ミリオンダラー・ベイビー 英題:Million Dollar Baby
監督-クリント・イーストウッド 2004年 133分
脚本-ポール・ハギス
出演-クリント・イーストウッド、ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマン、他
映画「ミリオンダラー・ベイビー」のあらすじ
今までたくさんの優秀なボクサーを世に送り出してきた老トレーナーが、アマチュア女性ボクサーを指導し、共にスターダムへと上り詰めていく中で、お互いに生きる希望を見出していく師弟愛を描いた人間ドラマ。
かつてボクサーの止血係として名をはせた名トレーナーのフランキーは、相棒で元ボクサーのスクラップと共に細々とボクシングジムを経営している。
将来有望な黒人ボクサーをトレーナーとして指導しているが、早くタイトル戦を望む黒人ボクサーに、フランキーは「まだ早い」と諭し、タイトル戦を断っていた。
フランキーは、かつて育てていたボクサーが早期にタイトル戦に臨み、負った怪我から若くして引退を余儀なくされた経験を持っていた。
そんな慎重なフランキーにしびれを切らし、黒人ボクサーはフランキーへの礼も早々に、他のジムへと移ってしまう。
落ち込むフランキーのもとに、アマチュアの女性ボクサーのマギーがフランキーからの指導を願い出る。
「女性は指導しない」と、最初は乗り気でなかったフランキーだったが、スクラップのすすめや、来る日もジムに遅くまで残り一人黙々と練習を続ける彼女の熱意に押され、しぶしぶ指導を承諾する。
フランキーの的確な指導とマギーのひたむきな練習は実を結び、次々に相手を撃破、新人注目株として対戦オファーの電話が鳴りやまないほどに。
ミリオンダラーベイビーを夢見て努力を惜しまないマギーにフランキーも惹かれ、いつしか彼女に生きる希望を見出すようになる。
お互い家庭で孤立している二人は、ただのビジネスパートナーを超え、お互いの存在が心の支えになりつつあった。
そんな矢先、悲劇は起こる。
夢にまで見た100万ドルをかけた試合の相手は、反則で知られるウェルター級チャンピオン「青い熊ビリー」。
マギーはその試合の中で、相手からの予期せぬ反則攻撃をくらい・・・。
マギーの身に起こった悲劇とは?
“オススメ☆4”の理由と考察、その感想
味わい深い登場人物たち
描かれている師弟愛が美しく感じられ、感情移入できた。
フランキーの感情をあまり表に出さず、不器用で多くを語りはしないが、静かに優しく見守る感じがいい。
イーストウッドの味がよく出ていると思う。
ヒラリー演じるマギーはひたむきさがよく出ているし、モーガン演じる落ちぶれたボクサーのスクラップも非常に味わい深い。
スクラップとフランキーは何かと言い合いになるけど、なんだかんだお互いのことを分かっている腐れ縁な感じが面白い。
孤独な二人は惹かれあう
フランキーとマギーが二人でスターダムへと上り詰めていくところは思わず応援してしまう。
成功を目指してはいるが、孤独な二人がしだいに生きる希望をお互いに託し、支え合いながら一緒に歩んでいく姿は何とも言えない。
マギーもフランキーもお互い、家族とうまくいっていない。
マギーに至っては、やっとの思いで集めたファイトマネーで、喜んでくれると思ってした恩返しが家族から迷惑がられさげすまれ、邪険にされてしまう。
予想だにせずひどく傷つけられたマギーを前に、フランキーは軽い慰めの言葉など掛けずに、いつもどおり静かにマギーに寄り添う。
マギーを責めもせず慰めもせず、全てを理解したうえでただ一緒にいるというそのフランキーの姿勢に、静かに胸を打たれる。
マギーはボクシングで勝つことで自信をつけ、より前向きに生きていこうとする。
フランキーもまた、そんな境遇にめげずに自分の言った教えを守り、真面目に着実に練習をこなしていくマギーが、心の支えになっていく。
自分のことを無視し続ける娘の姿にも重なって・・・。
この信頼関係は、二人が今まで生きてきた中でも、何ものにも代えがたいものだったと思う。
それはお金や名誉というものが軽くかすんでしまうくらい。
それだけに、後半で起こる悲劇がとてもきつい。
ここまで落とすか、というぐらい思い切った展開だと思う。
マギーに起こった悲劇
二人の夢を、二人でけじめをつけ終わらすという決断はあまりにも悲しく、心揺さぶられる。
彼女は辛い境遇から這い上がり、ついには夢にまで見たミリオンダラー・ベイビーになれたのだから、もう十分ではあるのかもしれないが・・・。
自分としては、こういう展開もあってもいいとは思うが、もう少し前向きな終わり方が見たかったと思った。
フランキーとマギーが選んだ決断は、考えた上での苦渋の決断だ。
あの状況ではそう考えてしまうのもしょうがないことだとは思うし、軽々しいことは言えないが、マギーには、はいつくばってでも生にしがみついて欲しかった。
あそこまで苦悩して決断したうえで、実はその決断は実行していなく、最後にマギーの元気な顔が見れたりしたら、より心打たれたんじゃないかと思う。
指導者になることも決して出来ないわけではなく、それは無理していやいややるのではなく、何が今の自分に出来るのかと模索したうえで前向きになったマギーが見たかった。
自分が目指したミリオンダラー・ベイビーを、今度は自分が育てるんだというような意気込みで・・・。
そして、そうでないのであれば、この作品の終わり方は二人にとってマイナスになっているのではないかと思った。
もしお互いに本当に「もう悔いはない」という終わり方であれば、晴れやかさや心地よさが二人から感じられたはずだ。
もう悲しさを通り越して、二人とも笑い合っていて、楽しんでいるようにすら見えたはずだ。
それが、非常にしんみりしているので、二人ともどこかで決断しきれていなく、希望を捨てきれていないんじゃないかと思う。
悪く言えば、悲しさに酔っている終わり方というか・・・。
しかし、見て良かった。
ここまで感情が掻き立てらるというのは、やはり日常では感じられることのない世界だと思う。
映画の力を感じる。
賛否両論あると思うが、あなたはこの作品を見て何を思うだろうか?
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