映画「シッピングニュース(2001)」が“物足りない”理由と考察、その感想

④物足りない☆2

シッピングニュース 英題:The Shipping News

監督-ラッセ・ハルストレム 2001年 111分
 
脚本-ロバート・ネルソン・ジェイコブス
 
出演-ケヴィン・スペイシー、ジュリアン・ムーア、ジュディ・デンチ、ケイト・ブランシェット、他

“物足りない☆2”理由と考察、その感想

 人物描写が足りない

トラウマを持つ男が自分の父の生まれ故郷に行き、小さな新聞社に勤めながら徐々に生きることに自信をつけていく物語。

ケヴィン・スペイシーに惹かれて借りたこの作品。

結論から言うと人物の描き方がかなり物足りなく感じた。

今まで暮らしていた場所を離れ、新たな土地でトラウマを克服し、自信を取り戻していくというテーマは分かるが、どこでどうトラウマを克服したのかも分からなければ、何がきっかけで性格がポジティブに変わっていったのかもはっきりしない。

あれだけいじいじしていた性格の人間が、徐々に自信をつけていくなら分かるが、移住してすぐにそうでなくなってしまっている気がする。

もう島に来た時点で普通だから、序盤のおどおどしたケヴィン・スペイシーの演技が嘘になってしまう。

新聞社の人にいじめぬかれ、今度こそは負けない、新しい土地で出直すんだ、という気持ちで闘って自信を得たという訳でもない。

ちょっとはいじめられたが。

移住した時点でもうすでにトラウマに悩まされていない人間が、特に頭を抱えて悩むわけでもなく、なんとなく全てがうまくいくストーリーに見える。

新しく出直すんだ、という心機一転の気持ちで臨むという感じでもない。

描きたかったと思われる、自分に自信をつけて成長していくための主人公の戦いやもがきの描写がばっさり抜けているんじゃないかと思う。

これは、恐らく主人公以外にもトラウマを抱えた登場人物達が出すぎていて、全部描こうとして手が回らなくなり、どれも表層に触れるだけでそのまま進んでしまったんだろう。

主人公の変わり方すら描けないのであれば、主人公の一族クオイル家の過去の闇の部分などもばっさり省略して、主人公一本の再生の話しを深く描く方が良かったと思う。

要素が多いわりに、それがうまく絡んでるようには見えない。

きっと原作に忠実にしているせいで、2時間程度に詰め込むには無理な話なんだろう。

しかし、もし本当に原作に忠実にやりたいのであれば、例え何時間の超大作になっても、何部作になってもいいから忠実に描写すればいいし、短くて中途半端になるくらいなら、原作をヒントに別物に仕立て上げたっていいと思う。

お金や時間などの諸問題が山積なのでやりたい放題は出来ないのふだろうが。

面白いものを作ることが目的であるべきなのに、原作が漫画でも小説でも「忠実に」と言いつつ、よく描けていないことのすり替えが横行しているんじゃないか。

美人のシングルマザーとも大きく衝突する訳でもなく仲良くなり、自分で弱さを克服して得た訳ではない、結構恵まれた歩み方に見える。

びくびくしていた節がほとんど見えずに最初から普通にシングルマザーと接しているというのも主人公の性格とつながらない。

過去の弱い自分と対峙するという描写が決定的に足りていないので、移住したら人生うまくいった、という軽いメッセージに感じられる。

なんとなく良くなったという感じは否めない。

他の登場人物達もしかり、抱えているトラウマがどう解消されたのか、どうお互い影響しあってどうやって良い方向に向かったのかが知りたい。

港町の味のある風景を舞台に静かに描くのは悪くないが、人間同士の魂のぶつかりの様なものが見えないので今一つ物足りなく感じた。

コメント