映画「愛のむきだし 上巻(2009)」が“つまらない”理由と考察、その感想

⑤つまらない☆1

愛のむきだし 上巻

監督-園子温 2009年 106分(上下巻237分)

脚本-園子温

出演-西島隆弘、渡部篤郎、満島ひかり、他

“つまらない☆1”理由と考察、その感想

あざとい世界観

実に見るのが疲れる作品だった。

上巻は106分だが、それでも長く感じた。

何が疲れるのかというと、世界観があざとすぎてリアリティなどほとんど感じれないまま進んでいく。

それは、演者の演じ方や服装、小道具や演出に至るまでほぼ全てだ。

逆にどうやって作ったのかと思う。

満島ひかりが出て来るところ以外全てが嘘くさい。

主人公の高校生が父とのつながりを保つために罪を犯していくというのは分かるが、とてもそんなに悩んでいる様には見えず、不良のような連中とも普通にしゃべるし、特に影の様なものも見えない。

何か心に秘めているポーズのような演技で、いくら父親の気を引くためと言っても、勝手に道行く女性を撮影するという行為に至るまでの、あるはずであろう葛藤なども何も感じれず、描かれていない。

それをむしろ楽しんでいるところを笑ってほしいということなのかもしれないが、気持ちをないがしろにした、ただのずれた行為なので、面白いという所までは決していかない。

撮影するという行為をわざと誇張して面白おかしくしようという意図が丸出しで、何が目的なのか分からない。

側転しながら撮影するなんてリアルでもなんでもなく、リアルに見せようとしている訳でもなく、もし本当にそのまま面白さを狙っていたとしたら、恐ろしい感性をしていると思う。

面白くしたいのであれば、出て来る俳優やエキストラに真剣に演技をさせなければいけないのに、そこは明らかに適当で下手くそな演技しかさせていないので、あざとい行為がよりあざとく際立っている。

仮にリアリティのない行為でも、俳優陣のリアルな演じ方で、さもこの世界では当然かのように見せれないこともないと思う。

しかしそもそも突飛な行為、リアルに見せられるはずのない行為を選び、さらに適当な演技で見せているわけだから、致し方ないだろう。

これは、主人公のユウの行動に限ったことではなく、独特のユーモアセンスをあざとい演技で見せていくというのが、最初から最後までほぼ全編にわたっているので、逆にすごいと思う。

こんな見せ方をされたら、どれだけストーリーがしっかりしていても、そんなものは一瞬で消し飛んでしまうと思う。

ヨーコが光って見える

唯一目を惹かれたのが、満島ひかり演じるヨーコの自伝的な紹介映像の部分だ。

満島ひかりのナチュラルに粗雑な立ち振る舞いが、軽快な音楽と相まってロック感満載で実に格好良い。

ほんの数分ではあるが惹きつけられ、もっと見ていたいとすら思う。

満島ひかりに演技している感じが全くしないというのも大きい。

彼女のマンパワーなんだろうと思ってしまうが。

上巻だけしか見てないが、この監督は演技については全くの素人なんだと思った。

もし演技に造詣が深かったとしたら、他のシーンや出演者にも満島にやらせたクオリティーの演技をさせようとするはずだろう。

満島が天才だからと言っているわけではなく、このナチュラルさが標準でなければ、とてもじゃないが見ていられない。

ヨーコの演出が満島にはまっているというのもあるだろうが、ヨーコが出てきてようやくほんの少し見やすくなったという感じだ。

それでも一人だけはまっていても、周りがあざとければ総じて活かされずに終わってしまう。

上巻も見たので、下巻もなんとか見なければなるまい。

監督というのはとにかく作品を撮っていくのが重要かもしれないので、これが全てではなく、きっと監督本人もまだ成長過程なんだろう。

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