クレイマー、クレイマー 英題:Kramer vs. Kramer
監督-ロバート・ベントン 1979年 105分
脚本-ロバート・ベントン
出演-ダスティン・ホフマン、メリル・ストリープ、ジャスティン・ヘンリー、ジェーン・アレクサンダー、他
映画「クレイマー、クレイマー」のあらすじ
主人公のテッドはいつも仕事中心の生活で、育児や家事は全て奥さんのジョアンナに任せていた。
そんななか、何か新しいことを始めたいと、テッドからジョアンナは相談を受ける。
しかし、仕事で頭がいっぱいのテッドは、ジョアンナの話に真剣に取り合うことはなかった。
ある日テッドが仕事から帰ると、ジョアンナは荷物をまとめていて、出ていくという。
テッドにしてみれば青天の霹靂で、ジョアンナを説得しようとするが時すでに遅し、彼女は出ていき、その日から子供のビリーとテッド二人の生活が始まる。
離婚の手続きを行い、ようやく仕事をしながらの家事・育児にも慣れてきた矢先、テッドは会社から解雇され、さらにジョアンナからは親権についての裁判を起こされる。
最悪の展開、醜い親権の奪い合い、果たしてビリーの親権は・・・
“今すぐ見るべき!☆5”理由と考察、その感想
シンプルだが考えさせられる
自分は、クレーマーという文句をつける人の意味だと思っていたが、クレイマー家という苗字だったと知った。
クレイマー家VSクレイマー家という、同じ苗字で裁判を争うという意味らしい。
これは、さんまが絶賛しているという作品。
展開がリアルで良い。
確かに、テッドはジョアンナの話に耳を傾けなかった、大して重要な話じゃないだろうと思っていた。
しかし、その態度一つがもう命取りになってしまう。
そんなことで?と思うが、実際によく起こりがちだと思う。
勝手に「奥さんの気持ちは分かっているから大丈夫」と思っている、しかし何にもわかっていなかった。
奥さんも、話を聞いてほしいとしつこく言ってきたりはしない。
少し言って、そのときの相手の態度ですべて決めてしまったりする。
旦那としては、「なんで話聞いてくれないの?」とか、「もっと真剣に相手してよ」とか言ってくれれば良いのに、とか思うが、本人にしてみればそれは言えない、言わなくても分かって欲しかった、ということなのだろう。
ダスティン・ホフマンの、仕事熱心で家事なんてやったことなくて不器用でっていう感じがよく出ている。
メリル・ストリープの奥さん役も、ああこういう奥さんいるなって感じだ。
多分衝突しなければとても優しく、おしとやかな感じの良い奥さんなのだろう。
それが一転ヒステリック感じが出て、敵になってしまう。
男としては悲しいが、勝手な思い込みを作っていた男も悪い。
子供のビリーは無邪気でかわいらしくて良い。
ラストシーン近くの、最後に一緒にビリーと朝ご飯を作り、抱き合うシーンも良い。
ダスティンは、この映画を撮る前にプライベートで離婚したばかりだそう。
そんなことがあった直後にこの役を快く引き受けた技量のでかさ。
離婚したからこそ、ちょうど夫の気持ちが分かる状態で演じれたのも良かったのかもしれない。
役作りをする必要がない。
メリル・ストリープに惹きつけられる
実にシンプルなストーリーというか、ありきたりなハッピーエンドとも言えるが、観ていられる。
ダスティン・ホフマンのちょっとガサツな感じと、メリル・ストリープのおしとやかに見えるが、実は何を考えてるか分からない感じなど、うまくマッチしていると思う。
この作品はまるで、映画のお手本のような映画だと思う。
シンプルな予想できそうなストーリーでも、演じる俳優の力によって、いくらでも面白くなる。
どちらかというと、メリル・ストリープの方が難しいだろうとは思うし、その功績は大きいと思う。
ジョアンナには色んな顔があり、しかもどれもが真実でリアリティがある、その全ての人格を合わせて深い演じ方だと感じられる。
おしとやかな時もあれば、ヒステリックな時もあり、息子を思いやる優しい時もあり、繊細な感じもして品もあり、実に魅力的である。
そして、演技しているように全く見えず、その場で心がしっかりと動いている感じがするので、ついつい観てしまう。
底が見えない、魔性の女優というか。
それがゆえに、家を出ていくと言われた時に、自分が悪かったかもしれない、と思わされ、ゾッとするというか。
ジョアンナの雰囲気が浅い感じなら、夫が可哀想、言いたいことがあるならちゃんと言えばいいのに、などと、夫の味方に傾いてしまうだろうが、そうではない感じがシンプルなストーリーに深みを与えている。
最終的に考え直してテッドと抱き合う感じも、とってつけたセリフではなく、本当に考え直した感じがして良い。
シンプルな役なのに、ここまで複雑に深く演じられる女優は、あまりいないと思う。
間違いなく彼女の代表作の一つだろう。
今の日本人女優で、これを演じられる人ってほぼいないと思う。
日本人がリメイクとして手を出すには非常に危険な作品。
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