アンドリューNDR114 英題:The Bicentennial Man
監督-クリス・コロンバス 132分 1999年
脚本-ニコラス・カザン
出演-ロビン・ウィリアムス、エンベス・デイヴィッツ、サム・ニール、他
“オススメ☆4”の理由と考察、その感想
生々しいロボットの葛藤
生きるという意味は何か、ロボットと人間の差は何かということを投げかけるSFヒューマンドラマだ。
ロボットが主人公の話しだが、SFというより人間ドラマとしての要素がかなり強い。
長く生き続けることで自分が心寄せる人が次々になくなっていくことへの葛藤なども描かれていて、人間とロボットの差というテーマだけでなく、そもそも人間が生きるということは一体なんだということを優しい語り口で生々しく突きつけてくる。
自分の好きな人が寿命でなくなっても、アンドリューは壊れた所を直せば永遠に生きられる。
普通の人間でも葛藤があるテーマを、死がおとずれないロボットであるアンドリューを通すことでより強烈に浮き彫りになる。
人間のように外見や体を改造し、裁判で自分が人であると主張し、最終的には最愛のポーシャと同じように自分にも寿命が来るように体を変えたアンドリュー。
アンドリューは2度目の裁判では人間として認めてほしいとは主張せず、自分が自分であればそれでいいという考えにたどり着いた。
もし自分がアンドリューだとしたら、自分もアンドリューと同じことをしたいと思う。
いや、きっとアンドリューほど強く生きられないだろう。
なんという強い生き方だろうか。
自分の運命に絶望し、葛藤しながらもあきらめずに戦い続け、ついには心の平穏を手にし、自分で幕を閉じた。
人間よりも人間らしい生き方と言ってもいいんではないだろうか。
実に強くて熱い生き方だ。
これは映画だが、アンドリューというロボットの行動を見た人間の心をここまで動かしているということが何よりの人間である証拠で、彼を前にして人間か否かという定義の論争自体が的はずれで愚かなものだろうと思った。
ロボットが主人公ということだが、十分すぎるほど感情移入できるストーリーだ。
外見で判断しない女性
アンドリューが時代を越えて好きになる女性の人格も、ロボットということに囚われずに人を見る目のある純粋な女性であり、非常に好感が持てた。
普通の人がアンドリューはロボットだという常識に縛られたフィルターを通してアンドリューを見るのに対して、リトル・ミスは外側は飛ばしていきなり中身から見る。
それが故に相手がどういう背景かなど知る前に、好きという気持ちが先に動いてしまう。
好きになるのにロボットも何もないということも、ロボットとは?人とは?好きとは?と考えさせらる。
こういう人にとって後から知った問題は好きという最優先事項に比べたら取るに足らなく、様々困難はあっても支え続けるのだろう。
いつの時代もこういう女性に男は救われてきて、アンドリューもまた救われた。
リトル・ミスは自分ではその良さに気づいてないかも知れないが、自分を一人の人格として見てくれるリトル・ミスに、アンドリューが恋をしてしまうのもうなずける。
アンドリューはどうやって学んでいった?
アンドリューが成長する細かい過程をもう少し見たいと思った。
好きな人の死を通して葛藤するだけじゃなく、ポーシャに不審がられる行動やミス、人間として間違った行動で人を傷つけたりすることは、描かれている以上にたくさんあるはずだと思う。
長く生きた人間ですら人を傷つけたり、不用意に相手を怒らす言動行動をとることもあるからだ。
一緒に住むのであれば当然たまには喧嘩もするだろう。
人間とは何かという定義探しとはまた別の、人間と直に接する上で生じる現場の不協和音へのアンドリューなりの対処の仕方が知りたかった。
アンドリューはきっと教養もあり賢い方なのかもしれないが、どうやってそこら辺を学んでいったのか、学ぶに当たってどのようなものを参考にしたのか、それがどのような本なのか、映画なのか、実際に誰かに指摘されたのか。
またアンドリューはそれを、これは自分がロボットだから起こしたミスなのか、もしくは人間でもこういうミスをするから大丈夫なんじゃないか、いやいや人間とか人間じゃないとか関係なく気を付けなければ、とかどう考えて落とし所を見つけていったのかなど気持ちの面も知りたかった。
ただえさえ結構盛り沢山で壮大な話しなので難しいのかもしれないが、気になるところだ。
特に外見がロビン・ウィリアムスになってからはある程度成熟してしまっている様に見えるので、なおさら気になる。
顔の表情も人工筋肉で表現出来るのだろうが、内面が豊かでなければ人が見て好感の持てる顔の表情にはならないから、人間の外見になりたての時は、もう少しぎこちなくても良かったと思う。
それは顔の表情だけでなく、仕草や漂う雰囲気も。
かなり難しい演技なのかもしれないが、そこら辺もさらっとしている。
132分ということで長すぎるわけではないが、途中で先が見えずに少しだらけてしまうところはある。
それでも、人間とは何かを考えさせられる作品であり、人間ドラマとして見応えがあるものになっている。
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