映画「パピヨン(1973年)」を”今すぐ見るべき!”理由と考察、その感想

①今すぐ見るべき!☆5

パピヨン 英題:Papillon

監督-フランクリン・J・シャフナー 150分 1973年

脚本-ロレンツォ・センブル・ジュニア、ダルトン・トランボ

出演-スティーブ・マックイーン、ダスティン・ホフマン、他

”今すぐ見るべき!☆5”理由と考察、その感想

男臭い映画

スティーブ・マックイーンの渋い演技が光る。

ダスティン・ホフマンも味があって実に良い。

仲間の裏切りもあり、金庫やぶりで捕まったパピヨンは冤罪の殺人罪も追加され、終身刑が言い渡される。

いくら刑務所だからといって、暑い中不衛生な環境で必要以上に強制的に労働を強いられたり、地獄の様な環境だ。

囚人はみな労働の油や汗で汚れた服装や体で、またうだるような息苦しい暑さが画面から伝わってきて、男臭いことこの上ない。

実に男臭くていい。

圧巻の独房シーン

囚人仲間のドガは作業中に気分が悪くなって吐いてしまい、そばにいた看守は理不尽にもドガに暴行を加える。

それを見ていたパピヨンは止めようとするが看守は素直に応じず揉み合いになり、仕方なく近くにあった煮えたぎる鍋を看守に投げつけて、成り行きでそのまま脱走する。

結局逃げ切れずに捕まってしまい、罰として独房に入れられる。

狭く、不衛生で食事も簡素なスープとパンしかない独房に入れられたパピヨンだったが、ドガからの差し入れのヤシの実やそこら辺にいる虫などを食べ、筋トレもしながら、なんとか希望をもって独房を切り抜けようとしていた。

しかし、差し入れがばれると、独房の光は遮断され、今までの食事も半分にされるという仕打ちを受けることになる。

差し入れをした人物の名を吐けば、食事も光も元に戻すと言われるが、頑なにパピヨンはドガの名前を言わない。

ただでさえきつい独房は、地獄と化すが、パピヨンは耐え続ける。

みるみる衰弱しやせ衰え、やがて意識がもうろうとしてきて、一時は言えば楽になると心揺れるも、思いとどまる。

もはや精神力のみで生きている様相だ。

その後もドガの名を言うことはなく、2年という地獄の独房生活を瀕死の状態で切り抜けるパピヨン。

フラフラになって出てきたパピヨンをドガは泣きながら迎え入れる。

もし自分がドガだったら、バカなことをせずに早く吐いてくれていいと思うが、それでも友人を命がけで守り通したパピヨンの孤独な闘いには目頭が熱くなる。

マックイーンの鬼気迫る演技で、見ているこっちを揺さぶってくる名シーンだ。

 パピヨンの男気

ところどころに光るパピヨンの男気が格好良い。

ドガを看守に売らなかっただけでなく、病気の人たちがいる村に行って、その村人が口をつけたタバコを薦められたときもパピヨンは普通に吸って見せた。

少しひいている感じもしたが、それでも感染するかもしれないという恐れから普通は吸えないだろう。

パピヨンは仲間を思う優しさもあるし、男気もある。

あのひどい独房に二回も入れられたが、それでもまだ脱獄を諦めていないというのもなんという野心家なのだろう。

絶対にあきらめる必要はないんだと強く教えられているようだ。

しかし、パピヨンはほとんど冤罪で捕まったとはいえ、犯罪に手を染めたことは間違いない。

だから、手放しで応援できるような人種では決してない。

こんな精神的に強い人間が、なぜ仮に軽いものだとしても犯罪を犯してしまったんだろうとも思う。

もしかしたら、パピヨン自身、刑務所に入ってから変わりたいと思っていた人間なのかもしれない。

パピヨンが意識がもうろうとした中で見た夢で、「お前の一番の罪は人生を無駄にしたことだ」と裁判官のような人物に言われていた。

ひどい刑務所とはいえ、今ある環境は元はといえば自分のやったことが原因だから、自分を振り返らざるを得ない。

しかしパピヨンは刑務所のひどい仕打ちを全て受け入れるわけではなく、脱獄を諦めなかった。

だから、その姿勢に学ぶことはあっても、決してヒーローとしては見切れない所もある。

刑務所に入る前に仲間に裏切られたということだが、もう足を洗っていたのにはめられたとかならまだ分かるから、そこらへんをもう少し詳しく描いてほしかったと思う。

きっと全くの白だったんだと、そう思いたい。

最後にパピヨンが海に飛び込むシーン

これはきっと有名なんだろうが、パピヨンが泳ぐ下に明らかにダイバーの足が見えていたのには少し冷めた。

素人目に見て分かるのに、なぜ修正しなかったんだろう?

あと、この島はあの断崖しか逃げる場所はないと言っていたが、ドガの家の前は波が穏やかそうな低い崖に見えたので、そこから逃げれるじゃないかとも思った。

独房のシーンが鬼気迫るリアルさだっただけに、最後の詰めがもったいない。

マックイーンの味

パピヨンは格好良かったが、演じるマックイーンもすごい。

マックイーンはスタントなしでアクションをこなすというから、ただものじゃない。

あの崖から飛び込んだのも本人だと思うと、マックイーン自身もパピヨンに負けず劣らずの男ぶりだ。

マックイーンは美男子かというとそうでもないが、中身に芯のある感じや、感情豊かで変わる表情が非常に魅力的に感じた。

おどけた表情も出来るし、締める真剣な顔つきも出来て、落差があるだけに普通の二枚目よりも格好良く見える。

二枚目も三枚目もできるという感じか。

その上激しいアクションもこなせるんだから、そりゃもてるだろうと思った。

マックイーンの魅力を知り、堪能できた作品だ。

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