見どころ!→人々の心の葛藤に耳を傾けよ!
監督-ポール・トーマス・アンダーソン 1999年 188分
出演-フィリップ・シーモア・ホフマン、トム・クルーズ、ジュリアン・ムーア、メローラ・ウォルターズ、ジェイソン・ロバーズ、他
あらすじ
曇り空のロサンゼルス・・・微妙に結びつき、互いに影響しあい、同時に展開していく12人のストーリー。
テレビ場組の著名なプロデューサーは介護人に見守られながら死の淵にいる。
後妻はその事実に心を乱されてしまう。
モテナイ男性への怪しい恋愛伝道師は、今日も精力的にセミナーを行っている。
大人になった元天才クイズ少年は、セールスの不振から会社をクビになり、自暴自棄になりつつ、自分が思いを寄せる男性のバーテンに会いに行く。
人気クイズ番組の司会者は、娘から会うのを拒絶され、重病を患いながらも、妻に見送られて生放送の司会へ向かう。
そのクイズ番組に勝ち抜きでレギュラー出演している少年は、ステージパパの父親からいつもプレッシャーをかけられている。
司会者の娘は薬中毒だが、家に見回りで来た警官と親しくなり、デートに行くことに。
立場や状況の違う10人がそれぞれ心に思うことがあり、葛藤し、行動に移していく。
やがてそれは結びつき、影響しあい、互いの人生を形作っていく。
自分の心の中に起こった新しい変化を奇跡と呼べるのだろうか?
それは、実際に起こった「起こるはずのない奇跡」が騒がしくも静かに後押しする・・・。
感想
この映画は、オムニバスの様にそれぞれの人間のドラマが描かれています。
それがつながるところも、そうでないところもあります。
全てが最後につながり、そういうことか!というような映画ではありません。
三時間とちょっと長めですが、非常に味のある始まりにとても惹きこまれます。
急展開などもなく、それぞれの話をたっぷりと見せているので、少しだれてしまいました。
アクションではなく、こういう人間ドラマで3時間というのは珍しいかもしれません。
物語の最後に起きる「起こるはずのない奇跡」ですが、最初は自分には何のことかさっぱりわかりませんでした。
もう少し言うと、ある現象が起こるのですが、その現象は英語では「絶対に起こらない」ということわざの様な意味があるらしいんです。
もしそれを事前に知っていれば、すんなりと理解できたかもしれません。
アメリカの方はもともと知っているらしいです。
この映画は、見た直後よりも数日から少し経ってからなんかじわじわ染みてきます。
見た直後は、「長かった、悪くないけど分からなかった・・・」ですが、そんなことも忘れて「あの雰囲気をまた味わいたい・・・」と思ってきます。
それぞれの話は、その人の中では重要なだけれど、決して派手ではない話ばかりなので、一見大したことないと思ってしまいがちですが、演者のリアルな表情や心の葛藤などが心を静かにノックしてきます。
自分は、司会者の娘の葛藤の顔、ラストに垣間見える表情などが頭に焼き付いてフラッシュバックします。
奇跡とは、必ずしもドラマティックに起きる偶然ではなく、心の中に湧き起こる新しい自分を発見することも奇跡と呼んで良いんじゃないか?
そんなメッセージをポール・トーマス・アンダーソンは映画に込めたんじゃないか?なんて勝手に思っています。
出演者は、ポールの映画の常連も多く出演していますが、トム・クルーズが怪しい伝道師という新しい境地を開いています。
とても違和感なく見れるはまり役です。
作中には、エイミー・マンというシンガーソングライターの味のある楽曲が多用されています。
映像に良いスパイスが加えられていて、非常に印象的です。
監督のポールはまだ若いですが、様々な人間模様を描かせたら天下一品ですね。
優しい語り口に惹かれます。
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