映画「北京ヴァイオリン (2003)」を“見て損はない”理由と考察、その感想

③観て損はない☆3

英題:Together

監督-チェン・カイコー 2003年 116分

脚本-チェン・カイコー、シュエ・シャオルー

出演-タン・ユン、リュウ・ペイチー、ワン・チーウェン、チェン・カイコー、他

映画「北京ヴァイオリン」のあらすじ

貧しい農家に育ったシャオチュンは、母の形見として残されたヴァイオリンを練習し続け、天才的な技術を独学で身に付けていた。

ヴァイオリンの腕を上げるために、父と共に北京に上京し、色々な人と出会っていく。

なんとか、著名な音楽家にレッスンを教えてもらうことが出来るが、父の望みとは別に、シャオチュンはヴァイオリンを続けていくことに葛藤を抱いていくのだった。

“見て損はない”理由と考察、その感想

見やすいコメディ

冒頭から中国の古き良き街並みや雰囲気に包まれ、少年の素朴だが、父の行いに報いようとしている健気な感じに好感が持て、上京してから出会う人間も個性的な面々で面白く、見ているうちについつい少年を応援してしまう。

コメディタッチで描かれているがあざとくなく、ドラマがしっかりしているので、非常に見やすかった。

勝手にもっと堅い作品かと思ってしまっていたが、真逆の作品だった。

最後まで非常に良かったが、最後の結末が、なんでこうしてしまったのか、残念に思う。

個性的で魅力あふれる登場人物たち

優しさがにじみ溢れている父はもちろん、主人公の少年、最初の先生や、知り合ったお姉さんなど、個性的だが魅力のある濃い登場人物達がたくさんいるので、見終わって人間味を感じられる作品になっている。

やる気のない最初の先生など、実にリアルで面白いと思う。

子供だろうが特に子供扱いせず、全然教えてくれている感じじゃないけど実は教えているという適当な感じが非常に味があって良い。

本当に教えていない時もあるんだろうが。

要所要所で良いことを言ったりなど、実はすごいん人なんじゃないか、いや、ただ適当なだけかもしれない、とそのラインを行ったり来たりする人間臭い感じが面白い。

たまたま知り合ったツンとしたお姉さんも、ツンとしつつも筋を通す行動を取ったり、粋な部分があって良い。

きっと、あのお姉さんも、最初は少年に対する見栄だったのかも分からないが、あの少年と接していくうちに、しだいに成長していったんだろうと思う。

男に騙された、という事も大きいと思うが。

冷徹な感じのするリン先生も、本当にああいう先生がいるんじゃないかと思わされる。

冷徹な感じもするが、必ずしもそうではなく、善と悪ともつかない、どっちかといったら悪よりだが、非常にリアルである。

優しいのは、その人がヴァイオリンの才能がある、もしくは将来才能が開花するだろうという見込みがあるからで、その人の人格などどうでも良く、時にはものすごく厳しくしごいてきそうな感じもある。

実際にそんな描写はなかったが、そんな雰囲気が漂っているのが良い。

魅力的という訳ではないが、悪役の良さというか。

ラストシーンは逆が良かった

最終的には、主人公は、実際に演奏会に出て欲しかった。

父に駆け寄り、駅でヴァイオリンを父の目の前で披露する、それが妄想であって欲しかった。

そんな気持ちで、演奏会でヴァイオリンを弾き、大絶賛を浴び、もう一つ新たなステージを上がる、という方が、父が今までやってきた行動を汲んでいて良いと思う。

あそこで本当に演奏会をすっぽかしてしまうのは、違うと思う。

もう、親子の絆は十分にある訳で、あの場でも再確認する必要はない。

その最後の終わり方が、家族を大切にしろ、家族が一番、と安易に言われているような気がして、なんだかなあとなってしまった。

むしろ、父に報いるためには、全てを知ったうえで、演奏会に出なければいけなかった。

きっと、あんなに才能がある子なら、あの一回をすっぽかしたとしても、いずれ生活できるようになるかもしれないが、今までの父の苦労は全て水の泡になってしまった。

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