ドラマ「アンチヒーロー(2024)」が”物足りない”理由と考察、その感想

④物足りない☆2
  1. ドラマ 「アンチヒーロー(第一話-接点-)」
    1. 第一話が“つまらない☆1”理由と考察、その感想
      1. 面白そうなタイトルだったが・・・
      2. 薄いキャラクターの主役、明墨
      3. タイトルに反する泥臭い普通の弁護士ドラマ
  2. ドラマ 「アンチヒーロー(第2話-拒絶-)」
    1. 第2話が“物足りない☆2”理由と考察、その感想
      1. アンチヒーロー第2話はビヴァン超え
      2. スピード感のある序盤の捜査感、赤嶺の存在感は良い
      3. 明墨の大演説は不発だった
      4. 隠された謎の答えよりも面白いドラマが見たい
  3. ドラマ 「アンチヒーロー(第3話-過去-)」
    1. 第3話が“物足りない☆2”理由と考察、その感想
      1. 初めての面白いストーリー、赤峰の好演
      2. 粋なストーリーを台無しにする明墨の薄さ
      3. 第3話はアンチヒーローらしさがあったが。。。
  4. ドラマ 「アンチヒーロー(第4話-冤罪-)」
    1. 第4話を“見て損はない☆3”理由と考察、その感想
      1. 明墨は権力に対するアンチだった
      2. 赤峰の紫ノ宮の若手コンビが見やすい
      3. 明墨は抑え気味の振る舞いでまだ良かった
  5. ドラマ 「アンチヒーロー(第5話-因縁-)」
    1. 第5話が“物足りない☆2”理由と考察、その感想
      1. 紫ノ宮は良かったが、全体としては物足りない
      2. ドラマの足を引っ張るベテラン勢
      3. 気持ち悪い伊達原は悪くなかった
      4. 面白く振りきれないモヤモヤの5話

ドラマ 「アンチヒーロー(第一話-接点-)」

プロデューサー-飯田和孝、大形美佑葵 2024年-1時間8分

脚本-山本奈奈、李正美、宮本勇人、福田哲平

出演-長谷川博己、北村匠海、堀田真由、大島優子、林泰文、一ノ瀬ワタル、野村萬斎、木村佳乃、他

第一話が“つまらない☆1”理由と考察、その感想

面白そうなタイトルだったが・・・

日曜夜9時から始まったドラマ、アンチヒーロー。
「あなたを無罪にして差し上げましょう」と言っている予告CMを見たがその言い方が薄く、きっとイマイチだろうなと思ったが、その格好良いタイトル名と日曜の夜に放送するということで、よほどの自信作で面白い話なのかもしれない、と思って一話を見てみた。
結果、めちゃくちゃつまらなかった。
途中からほぼ無感情でただ画面の前に座る、という非常に変な時間を過ごした。
甘く見ていた自分の頭をはたかれ、とんでもないものに手を出してしまった、と後悔した。
その主な原因は間違いなく主役の演じ方で、主役がこんな演じ方、存在感では、どんな重厚なストーリーでも駄作になるだろう。
ましてやストーリーや展開も目を見張るほどではないから、なおさらスカスカに見えた。

