映画「光の旅人 K-PAX(2001)」が“オススメ”の理由と考察、その感想

②オススメ☆4

光の旅人 K-PAX

監督-イアン・ソフトリー 120分 2001年

脚本-チャールズ・リーヴィット

出演-ケヴィン・スペイシー、ジェフ・ブリッジス、メアリー・マコーマック、他

”オススメ☆4”の理由と考察、その感想

ケヴィン・スペイシーの十八番

自分はK-PAX星人だと言い張る、一見精神を病んだだけの中年男をケヴィン・スペイシーが演じている。

ケヴィン・スペイシーの深い演技が、本当にこの人はK-PAX星人なんじゃないか、存在しててもおかしくないと思わされる。

K-PAX星人がいると思わせる説得力が絶対にいる作品なだけに、ケヴィン・スペイシーがやってくれてよかった。

ケヴィン・スペイシーにしてみたらお茶の子さいさいで、得意分野なのでしょうが、見ていて惹きこまれる。

独特なバナナの食べ方から、K-PAX語をしゃべるところや、静かに相手を圧倒する話し方など、超人を演じさせたら天下一品だろう。

K-PAX星人からのメッセージ

K-PAX星人には警察もなければ政府もなく、犯罪なんてものは彼らに取ったら笑い話だという。

病院に入院している患者達を薬も使わずに次々治してしまったりする。

他の星から見たら、いかに人間というものは愚かで、滑稽に映っているんだ、という強烈な皮肉が込められたメッセージだろう。

人間はもう自分では気づけないかもしれないから、第三者、他の星の人間から言われないと、自分たちの間違いを素直に受け入れたり、認められないのかもしれない。

ただ、宇宙からやってきたという未知の世界を垣間見る楽しみとして宇宙人を設定しているのではなく、技術が進んでいるということは、人間性も成熟しているはずで、結局大事な所は心なんだという、人間性を大事にした宇宙人感が良い。

宇宙船や光線銃や、二つの月が見えたり、映像で宇宙らしさというものを全く排除しているにもかかわらず、宇宙への興味や説得力を持たしてしまう所はすごい。

これは宇宙人が出て来るSFドラマである

この作品は10年くらい前にも見たが、その時は面白いとは思えなかった。

結局狂った人間の妄想だったのか、と浅い結論で終わってしまったが、今思うと全く細部を見れていなかったことが分かった。

プロートは間違いなくK-PAX星人であり、そう思えないのであれば、この作品の全体のストーリーを面白く感じれないのは当然だった。

ただの妄想だったのかという結論こそ、K-PAX星人に笑われてしまうことだろう。

勘違いするきっかけは、催眠療法の場面だ。

病気を疑う医師によって催眠状態にかかったプロートが、過去の自分の体験を語る。

それは、家族の命を奪われたことで心を痛め、川に自ら入って命を落とそうとする友人を思い出し、プロートが涙しもがき苦しむ場面だ。

このプロートが語る体験を、まるごとプロート自身が身投げしたことの体験として語っているのだと、昔見た時は雑に勘違いしていた。

あくまで自分の友人が心を痛めていることに、プロートは心を痛めているのであって、自分が身投げしたとか、自分の家族の命が奪われたなどは一言も言っていない。

もし催眠状態に入っているのであれば、無意識に近いこの時点でも嘘をつけるはずがないし、もしついているとしたらあくまで意識的に作為的につくしかなく、そこまでする動機はロバートにはない。

というか、プロート自身が語ってくれていることだが、昔にプロートはロバートと友人であり、何かロバートに問題が起きると、プロートはK-PAX星から呼ばれて地球にいるロバートに会いに来ていた。

友人であるロバートが苦しんでいる様子を見て、K-PAX星にはない絆に縛られるロバートを理解できず、自分を傷つけようとしている友人の行為に、心優しいプロートは胸が引きちぎられるような思いをした、その体験をプロート自身が語っているということだろう。

催眠療法を行ったマーク医師自身が勘違いをして理解している描写があるので、それにつられて自分も勘違いしてしまったんだと思う。

勝手に医師が勘違いしただけで真実とは関係なく、プロートは自分の体験を語っただけだった。

これはどっちなんだ、と思わせるところも、またドラマチックな要素であり、惹きつけられるところではあるが、決してどんでん返しを狙ったものではないだろう。

どんでん返しであるなら、やっぱりK-PAX星人だった、ともう一つひっくり返ったことになるが、よく見ているとずっとK-PAX星人である要素は隠されていない。

マークがプロートのことをロバートと思い込んでいることをプロートは知っているが、マークがロバートと自分のために良くしてくれていることももちろん分かっている。

プロートは最後に「ロバートを頼む」とマーク医師に体を借りていたロバートを託した。

マークが勘違いすることも、人間よりも成熟したK-PAX星人のプロートにしたら取るに足らないことで、まるで子供を見ているような感覚かもしれない。

常識に縛られていてそれ以外を理解しようとしない、その人の人柄や言動のみを見て自分で判断することが出来ない、というのは、まさしくK-PAX星人から見た「人間」そのものだろう。

しかし、自分の友人のロバートにとっては後々助かることでもあるので、プロートは感謝もしているのだろう。

プロートの目的

この作品での一連のプルートの行動を全て妄想と片付けてしまうには、無理がある。

もし全て妄想で嘘だとしたら、どこかで必ずぼろが出るはずだが、どこにも出ていない。

ぼろを出さずに最初から最後まで嘘を通すというのはかなり難しく、意識的に騙してやろうと気合を入れて、用意周到に準備しなければ達成できない。

それだけでなく、今自分は嘘をちゃんとつけているのか、この人を騙せているのか、という瞬時の判断が常に必要で、それは正常に物事が判断できる人間にしか出来ない。

もしロバートが意図的にプロートを演じているとするならば、そこまで緻密で大変な作業をしてまでプロートを演じる動機もなければ、最後に無口になって病院に居座る理由もない。

通常、嘘の妄想を言う狂っていると思われる人というのは、騙そうという意図がないので、つじつまが合わないことばかり言うが、すぐに明確な矛盾点が見つかるので、周りがここまで長期にわたって騙され続けることはまずないだろう。

一番筋が通っているのが、プロートがK-PAX星人だということだ。

物理的な面から言えば、薬が全く効かない、天文学者達ですら解けなかった星の軌道の数式を簡単に解いた、などが人間でない証だ。

どこかで廃人の様になっていたロバートを見つけたプロートが、地球観光がてらロバートの体を借り、旅が終わったらロバートを安全な施設に預けようとしたんじゃないか。

ロバートが終盤のシーンの様に自分が誰かも分からず、ずーっとぼーっとした状態だとしたら、プロートを呼ぶことも出来ないから、すぐには見つけられなかったのかもしれない。

それに、地球でのK-PAX星人の姿の現し方すら謎で、もしかしたら地球では何か生き物に乗り移らなければ、いても目には見えないのかもしれない。

昔事件が起きた時、プロートはロバートに乗り移って助けようとしたけど、K-PAX星ではおよそ起こらない出来事に、あまりのショックで動けず助けられなかったのかも。

色々考えられるが、いずれにせよ、常識範囲内での判断はK-PAX星人に笑われてしまうので、要注意だ。

こっちを見てずっと笑っている可能性も拭いきれない。

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