その土曜日、7時58分 英題:Before the Devil Knows You’re Dead
監督-シドニー・ルメット 2007年 118分
脚本-ケリー・マスターソン
出演-フィリップ・シーモア・ホフマン、イーサン・ホーク、マリサ・トメイ、他
映画「その土曜日、7時58分」のあらすじ
お金に困った兄弟が、自分の両親が営む宝石屋に強盗に入る計画を立てる。
自分たちは宝石が手に入り、両親の店は保険に入っているから問題なく、誰も傷つけずに大金が手に入る・・・はずだった。
兄が持ちかけたこの話し、最初は拒んでた弟も了承していざ始めると、ひょんなことから最悪の結末に・・・。
“今すぐ見るべき!☆5”理由と考察、その感想
独特の気持ち悪い雰囲気がある
英語の現代は、「Before the Devil Knows You’re Dead.」
直訳で「死んだことを悪魔に知られる前に。」
内容とぴったりのタイトルで、「その土曜日~」よりも、英語のタイトルを直訳したタイトルの方があってるんじゃないかと思う。
フィリップ・シーモア・ホフマン演じる兄貴が、リアルで、こんな兄貴いるなという感じ。
兄貴面したり、賢い一面を見せたりするが、本性の醜いところは隠しながら生きている。
こんな、嫌われるような人間をちゃんと演じられるというのがすごい。
イーサンホーク演じる弟も、気弱な弟にしか見えず、リアルでいい。
両方マッチしていて、とても見やすかった。
その日にその人がそういう行動をしていたか、というのを何回も人を変えて繰り返し見せる、という構成になっている。
自分的には、繰り返しが多くてちょっと飽きてしまった感じがあったが、全体的に独特の雰囲気が漂っている。
偶然が重なる怖さ
日常の些細な悪意、魔が差したことから、人生が大きく狂っていくことを描いた作品。
兄のアンディは、金が手に入らないばかりか、恋人にも出ていかれ、銃で撃たれて父に殺され、もう踏んだり蹴ったり。
犯罪を計画して、ここまでボロクソに失敗していく様子を、コメディではなく真剣に描いた作品はあまりないかもしれない。
かといって犯罪はいけない、と説教臭い訳ではなく、偶然の妙の怖さを描いていると思う。
もちろん、罰が当たったと考えることも出来るが、単に罰が当たったでは済まされないくらい偶然が重なり、想像をはるかに超えたおかしなことになっている。
いつもやらないけど、たまにやった時に限って、普段起こらないことが起こることは日常でもある。
そのマックスが凝縮されたのが、この映画かもしれない。
嫌なやつアンディの崩壊ぶりが気持ち良い
フォリップ・シーモア・ホフマン演じるアンディは、根っから悪いやつではないが、嫌な性格をしていて、そのアンディが苦悩し、怒り、ボロボロになって行く様を見るのは少し気持ちよくもある。
ざまあみろ、と思いながら見ることが出来るので、楽しい。
新しいタイプの勧善懲悪であるとも言える。
マフィアとか、犯罪集団とか、あからさまな悪ではないが、日常に潜んでいる一般人の中にいる悪。
こんなにリアルに嫌な、かつ実際に居そうな兄貴を演じられるのは、他にいないだろう。
果たして演じてるのか?と思うくらい自然だ。
イーサン・ホークはデンゼルとのコンビも良かったから、濃い俳優の相棒としてキャスティングすると力を発揮するのかもしれない。
ホフマンもより引きたつし、イーサンも存在感がない訳じゃなく、フィットしている。
この映画何なんだろう?ホフマンが主役で、その主役が滅びる様子が描かれている。
主役で悪役、しかし突飛でなく、見応えがある。
こんな映画は他にない。
ホフマンだからこそ、成り立った、見ていられる映画というか、この映画のおかしな空気感にぴったりで、この映画の雰囲気に厚みを出している。
サスペンスだが、ホラーのような雰囲気もあり、重厚な語り口だが、エンターテインメントとして楽しめる。
ホフマンの代表作と言っていいと思う。
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