薄いキャラクターの主役、明墨

まず冒頭で、弁護士の明墨が拘置所らしき場所で犯人らしき人物に、犯罪者になったら終わりだ的なことを猛列
に畳みかけるシーンがあるが、もうここで萎えた。
ずっとセリフを言っているだけで、迫力もなければ説得力も存在感もない。
相手に一言一言しっかりとぶつけてるリアル感もなく、口を動かしているだけと言っても過言ではない。
物語の一番大事な、見ている者を引き付けなければいけないシーンでこれなんだから、先が思いやられる、というかもう終わったと思った。
なぜ撮り直さないんだろうか?
俳優だって失敗することもあるんだから、出来るまでやり直せば良いだけの話し。
演じた俳優も、映像見たら一発で分かるだろう、やばいやばい、まずったと。
監督含め全員分からなかったらもうお手上げだ。
これが、堺雅人ならやってのけたはずで、冒頭でガツンと引き付ける、期待感のあるドラマの始まりになり得ただろう。
作る側は、同じように出来たと思っているのか?
冒頭しかり、この明墨がドラマ中ずっと薄いので、見るのがきつかった。
怖い感じで畳み掛けるのも、ニコッと笑って敬語でしゃべるのも、余裕ぶった笑みで持論を展開するのも、ビックリするほど何も出来ていない。
こんなことを言うのはなんだが、素人演技丸出しで、演技ってこんな程度でしょ的な感じでやってるとしか思えない。
何かの表面的な真似をしようとしているようにしか見えず、独特の味が皆無だ。
そもそも、この人は演じるということの意味が分かっていないんじゃないかとすら思う。
シン・ゴジラでの演じ方もそうだった。
しかしそれは、それをやらしてる監督が悪いので、彼のせいではない、と言っておこう。
畳み掛けてしゃべる様子は半沢直樹の劣化版だし、明墨が法廷で敬語でしゃべる時に、語尾が「ですー」とちょっと伸びる感じは、古畑任三郎の表面的なインスパイアにも見える。
余裕がある感じの時はずっとカッコつけてる変なやつだし、見ていて恥ずかしくなってくる。
織田裕二が演じたスーツに似た恥ずかしさがある。
彼にだって独自の味があるはずなんだから、誰かの真似などする必要はないのに。
これが、この局が今一番力を入れているドラマの主役なんだから、この日本は狂っているのか?
最後の一番の見せ場の、あんたに障害があろうがなかろうが俺には関係ない、的な過激なセリフを畳み掛けるシーンも、見事にうわ滑っている。
その後、証人に不当解雇で訴えれば1000万はもらえる、無料で協力する、と手の平を返して優しく手を差し伸べるのも、その前のセリフが言えてないので、メリハリもない。
うさんくさい変なやつに見える。
そうだな、と一瞬金額を計算して考える仕草があるが、全然考えてる様には見えないうわべの演技。
このシーンに限らず、ほぼ全編通してこんな感じだ。
特に違和感がなく普通だったのは、明墨の実の娘だかどうかは知らないが、サヤという女子高生に電話で、サヤの好きな方で良いよ、今仕事中だから後で連絡する、などというやり取りや、
工場の子供と接する感じだった。
特に演じている感じではなく優しい普通の感じだが、きっと元々こういう人なんだろうと思う。
それならずっとこの優しい感じで演じずに行けば良いのに、無理に出来ないハードな面を演じる必要はないんじゃないかと思う
そういう演じ方に憧れているならしょうがないけど、これは練習でも発表会でもなく、本番だろう。
これが練習で、彼を育てるために高額なギャラまで払って作っているとすれば、この制作陣は彼の親族達か何かか?

