キッズ・リターン 英題:Kids Return
監督-北野武 108分 1996年
脚本-北野武
出演-金子賢、安藤政信、石橋凌、寺島進、モロ師岡、他
映画「キッズ・リターン」のあらすじ
高校で落ちこぼれのシンジとマサルは、いつもつるんで悪さばかりしていた。
そんなある日、カツアゲした高校生の用心棒で来たボクサーにマサルは喧嘩で敗れてしまい、ボクシングをやるべくマサルはジムに通いだす。
マサルに誘われシンジもあとからジムに入り、一緒にボクシングを始めるが、シンジの方に才能が開花する。
自分にはボクシングは向かないと悟ったマサルは、知り合いを辿って極道の道に進むことに。
それぞれの道に歩みだす二人。
果たしてうまくやっていけるのだろうか?
そして、それぞれ甘くはないその世界で揉まれ、苦い思いも経験し、しばらくぶりに母校の校庭で再開した二人。
その時二人が交わした言葉とは?
このあとの二人の行く末は?
“今すぐ見るべき!☆5”理由と考察、その感想
若者二人の感じが良い
北野武監督の、バイク事故からの復帰第一作目。
監督本人は出演していない。
自分が何をやりたいのかも分からない若い時期に、各々自分に可能性があると思う道に進むが、なかなか思うようにいかない。
人生の選択にもがき苦しみ葛藤しながらも生きていく。
そんな若者の青春を、厳しい現実と照らし合わせながらリアルに描いている作品だ。
久石譲の音楽が、作品をより印象深いものにしてくれている。
とにかくラストが良い。
感動させようとしているところもなく、二人のやりとりも自然で心にすっと入ってくる。
今までの二人の紆余曲折が、全てこのラストの少ないやり取りに集約されている。
自分たちの失敗を受け入れつつもポジティブに。
決して派手なシーンではないが、音楽とも相まって強烈に印象に残っている。
ぜひこのラストを見るために見て欲しい。
マサルを演じた金子賢の感じも若者過ぎず、年をとりすぎておらず、ちょうどいい雰囲気だ。
ちょっと格好つけてラストの台詞を言っている感じも良い。
ラストで全部持っていかれる
初期の北野映画らしく、決して派手でなく、独特の緊張感のある空気感が常に流れている。
淡々と進んでいくので、少し退屈に感じる所もあるかもしれないが、何度も言うがラストで報われる。
もちろん、作中の音楽も良いが、ラストで「バカ野郎、まだ始まっちゃいねーよ。」とマサルが言った後に、キッズリターンのテーマ曲のサビ部分がエンドロールと共に流れる所は、すごい。
心をバーンと叩かれた状態で、エンドロールをずっと見続けてしまう。
映像と音楽、俳優の組み合わせがこれほどマッチしたラストシーンは他に見たことがない。
そういう意味でのラストシーンとしては、ぶっちぎりで歴代1位だ。
若者二人の自然な会話から映像が切り替わるスピード感、耳に残る音楽とそれが鳴る絶妙なタイミング、それらが合わさって胸を殴られたような気分になる。
映画が小説を超えた瞬間というか、仮にこの作品を小説で読んだとしても、この迫りくる臨場感は脳内ではおよそ創り出せないだろう。
2人の主人公が男で、2人の進んでいく道も男臭い道であり、万人向けに撮りましたという匂いはしない。
しかし、この作品は誰が見ても、ありきたりな表現だが、元気が出る、映画だ。
たけし特有の淡々とした描き方からは想像出来ないかもしれないが、本当にそうなんだから、見てない人は見なければいけない。
きっと、バイク事故で復帰したたけしの、これから行くぞ、という魂がこもっていたのかもしれない。
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