映画「ガープの世界(1982)」が“つまらない”理由と考察、その感想

⑤つまらない☆1

ガープの世界 英題:The World According to Garp

監督-ジョージ・ロイ・ヒル 1982年 136分

脚本-スティーブ・テシック

出演-ロビン・ウィリアムズ、グレン・ローズ、ジョン・リスゴー、他

“つまらない☆1”理由と考察、その感想

期待外れだった

あのスティングを撮った監督の作品という事で、期待して見たが、かなり裏切られた。

色々と皮肉なことが起きて、中々人生が思うように行かない、世界はかくも奇妙なことだ、と言わんばかりだが、だからなんだと思ってしまう。

フェミニズムや浮気、身近に潜む危険など、様々な要素が盛り込まれているが、それらがうまく全てつながっている感じもしない。

確かに、飛行機は同じ場所に二度落ちないと言われているのに、二度同じ場所に落ちたり、性転換した元男性が自分の周りにいる女性達より一番優しかったり、いつも追い払っていた乱暴運転のトラックではなく、父親であるガープが自身が車で息子の命を奪ってしまったり、皮肉に満ち溢れてはいる。

確かに波乱万丈だ、しかし、だからなんだと思わされる。

何か色んな事件をただ羅列しているだけのように感じられ、後半に連れ盛り上がっていかない。

原作の小説が大ヒットしたということだが、自分は読んでいないが、きっと小説の方が良いんだろうというのはよく分かる。

もしかしたら、映画では描ききれない心理描写が細かいのかもしれないし、多少突飛でもリアルなように頭の中で補完も出来る。

登場人物たちが好きになれない

何が面白く感じられないのかというと、一番は主人公を好きになれないという事だ。

主人公だけじゃない、魅力的な人物がほとんどいないのに、わちゃわちゃと一見派手な事件ばかり見せられても、心に迫ってくるものがない。

どんな大きな事件でも小さな事件でも、その人の感じ方一つでいくらでも価値が変わる。

小さい事件だって、その人が感受性豊かか、もしくはちゃんと受け止めて深く理解したなら、それはその人にとって大事件になる。

逆に大きい事件だって、適当にやり過ごして何も考えなければ、学ぶことなんてない。

結構な事件が起こっているのに、ガープがどう思って、どう成長しているのか、ということの描写が追いついていないと思う。

衝撃を受けて感動して落ち込んで、怒って、なんで俺ばかりこんな目に、という葛藤があったり、それについてどう感じているのか、ということが細かく描かれ、身近に感じられたら面白くなったと思う。

ガープは別に暗い人生を送ってきたわけでもなく、作家で成功し、美人の妻や可愛い息子たちにも囲まれ、十分に恵まれて訳きただろう。

ガープはそれぞれの事件にもあまり悲観的になることもなく、前向きなのは良いかもしれないが、ロビン・ウィリアムスの演じ方が軽く感じられてしまうので、ただ様々な事件を体験しているだけのようにも感じる。

暗いどん底を経験したから明るくなれるという強さを帯びた明るさではなく、もともと楽観的で鈍感な明るさに感じる。

これは、ロビン・ウィリアムスがもともと明るいそういう人間だから、仕方のないことかもしれない。

彼は一見暗さも持ち合わせているかのように扱われているが、全然そんなことはなく、ちょっとシャイなだけで、考え深い人間ではないと思う。

いつまでも若さが抜けない人だ。

それが、様々事件を体験するうちにどんどん深みが増していくならいいが、そうではなく、終始ガープは変わらない。

そんなガープが色々体験していくのを見て、どうしろというのだろう?

魅力的だった人物は、ジョン・リスゴー演じる元男性くらいじゃないか?

自由な生き方をしているという意味でガープのお母さんも一見悪くはないが、なぜ自分の舌を切り落とすという極端な行動を起こしている女性たちに、あなたたちのやっていることは間違っていると諭したりしなかったのか?

自由ということなんだろうが、来るもの拒まずでなんでも受け入れるのは、逆にただの適当で本当の自由ではない。

きっとお母さんは自分のやりたいように生き、ただ流れに身を任せていただけで、深く考えることのない普通の人なんだろう。

出した本がたまたまヒットし、フェミニズムの人達に支持され、それをすんなりと受け入れて、何も違和感は感じなかったのか?

どんな人であれ、自分を良いと言ってくれるのはまんざらでもないし、フェミニズムの代表のように扱われてもいいのか?

まあ、あまりそんなことを考えても仕方がない。

きっと、お母さんに限らず、そこまで考えて作られてはいない。

全編を通して、ただこういうことがありました、と言われただけのように感じる。

何かメッセージ性がありそうで、感じれられない、というなんとも頭でっかちな作品に感じた。

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