エヴォルーション 英題:Evolution
監督-ルシール・アザリロヴィック 2015年 81分
脚本-ルシール・アザリロヴィック、アランテ・カバイート
出演-マックス・ブレバン、ロクサーヌ・デュラン、ジュリー=マリー・パルマンティエ、他
「エヴォルーション」のあらすじ
大人の女性と小さい男の子しかいない海辺の村がある。
絵を描くことが好きな10歳のニコラは、母親と二人暮らしで、昼間は友達と海で遊び、毎夜決まった薬を飲んで眠る、ささやかな日々を送っていた。
ある日、ニコラはなぜか一日だけ入院させられて何かの注射をされるが、家に帰ると、女性たちが海辺に集まり謎の儀式を行っている所を目撃してしまう。
また、家の中で、母親の背中についていたある物を目撃してしまったニコラは、翌日から長期入院させられてしまう。
病院には、自分と同じように入院させられている子供たちがいて、ニコラはこの環境に不信を抱いていく。
“つまらない☆1”理由と考察、その感想
意味ありげな雰囲気だが中身がない
面白くなかった。
終始説明を省いた淡々とした描写で、会話の中で秘密が明かされる、という事もなく終わっていく。
たしかに特に説明などなくても良いし、映像だけで想像しながら、見ている者がそれぞれ何か感じられればそれでいいと思うが、特に何も感じられなかった。
子供を使って何か良からぬことをしているのは明確だが、見ていて迫ってくる恐怖なども特にないし、見入ってしまう様なドラマチックな展開も特にない。
ピークは、借りる時のDVDのパッケージの写真と簡単な作品の説明を呼んだ時で、見ていくとどんどん下がっていく。
女性と子供しかいない村、という説明、そして海岸に女性と子供たちが映っているどこか雰囲気のある写真を見た時。
しかし、中身がない。
主人公の子から強烈な感情を感じる訳でも、ストーリーの展開的にも特に起伏がなく、最後にスッキリとする訳でもない。
かといって、淡々としたその描写、きれいな景色も相まった美しい映像も、村の女性たちの感情を出さない淡々とした感じも、見ているだけで魅了されるほどではないので、話にも引き付けられない、目で楽しむことも中途半端で、非常に退屈な時間であった。
それっぽい雰囲気の映画の表層だけを真似しただけの作品、という感じだ。
「初期クローネンバーグ、リンチを思わせる!」とガーディアン紙が評価していたようだが、全然そんなことはない。
彼らの作品も理解不能だが、もっと不可思議で濃く、感じるものはあった。
これはそれらに比べると大分薄めである。
怖さが足りない
どんな秘密があるのか、というのは非常に気になったが、すごくすかされた感じになった。
一見人間だけど、吸盤が付いている、海が泳げる、子供を産めないから子供を使って繁殖活動をしている、というのは確かに奇妙ではあるが、なんか弱い気がしてしまう。
人間でない独特の不気味さを感じたかったが、そういったものは特になく、人間ではないけど、人間の様に話が分かる連中の気もする。
吸盤がついている、水中でも呼吸できるとか、そういった外側のことではなく、一見人間だけど中身がおかしい、というのが一番怖い。
しかし、特に野蛮でも冷淡でも厳しくもなく、普通で、どちらかというと優しいよりの人格の生物で、そういった怖さはない。
主人公を助けた看護師は、助けるように見せかけて最後に主人公を食べてしまう、ただ人の心をもてあそんでいた冷淡な生物である、というような描写があっても良かったと思う。
最後に食べるだけだと、それはそれでとってつけたようになるので、全編にわたってこの人たちはなんかおかしい、という描写が散りばめられていれば良かったのではないかと思う。
吸盤が見えてしまった、浜辺で夜な夜な女性たちが不可解な行動をしている、などとそんな外付けのことではない。
動物をなぜか子供の前で残忍に殺すとか、人に優しくするという概念がそっくりなくて、人間の真似をしている感じだとか、色々出来たんじゃないかと思う。
ただ体や繁殖機能が人間と違うだけの人間にしか見えないので、怖くないし物足りない。
おかしな連中の中にまともな人もいて、助けてくれる人もいるというありきたりな発想の人物描写を入れる必要も特にないと思う。
ずっと残忍で良いが、そういう訳でもない。
そういった肝心な不気味さが表現出来ていないので、盛り上がりのない変なSFの話、という感じになってしまっている。
「見る人が各々想像して楽しむ作品」とも言われているようだが、それは都合の良いすり替えである。
ある程度のものを投げて、後はご自由に、なら分かるが、そこまで達してないものを投げて、想像にお任せします、というのは、ただの丸投げになってしまう。
この作品にそれを言うなら、この作品はつまらない、と言っているのと同義である。
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