映画「ドクター・ストレンジ(2016)」が“つまらない”理由と考察、その感想

⑤つまらない☆1

ドクター・ストレンジ 英題:Doctor Strange

監督-スコット・デリクソン 2016年 115分

脚本-スコット・デリクソン、ジョン・スペイツ、C・ロバート・カージル

出演者-ベネディクト・カンバーバッチ、レイチェル・マクアダムス、ティルダ・スウィントン、マッツ・ミケルセン、他

映画「ドクター・ストレンジ」のあらすじ

天才的な手術の腕を持つ神経外科医のスティーブは、車の運転中に不注意で事故を起こし、一命はとりとめたものの、手の損傷がひどく、二度と手術を行えなくなってしまう。

手術を成功させることが唯一のアイデンティティーであったスティーブは、なんとか腕が元に戻るよう様々な治療を試みるが、願いかなわず絶望する。

そんな中、かつて脊髄を酷く損傷したが回復し今は普通の生活を送っているという人物に出会い、インドのある寺で修業したおかげで治ったのだと聞かされる。

藁をもつかむ思いのスティーブは、すぐさまインドに直行し、聞かされた寺の門をたたく。

その寺で教えていたのは、最新の医療でも宗教でもなく、この世の理を超えた魔術だった。

“つまらない☆1”理由と考察、その感想

時空が歪む映像は見応えがある

SFヒーローアクションは突飛なものが多く、軽くなってしまいがちなのであまり進んで見ないが、これはベネディクト・カンバーバッジが主演だし、元外科医のヒーローという設定にも惹かれて、面白そうだなと思って借りたがいまいちだった。

魔術で何もない空間からエネルギーのようなものを出して武器として戦うのはまだ想像がつくが、時空を操って空間が次々に歪んでいくことで相手を攻撃する映像は独特で迫力があり、中々見ごたえがあったのだが、ストーリーがあまりにも省略されていて、よくわからない所が多々あった。

これはもう子供向けというか、ストーリーなんてどうでもいいからなんとなくで楽しんでくれ、という感じなのかもしれない。

ポイントがそぎ落とされた寺での修行風景

まず、スティーブが魔術を覚えるのが早すぎる。

天才というくらいだから相当頭が良いのだろうが、たいして苦労せずにどんどん覚えていき、しまいには禁断の封印された超魔術まで早い段階でたどり着いてしまう。

天才で覚えが早いとしても、最初こそ苦労したが後はもう余裕で冗談を言いながら、楽にこなしている感じで習得できてしまう魔術って何だと思う。

天才プラス、絶対に指を治すんだ、という執念でここまで早いならまだ分かるが、そんな真面目な必死さもなく、かといって才能があるならそういった描写も、なぜ才能があるのかも教えてほしい。

天才外科医の技術とリンクするところがあるなら、それもしっかりと描いてほしいし、スティーブンがこの生活を楽しんでいるように見える描写がゆるくて、一体何をしに来たのかわからない。

覚えが早くても良いが、せめてゆるめずに鬼のような顔でいて欲しかった。

もしくは、いくら天才外科医でも、魔術に関しては全く覚えが悪い出来損ないでも良かったと思う。

こんな人間でも門の前で半日粘ったくらいで入門させてくれる寺もゆるすぎる。

そして、いつの間にか他のマスター達と同じかそれ以上の戦力になってしまっているので、着実に力をつけていっている描写も省略されすぎている。

もうこれは時間がないからしょうがないのかもしれないが。

元医者である要素が足りなすぎる

スティーブンは、ドクター・ストレンジというくらいで元医者だが、元医者の要素がうまく生かされていない。

魔術を手に入れて、その魔術を使って普通のマスターが出来ないような怪我の治療が出来てしまう、とかなら分かるが、自分が、もしくは誰かが怪我をしたら、自分が元働いていた病院に連れていくというのはあまりにも情けなさすぎる。

それはもうただ元医者のコネを使っているだけで、それだけでドクター・ストレンジと名乗るヒーローなんて見たくない。

むやみな殺生はしない、なんて当たり前の話で、それが元医者だから、という要素には足りなすぎる。

そもそもむやみな殺生はしない、って、散々自分に都合の良い患者以外は見捨ててきた人間がよく言うと思う。

スティーブンが心変わりしていく様がちゃんと見たかった

スティーブンは自分の指を治すのが目的であったが、いつの間にか地球を守るという壮大な目的に邁進するようになっている。

それが、いつ変わったのか、何がきっかけで変わったのかがぐずぐずで、どこが境目かが全く分からない。

実はもう序盤に寺での修行をしている時から怪しかったが、本当に指を治したい、なぜ指が治らないんだ、という葛藤がある描写などほぼない。

どんどん魔術を覚えていって、すごい力を手に入れても、手が治らなければ意味がない、と、エンシェントワンの協力要請を一蹴して、傲慢な怒りが爆発するくらいの描写がなければ不自然だ。

スティーブンは本当に傲慢な人間で、新たな人生があるはず、というパーマーの寄り添った助言にも一切耳を傾けずに冷たくはねつけ、自分の手を治すことに固執した。

手術だって、自分がやりたい患者しか手術してこなかった。

そんなスティーブンが、いつの間にか地球を守るために他の仲間と一緒になって戦っている、というのは雑すぎる。

修行によって心が浄化されたというのも説明不足だし、傲慢な人間が葛藤して、自分は人を助けるために医者になったんだ、と気付いて成長するまでの心の過程がばっさり描かれていない。

元々医者だから、地球を守るということも嫌ではない、とすぐになってしまえるのであれば、あまりにもドラマ性に欠ける。

実はそんなに傲慢な性格でもなかった、となってもつまらないから、そこは嫌な性格の人間である、というまま中盤まで粘っても良かったと思う。

寺で修業を始めてすぐに普通になってしまっている。

アヴェンジャーズにつながるこの作品

スティーブンが最終的に敵を倒すことに使った力は、時間を操れるということだが、この力はもうなんでもありの極致なのかなとも思う。

延々と同じ時間をループさせて敵の意欲をそぐというのは、見たことない倒し方で中々興味深かった。

アヴェンジャーズでもドクター・ストレンジは出てくるようだが、全部この能力だけで解決できてしまう気もする。

時間を全て戻して、最初の頃に出てきた時の悪の芽を摘んでしまえば良いとも思うが、きっと代わりに同じような悪が出てきて、それをまた叩いて、というエンドレスになって根本的には解決しないのかもしれない。

それだけで、また別の話が出来てしまうくらい複雑で、それはそれはそれで面白いかもしれない。

今回の闘い方は、もし相手が知能の低い相手であれば、何回同じ時間を繰り返しても気付かなかったり、破壊を楽しむ異常者であったら嫌がらないかもしれないから、誰にでも通用するとは限らないのかもしれない。

アヴェンジャーズは色んな能力のヒーローが集まるが、そこらへんはそれぞれの能力をうまく使えているのかは疑問である。

アヴェンジャーズにつながるシリーズの作品を見るといつも思うが、他のヒーローは何をしてるのかと思う。

それぞれ他のヒーローは他の悪と戦うのに忙しいのかもしれないが、地球が滅亡するというのに駆けつけないというのは、どうなんだろう?

コミックだからしょうがないか。

この作品も、早くアヴェンジャーズを完成させたいがために早く世に出さなければいけないし、あんまりディテールにこだわっている暇はないのかもしれない。

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