、この展開はなんなんだ?

ディンズムア夫人の支援だと思っていたが、実はあの時の脱獄囚の支援だった、だからなんだ?

正直、あのディンズムア夫人は信用に足るような人間ではないから、その支援が夫人によるものでなかった、と分かっても、裏切られた、という感じも大してなければ、もちろんラスティグありがとう、という感じもない。

どっちつかずの、ポカーンとしてしまう感じである。

ラスティグという人間が、良い人間であり、昔から知っていた、ということならまだ分かるが、ほんの少し会っただけで、優しくしてくれたから、と全面的に支援する脱獄囚なんて、怖くてしょうがないと思う。

個展が成功した、自分の絵が認められた、という事自体は嬉しいだろうが、複雑で喜ぶに喜べない。

フィンは喜んでいる訳ではなかったが。

きっと、犯罪がらみの汚いお金を使っているだろうし、昔の仲間に狙われているって、昔どころか、直近まで悪いことしてたんだろうと思う。

これは、一体何が言いたいんだ?

この大胆な展開の意図することがこの描写では全く分からない。

ちょっとしたショックと驚きだけで、なんか複雑、という感じ。

ディンズムア夫人が、もっとまともな人という感じだったら、裏切られた、ズタズタに心を傷つけられた、という感じはあったかもしれないが、夫人は変人なので、そうでもない。

ずっと優しくしてくれた夫人が実は悪で、ちょっとだけ接した脱獄囚が善だった、ということだったら面白いが、夫人は最初から別に良い人ではないし、ラスティグも信用できない。

どっちも描き方が中途半端なので、ここをもしどんでん返しにしたかったのであれば、全然描けていない、描きが足りないと思う。

原作はどうなっているのか知らないが、少なくともこの作品では、よく分からない変な話しになってしまっている。

気が狂った富豪の婦人、その美しい姪と主人公の恋、そして婦人の呪い、主人公には絵の才能があり、両親ではなく姉の恋人に育てられ、姉は失踪、小さい頃に脱獄囚を助けて恩返しされる、と、あまりに色んな要素が詰め込まれすぎていて、それがうまく絡んでいないと思う。

イーサン・ホークとデ・ニーロの光る演技

イーサン・ホークは、若者のそわそわした、フワフワした感じの演技が、絶妙にうまいと思う。

特にたくさんしゃべる、という訳ではないが、その体全体から、思っていることが伝わってくる、という感じ。

繊細な感じもあり、かといって怒った感じも出来るので、中々貴重な人だと思う。

デ・ニーロは、出ているシーンはかなり少ないが、それでも存在感抜群で、脱獄して隠れている時は怖い感じ、年を取った時も、怖さもあるが優しい面もある、深くも出来る感じが実に良い。

グウィネス・バルトローもお嬢様感があり悪くないが、この作品では、役者陣はそれぞれ仕事をしているのに、人物描写が足りなかったり、全体として変な話になっているので、非常に残念である。

良い役者が出ても、こんな感じになってしまうんだから、もっと監督がしっかりしてほしいと思う。

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