東京暮色 英題:Tokyo Twilight
監督-小津安二郎 1957年 140分
脚本-野田高梧、小津安二郎
出演-原節子、笠智衆、山田五十鈴、有馬稲子、他
映画「東京暮色」のあらすじ
東京のある家庭。
父親の杉山は銀行に勤めていて、二人の娘がいる。
妻は、娘たちが小さいころに、杉山の部下と恋仲になって蒸発してしまった。
姉の孝子は結婚して子供がいるが、夫と折り合いが合わず、父の元に子供と帰ってきている。
妹の明子は大学を出ているが、実家から専門学校に通っていて、男友達といつもつるんでばかりいる。
ある日、父に内緒で明子がお金の工面をしていたということが分かり、父が問いただすが、友達のために借りたと嘘をつく。
実は明子は男友達の子を身ごもってしまい、お金は中絶するための費用であった。
そんな中、娘たちが小さいうちに蒸発した母親の喜久子が、明子のいきつけの雀荘で働いていることが分かる。
いつも朗らかで優しい父、献身的だが夫とうまくいかない孝子、父や姉の愛情を知ってはいるが素直に心を開かない明子・・・
実の母の出現によって、さらに揺れていく家庭。
明子は子供をどうするのか、母親が現れたことによって家族がとる行動は・・・。
“オススメ☆4”の理由と考察、その感想
日本のお父さん、笠智衆
父親の笠智衆がとても味わい深くて良い。
優しく穏やかで、いつも見守ってくれている。
これが父親の理想像という感じもする。
映像には戦後の雰囲気が満載で、自分にとってはレトロな感じを受けて好きだ。
いつの時代も、親に反抗する子供がいて、何も問題ごとがない家庭なんかない。
誰しも不条理を心に抱えながら生きていく。
そんな現実に時には戸惑いながらも、それを受け入れて生きていく強くしなやかな人間の姿を、笠智衆の背中が静かに語っている。
これは、小津作品にしては極めて暗い方の作品らしい。
話しの最後は確かに家族としてつらい体験だと思う。
暗いが、深みのある作品だ。
ラストのシーンは、笠智衆がいつも通り仕事に向かう姿で終わっている。
慌てず騒がずに受け入れる、外国人のように悲しいときには思い切り泣いて、思い切り感情をむき出しにしたりする訳ではないが、思いは同じ。
日本人があるべき、静かな強さを描いている。
娘たちは、自分の母に思い切り今までの寂しさなどの感情をぶつける。
少しわざとらしい演技
しゃべる人たちが、はきはきしすぎているせいか、特に明子の男友達のような雰囲気の人たちは現代ではほとんど存在しないんじゃないか思った。
感情が入っているのは良いが、どこか演劇的なにおいもする。
男も女もぼそぼそしゃべっているような人がほとんどいない。
みんながみんなちゃんと喋りすぎているような感じがリアルではないような気もする。
映画の世界の普通であって、日常にいる普通ではないような。
しかし、そんな中で、笠智衆のような役者が出てきたからすごいとなったのかもしれない。
コメント