監督-マーティン・スコセッシ 114分
脚本-ポール・シュレイダー
出演-ロバート・デ・ニーロ、ハーヴェイ・カイテル、ジョディ・フォスター他
簡単なあらすじ
ベトナム戦争帰りで、精神を患うトラヴィスは、都会の喧騒に馴染めず、日々孤独を感じながらタクシー運転手で食いつないでいた。
ある女性と知り合うも、悪気なくポルノ映画館に連れていき、ふられてしまう。
自分の行動の何がおかしいのか、気付けないそのトラヴィスの状態は他人を遠ざけ、彼をさらに孤独に追い込んでいく。
ある日、自分に助けを求めてきた売春婦の少女と知り合い、トラヴィスは自分のやるべきことを見つける。
その少女が無理やり働かされている、と確信したトラヴィスは、その少女を救い出すために、ある作戦を決行することを決めるのだった。
原題の意味
「taxi driver」=「タクシーの運転手」という意味になります。
日本でも聞く言葉で、説明するまでもなく、そのままといえばそのままですね。
「taxi driver(テクスィードゥライヴァー)」=「タクシーの運転手」という意味の名詞です。
「taxi(テクスィー)」=「タクシー」という意味の名詞、「タクシーで行く」という意味の動詞です。
「drive(ドゥライヴ)」=「運転・操縦する、車で行く、追う、作動させる、車で運ぶ、営む、打ち込む、掘る、敷設する、酷使する、無理に~させる、たたきこむ、押し進める、吹きやる、引き延ばす、めざす、狙う、猛進する、突き当たる、激しく降りしきる」という意味の動詞、車を使う事、自動車の道のり、旅行、ドライブ、車道、狩りたて、材木流し、強打、迫力、精力、運動、衝動、駆動装置」という意味の名詞です。
この言葉では「運転する、操縦する」という意味で使われています。
「drive」に「er」がつき、「driver」=「運転する人」となっています。
「タクシードライバーの」感想
シリアスな設定だが面白い
ベトナム帰りの男が、自分の正義を貫くために、狂った行動をしていく。
面白いです。
主人公はとても危険な心理ですが、自分と重なるところも感じなくもありません。
見終わったら、え?これで良いのか?とざわつく映画です。
何が答えかは、客にゆだねられているという。
デ・ニーロの、危うい青年の演じ方が良いです。
若いジョディ・フォスターの不思議な魅力もしかり。
このころから、すでになんか妖艶な雰囲気がありますね。
ジョディ・フォスターは、このとき、デ・ニーロと共演して、役者という道に開眼したらしいです。
デ・ニーロがセリフにないアドリブをどんどん入れてくるから、その新鮮さに感動したらしい。
デ・ニーロ自身、主人公のトラヴィスと似ているようなところがもちろんあると思います。
本人の素なんじゃないか、このトラヴィスは?と思わせるところも、デ・ニーロのすごいところです。
デ・ニーロとスコセッシ、三船と黒澤、名監監督と名俳優のコンビ。
名作をたくさん作っています。
お互いに分かり合っていて、かゆいところをかきあうという。
こんなコンビネーションで、また新しい世界を見してくれる監督・俳優が出てきてほしいです。
追記:人間の深さを感じる作品
ただ、戦争で精神に傷を負った青年の話ではなく、帰ってきても居場所がない、そもそも社会自体が楽しみを見出しづらい仕組みになっていたり、戦争とは関係ない部分の社会の闇もえぐりだしている。
未熟な社会と、戦争というあってはならない出来事の産物が絡み合う事で、予想もつかない現象が起きてしまう。
誰も悪くないとも言えるし、全員が悪いとも言える。
この映画は、作った、という作為的な感じは一切感じず、人間という意識から生まれるその奇妙な現象をそのまま記録しているかのような映像で、良い意味でも悪い意味でも人間というものの深さを感じさせてくれる。
ドキュメントのように自然であり、ドキュメントよりも深く感じられる。
役者の振る舞いや話の流れなど、自然であると同時に、その演出や見せ方により、シリアスな内容にも関わらずエンターテインメントにもなっている、という、珍しくも魅力的な作品である。
普通、ただシリアスなだけか、もしくはホラーやコメディ、ヒーローよりになってしまうか、などどっちかに振り切れてしまうが、これは非常に絶妙なバランスを保っている、すごい作品である。
シリアスさを真剣にちゃんと表現できているがゆえに、エンターテインメントになっているが、エンターテインメント色を良い意味で出しておらず、エンターテインメント特有の軽さもない。
シリアスさ、格好良さ、人間ドラマ、粋さ、アクション要素、サスペンス感、などが絶妙なバランスで配合されている感じがする。
きっとデ・ニーロとスコセッシの、今から世に出ていくぞ、というその強力だが洗練されたパワーがぐっと凝縮され、演技や演出、編集、音楽のタイミングなど、つま先から頭の先まで全てに神経が行き届いていたんじゃないかと思う。
本当は、こんな作品がこの世にたくさんあったら、なんて楽しいんだろうと思ってしまうが、この作品があるだけ良かった、といった所か。
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