映画「マグノリア(1999)」が“オススメ”の理由と考察、その感想

②オススメ☆4

マグノリア  英題:Magnolia

監督-ポール・トーマス・アンダーソン 1999年 188分

脚本-ポール・トーマス・アンダーソン

出演-フィリップ・シーモア・ホフマン、トム・クルーズ、ジュリアン・ムーア、メローラ・ウォルターズ、ジェイソン・ロバーズ、ジョン・C・ライリー、ウィリアム・H・メイシー、他

映画「マグノリア」のあらすじ

曇り空のロサンゼルス、微妙に結びつき、互いに影響しあい、同時に展開していく12人のストーリー。

テレビ場組の著名なプロデューサーは介護人に見守られながら死の淵にいる。

後妻はその事実に心を乱されてしまう。

もてない男性への怪しい恋愛伝道師は、今日も精力的にセミナーを行っている。

大人になった元天才クイズ少年は、セールスの不振から会社をクビになり、自暴自棄になりつつ、自分が思いを寄せる男性のバーテンに会いに行く。

人気クイズ番組の司会者は、娘から会うのを拒絶され、重病を患いながらも、妻に見送られて生放送の司会へ向かう。

そのクイズ番組に勝ち抜きでレギュラー出演している少年は、ステージパパの父親からいつもプレッシャーをかけられている。

司会者の娘は薬中毒だが、家に見回りで来た警官と親しくなり、デートに行くことに。

立場や状況の違う10人がそれぞれ心に思うことがあり、葛藤し、行動に移していく。

やがてそれは結びつき、影響しあい、互いの人生を形作っていく。

彼らの行動を、実際に起こった「起こるはずのない奇跡」が騒がしくも静かに後押しするのだった。

“オススメ☆4”の理由と考察、その感想

奇跡とはただの偶然だけではない

この映画は、オムニバスの様にそれぞれの人間のドラマが描かれている。

それがつながるところも、そうでないところもある。

全てが最後につながり、そういうことか!というような映画ではない。

三時間とちょっと長いが、非常に味のある始まりにとても惹きこまれる。

急展開などもなく、それぞれの話をたっぷりと見せているので、少しだれてしまった。

アクションではなく、こういう人間ドラマで3時間というのは珍しいかもしれない。

物語の最後に起きる「奇跡」だが、最初は自分には何のことかさっぱりわからなかった。

それは空からカエルが降ってくる現象のことだが、その現象は英語では「絶対に起こらない」ということわざの様な意味があるらしい。

もしそれを事前に知っていれば、すんなりと理解できたかもしれないが。

アメリカの人はもともと知っているらしい。

この映画は、見た直後よりも数日から少し経ってからなんかじわじわ染みてくる。

見た直後は、長かった、悪くないけど分からなかった、という感じだが、そんなことも忘れて、あの雰囲気をまた味わいたい、と思ってくる。

それぞれの話は、その人の中では重要なだけど、決して派手ではない話ばかりなので、一見大したことないと思ってしまいがちだが、演者のリアルな表情や心の葛藤などが心を静かにノックくる。

自分は、司会者の娘の葛藤の顔、ラストに垣間見える表情などが頭に焼き付いてフラッシュバックする。

奇跡とは、必ずしもドラマティックに起きる偶然ではなく、心の中に湧き起こる新しい自分を発見することも奇跡と呼んで良いんじゃないか?と投げかけられているようである。

出演者は、ポールの映画の常連も多く出演しているが、トム・クルーズが怪しい伝道師という新しい境地を開いている。

とても違和感なく見れるはまり役だ。

作中には、エイミー・マンというシンガーソングライターの味のある楽曲が多用されている。

映像に良いスパイスが加えられていて、非常に印象的だ。

監督のポールはまだ若いが、様々な人間模様を描かせたら天下一品だと思う。

その優しい語り口に惹かれる。

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