タイトルに反する泥臭い普通の弁護士ドラマ

第一話しか見てないが、ストーリーに特にタイトルにあるようなアウトロー感はない。
アンチヒーローという言葉の意味は正確には知らないが、今のところ主人公はちょっと口が悪いだけのひたむきな敏腕弁護士だし、明らかに犯罪をおかした風の容疑者を弁護しているわけでもない。
今回の事件の被害者は態度が悪く、容疑者は普通の青年であるという風に描かれているので、アンチヒーローということにしたいのであれば、この設定は逆にしなければいけなかったと思う。
被害者は人の良い雰囲気の社長で、むしろ容疑者がタトゥーが入っていて態度が良くない青年で、はたから見たら誰しもこの青年が犯人に見える、それを弁護するなら良かった。
実は青年は見た目や態度とは裏腹に真面目な働きぶりで、社長が極悪で青年は何も悪いことをしていなかった、とかなら、誰しもが抱く偏見をぶち壊す面白いストーリー展開だと思う。
じゃあ良い人なのかと言うとそうではなく、弁護士事務所の良い宣伝になるし、金のためにやっているだけだ、と言い張れば、粋な感じも出る。
しかしそうではなく、そんなに悪そうでもない青年が、悪そうな被害者を殺した容疑を晴らそうとするストーリーなので、ごく普通の弁護士法廷ドラマだ。
検察もちょっと悪く描かれているので、普通にヒーローだ。
なぜこんなストーリーにしてしまったのか分からないが、見ている者を2話に引きずり込む力のない地味なストーリーで、タイトルとも程遠い。
しかも主役の演じ方がああいう感じなんだから、これは見るのにエネルギーがいる。
というか、見る目的がない。
誰も自分に見てくれなんて頼んでないが、スカッとする、もしくは深いドラマを見たい。
演技とか度外視で、法廷ドラマやトリックだけに興味がある人には良いかもしれない。
まだ少し盛り上がったシーンは、証人は実は難聴を隠し、嘘の供述をしていたことを暴き、証人が暴れる所だ。
この証人は、セリフが棒読みの所はあるが、味があり存在感もあるので、悪くない。
ただ、その後証人に明墨がまくしたてる所は、上述した通りスカスカだったが。
なので、ストーリーも普通なので、これを面白く見せるなら、主役にマンパワーが必要だと思う。
上でも述べたが、もしこれが堺雅人なら、十分に見れたドラマになっただろう。
自分は堺雅人信者ではないが、他に分かりやすい役者の例えがないので、つい例に上げてしまう。
証人に下手に出て丁寧にしゃべる感じ、事務所の中での怖い雰囲気、かと思ったら子供とたわむれたり、アウトローな意見をまくしたてることもする、全ての顔を嘘でなく出せる、かつ一人の人間として統一感もある、という高度な演じ方も要求され、主役の負担が大分でかい役柄だと思う。
といってもそれぞれちゃんと演じられてから次のシーンを撮る、ということを監督が繰り返せば良いだけの話しで、長谷川博己にも出来ない訳ではない、分からないけど。
そういうこともせず、役者に丸投げなのかもしれないが、それも含めて監督が悪い。
堺雅人はリーガル・ハイをやっているから、アンチヒーローをやる理由はないのかもしれない。
明墨はリーガル・ハイほどぶっ飛んでいるわけでもなく、ストーリーも普通で、何を見せたいのか不明だ。
長谷川博己が主演なら、アンチヒーローなんてタイトルや設定はいらず、優しく真実を追求する普通の弁護士ものにしたほうがよっぽど面白いんじゃないか?
ただ、月曜日仕事行くの嫌だな、と思いながら見ている者の気持ちをぶち壊すほどの破壊力のない、わざわざ日曜の夜9時にやるほどでもない、普通の法廷ドラマになるだろうが。
それでもこのアンチヒーローよりはマシなはずだ。
このドラマで良かったシーンは、上記で述べた通り、証人の味のある演技くらいで、あとは普通だった。
明墨弁護士事務所の人達も、特に不自然な人がいるわけでもなく、かといって特徴的な人達でもない。
しかし、脇役なので、これで十分といえば十分だろう。
新人弁護士の感じも悪くない。
むしろ明墨がちゃんと強烈で、存在感があれば、こういった脇役のキャラクターも光って見える様になるだろう。
それだけに、明墨の存在感は必須だった。
今後は、そういう弁護士事務所のキャラクターが絡んでいって、彼らがフィーチャーされる話しもあるかもしれない。
また、一話の最後に現れた、野村萬斎演じる検察の重鎮らしき人物が次第に明墨に牙を向いていくのだろう。
木村佳乃演じる検察は、明墨の味方なのか敵なのかは分からないが。
いずれにせよ、もうこの一話のストーリーがどう完結していくのか、ほぼ興味がない。
主役もストーリーも、どちらも引き付けられるものはこの回では何も見出だせなかった。

ドラマ 「アンチヒーロー(第2話-拒絶-)」

プロデューサー-飯田和孝、大形美佑葵 2024年-60分

脚本-山本奈奈、李正美、宮本勇人、福田哲平

出演-長谷川博己、北村匠海、堀田真由、大島優子、林泰文、谷田歩、野村萬斎、木村佳乃、他

第2話が“物足りない☆2”理由と考察、その感想

アンチヒーロー第2話はビヴァン超え

アンチヒーローは2話まで放送され、その視聴率はビヴァンを超えて12.8%だったらしい。
正直、このニュースには度肝を抜かれた。
1話の件で述べた通り、2話まで全く引っ張る力のない1話なのに、しかもあのヴィヴァンよりも視聴率が良いというこの怪現象に、不覚にも呆然としてしまった。
ヴィヴァンは変な話だったが、堺雅人のポテンシャルや期待感があるから、まだ見る人が多少なりともいるのは理解できるが、このアンチヒーローは、一体全体みんな何を期待して見ているのだろう?
ヴィヴァンも2話を見る気にさせなかった、自分は2話は見なかったから同じ現象である、とは言えるが、自分的にはヴィヴァンよりもスカスカの1話だった。
だから、見てみようと思う。

スピード感のある序盤の捜査感、赤嶺の存在感は良い

明墨の演技云々はひとまず置いておいて、序盤は少し面白かった。
検察の不正な証拠のでっち上げを暴くために、明墨の弁護士事務所のチームが大学に潜入して、時には生徒に成り済まし、あの手この手で研究室の情報を集めていく描写は悪くない。
次々と展開が先に進んでいくスピード感が心地良く、悪くなかった。
特殊な捜査の仕方ではなく、あくまで誰でもやろうと思えば出来なくもないことを積み重ねていく、地道だが知恵を使ったその調べ方は格好良い。
いつもツンとしている紫ノ宮が、学生のふりをして学生から話を聞き出す様なども悪くない。
新人弁護士の赤峰の演技も自然で、この作品の主人公は赤峰なんじゃないかと思った。
この法律事務所のやり方に戸惑いながらも、真面目に仕事に取り組もうとし、明墨が善か悪かもまだ判断しかねる冷静な感じなども良い。
明墨を始め、まだこの事務所や法曹界のこともあまり知らない赤峰は、このドラマを見ている者の代弁者の様な役割を果たしていて、彼の自然な振る舞い、存在感がこのドラマを見やすいものにしている。
彼はまだ若いが、若さ特有のダメな軽い感じもなく、少し影のある若者感が非常に好感が持てる。
そんな赤峰を絡めた序盤の捜査の描写は良かったが、後半の明墨主体の法廷劇はあまり面白くなかった。

