めがね
監督-荻上直子 106分 2007年
脚本-荻上直子
出演-小林聡美、もたいまさこ、加瀬亮、光石研、他
映画「めがね」のあらすじ
浜辺に座っている民宿の主人ユージ、一方学校の校庭で朝礼台に座っている教師のハルナ、ともに「来た」と言って空を見上げる。
島に、サクラが降り立ったのだった。
離島にある民宿ハマダを中心に、心に何かを抱えている様々な人間達のドラマが展開していく。
主人公のタエコもまた、島に来てハマダに泊まり、日常では感じられないゆったりとした時間を通して、自分を見つめなおしていく。
不思議な雰囲気を持った女性サクラや主人のユージ、教師のハルナやタエコを先生と呼ぶヨモギなど、民宿に泊まっている人間達との心の交流が始まる・・・。
“つまらない☆1”理由と考察、その感想
みんな人間関係に疲れてここ来たはずじゃ?
最初の3分くらい、サクラが浜辺について、ユージとハルナと再会するシーンは、とても良い。
これから何かが始まる、と期待感があおられる。
言いたいことはわかる、日常で疲れた体と心が、きれいな自然と心暖かい人たちと過ごすことで癒しされていく、という感じか?
確かに、海や浜辺が映るシーンはとてもきれいだ。
きれいな風景として、浜辺や海を中心に見せる映画はあまりないと思うので、そういう意味では癒されるかもしれない。
しかし、テーマがそれだけではちょっと弱いんじゃないかと思う。
もたいまさこが演じるサクラは、とても不思議な、抜けた感じのオーラが出ている。
サクラ云々というか、もたいまさこ自体がそうだとは思う。
そのサクラが率先して、朝みんなを起こして体操させたり、かき氷を作って振る舞ったり、交流を引っ張っていくのだが、目的がなんかよくわからない。
みんなに喜んでもらおうとしていると思うのだが、それは果たして癒されることにつながるか?
笑顔で語りかけてくるが、それを拒否できない感じがしてしまう。
断っても良いんだよね?朝の体操とか、かき氷を食べる食べないとか。
そういうところも描いて欲しかった。
別に単独行動も全然かまわない、という。
そうでなければ、それは無言の圧力というか、形を変えた強制のようにも感じる。
なぜか、みんな一緒に同じ行動をしている印象が多くて、違和感を感じてしまった。
もし自分だったら、せっかくこういう場所に来たのだから、一人になりたいと思ってしまう。
なんでここまで来て、知らない人と一緒に行動しなきゃいけないんだ?
そういうのが嫌だから来たんじゃないのか?なんて葛藤してしまう。
結局登場人物たちは普通に喋れてしまっている時点で、よくわからない。
それはもう出会いを求めてきたんじゃないか?と
出会いを求めてきたならしゃべることに抵抗はない。
舞台は揃っているが、中身がない
役者は、激しい演技というよりは、物静かな印象がある人達ばかり。
その選び方はとても良いとは思うが、それならもっと負担のかからない、自然な島での過ごし方のようなものを描いて欲しかった。
ただ物静かな感じの人が集まっただけで、やっていることは都会というか、日常の関わりと根本はあまり変わりないという。
そういう人たちならではの気遣いをもっと描いて欲しかった。
そうでなければ、民宿に集まる目的、必要がなくなってしまうというか、ただ人と交流したいから集まっているというのは、自分は好きじゃないし、そんな人は見たくない。
今流行りのシェアハウスに近いが、この民宿に集まる人たちを見たら、それよりははるかにマシかもしれないが。
この作品は雰囲気は悪くないし、音楽ときれいな映像でくすぐられて、このままうまくいけば泣けるかも、と思うがそこで止まってしまう。
きっと疲れている人だったら、この音楽と景色ともたいまさこで泣いてしまう気もする。
そこで背景のストーリーと、登場人物の心理描写がしっかりしていればなあと思った。
恐らく作る最初に設定したであろう一つのテーマをそのままなぞっているだけで、そこから掘り下げられていないように感じる。
ただ「離島で人と自然に癒される」というテーマを掲げただけで、どう独自の世界観を出すために、もたいまさこを中心に深みを出していくか、ということが抜けている。
もたいまさこや役者陣、自然の存在感に頼りすぎていて、肝心の中身が薄くなってしまっている。
映画が言っているテーマは「自由を知っている」だった。
非常に難しいテーマだと思う。
もたいまさこ、小林聡美のコンビ作品が好きな人はいいかも知れない。
映像がきれいで音楽も良いので、もったいない。
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