十三人の刺客
監督-三池崇史 2010年 141分
脚本-天願大介
出演-役所広司、山田孝之、伊勢谷友介、沢村一樹、稲垣吾郎、他
“観ない方がいい☆1”理由と考察、その感想
稲垣五郎の非道な演技
見どころは何と言っても稲垣五郎演じる暴君の藩主だろう。
ナチュラルに酷い奴だ。
演じている感じはあまりせず、冷酷な感じがマッチしている。
決して深みがある訳ではなく、可愛げのない冷酷さ。
まるでナチスのゲシュタポのような。
病気と言うか、生まれつき狂っている人格破綻の感じか。
今までの日本の映画でも、こんな冷酷な悪役はあまりいないんじゃないか?
中盤までは期待感あり
そんな暴君の酷い振る舞いの描写や、被害を受けている者たちがなんとかして暴君を引きずりおろせないかの画策の様子が序盤で描かれる。
暴君を倒すために志を共にする侍たちが集まってきて、作戦を立てていくあたりまでは期待感があり、これはどうなっていくんだろう?と心をくすぐられる。
次々と個性的な侍が集まってきて、藩主が参勤交代で通るであろうルートを予測し、待ち伏せの為に村を買い取ったりするところなんかスケールがでかい。
しかし、見終わって思い返すとそこまでがピークだったように思う。
チャンバラが単調
敵を追い詰め上から矢で攻撃したり、火をつけた牛を放って敵を混乱させたりと、戦い初めは面白いが、いざチャンバラが始まってみるとその退屈さに驚く。
たくさんの敵と戦うという発想は好きだが、いかんせんただ量をこなしているだけに見える。
オリジナリティある倒し方もほとんどない。
血しぶきが激しく飛んだり、手や足が宙を舞う訳でもなく、殺陣の立ち回りが派手で惹きつけられるわけでもなく、がちゃがちゃやっている。
ちゃんと殺陣が出来ているのは松方弘樹くらいではないだろうか。
松方はやたらと顔を作っている感じはしたが、太刀の動きが滑らかで早く、華麗な動きは見ていて気持ちが良い。
一人一人ちゃんと切っている感がある。
他の俳優はもうぶんぶん振り回している感じだ。
リアルでも漫画チックでもなく、単調なチャンバラがえんえんと続く。
ここを見せ場としているのならば、アクション作品としてはきついな。
もっとやりようはなかったのか?
このシーンで一気に疲れた。
名うての剣士たちが集まっている割には、それぞれの個性があまり出なかったところも残念だ。
なぜか途中から敵が増える
最初いた200ほどの敵をあれやこれやで減らし、「敵はあと130人だ」と左平太が言い、残りの敵と真っ向から真剣で戦っていくのだが、戦ってみると明らかに130人以上出てくる。
単純に13人だったら1人で10人倒せば済むが、1人で20から30人くらいは切っているように見える。
ここらへんの雑さも疲れる要因だ。
一回では倒しきれなかった敵が再び向かってきているにしては、無傷の敵が多すぎる。
刺客たちも疑問に思う訳でもなく、ひたすら出て来る敵と戦っている。
なぜ敵を増やしたんだ?
刺客たちの散り様が微妙
刺客たちは、そんな次から次へと押し寄せてくる敵に多勢に無勢で、疲弊しきってやられていく。
敵が増えるのだから当たり前にも思うが、勝てる見込みがあって計算づくで戦っていたのではなかったか?
計算のように実際はうまくいかない、ということを描きたいのであれば、敵を増やすのではなく、思いもよらない敵の反応などで描くべきだ。
でなければ、無理矢理刺客たちの玉砕の美学に持って行ったように感じてしまう。
印象的な散り様も特になかったのは残念だ。
刺客たちにもっと個性が欲しい
槍の名手、不死身の山男、人を切ったことのない若い侍、浪人、ベテランの侍・・・
それぞれ個性はあるが、絡み合っていく感じが欲しい。
それぞれの関係性や、性格の違いの面白さというのはさほどない。
内面の違いで十分個性的にはなると思うが、いざ戦いになると似たり寄ったりだ。
最後のシーン
山田孝之演じる新六郎が帰って、恋人が玄関で迎えるところのシーンも、何か意味ありげな感じがあるが物足りない。
主人公の息子ではあるが、新六郎と恋人の間にさほど深い事情も描かれているわけでもないので、実に普通のシーンになっている。
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