明墨の大演説は不発だった

 明墨は相変わらず体の仕草や作り笑顔などその振る舞いがあざとくうわべで格好つけているように見え、長ゼリフなどは中身のない言い方で、とても飽きてしまう。
検察だけでなく裁判官ですら公正に裁判を行わなければいけない、などと、確かに良いことは言っていたが、その言い方が非常に薄っぺらい。
見せ場の大演説は、弁護人は関係のないことをしゃべらないように、と本来なら裁判官にすぐにさえぎられるような、セリフを羅列しているだけの演技だった。
ジャスティスのアル・パチーノを真似している子供のようだ。
その言い方に、聞いている者の心を揺さぶる、こみ上げてくる怒りや熱さも迫力もない。
実際本当の法廷でこんな感じでしゃべっていても、不自然でみんな聞いていないだろう。
それなのにドラマだからみんなが聞き入っているこのシーンは、この2話の中で一番不自然で不発のシーンだった。
そして法廷を去る時には、ツンとしたドヤ顔で帰っていき、報道陣に格好良いことを言う感じはおバカさんで、非常に恥ずかしい。
なぜこんなうわべの演じ方をしているのか全く分からず、これなら何も演じずに素でやって下さい、と指示したほうがよほど面白くなっただろう。
2話の最後で泣いていた描写があったけど、それまでの演じ方がふにゃふにゃなので、何泣いてんだ、という感じだ。
鬼の目にも涙的なギャップもなく、変なやつ、もしくは自分に酔っているやつに見えるので、深い理由があるんだろうな、と興味もそそられない。
むしろ、泣きもしない、感情も見せない変なやつでずっとでいる方がまだマジなんじゃないか
この演じ方を続けるのであれば、出来れば、明墨の露出は極力減らして、赤峰中心の話しにして欲しい。
ちょっとしたスパイス的な、弁護士事務所の変わったおじさん的な立ち位置で、赤峰を脇役としてサポートするくらいじゃないと、邪魔でしょうがない。
一話の衝撃的なあざとさに比べたら、これでも少しマシになっているが、せっかくのキーパーソンがこれでは、物語はいつまでたっても締まらない。
もっと地に足のついたおじさん俳優にでもやって欲しかった。
ちなみに、検察の姫野は悪い感じが誇張されていてあざとかった。
顔芸というか歌舞伎のモノマネというか、コントのような感じもあり、リアルな怒り方ではない。

隠された謎の答えよりも面白いドラマが見たい

この2話は、全体としてはまだ一話よりは面白かった。
それは明墨の演技を度外視して、序盤の捜査する感じと、判決がくつがえる展開、全体を通した赤峰の自然な存在感によるものだった。
最終的に容疑者は無罪ではなかった感じも示唆されているし、タイトルとの関連性も含めて、まだこれが第一話にした方が良かったんじゃないか?
一話よりもまだ視聴率が良いのは理解できた。
なんとなくテレビをつけてて、面白い、と思って2話から見始めた人達が結構いたってことか?
ただ、今のところアンチヒーローというタイトルの謎が解明された訳ではない。
ヴィヴァンで味をしめたのか、そのタイトルの意味も徐々に明かして、考察させることで引っ張りたいのか?
主役のマンパワーでそもそも引っ張れていないのに、よくそんな怖いことが出来るな、と逆に感心してしまう。
被害者は嫌な社長っぽいやつで、加害者はむしろ普通の青年だ。
もし罰を受けるならこの社長がいなくなったほうが世のためになる、と考えれば、明墨のやっていることは十分に理解できるし、こんな弁護士がいてもいいし、いて欲しい。
ただその社長が本当に悪いやつだったのか、という描写が足りないので、スッキリしないし、メリハリがない。
仮に社長が悪いやつだったとしても、明墨がやったことはヒーローになるので、アンチヒーローではない。
自分の正義に基づいて弁護を勝手に変えていくのは、世直し弁護士、処刑人弁護士みたいな感じか、それはそれでダサいタイトルだけど。
でもタイトルがどうのこうのというのは、ほぼどうでもいい。
面白ければ、良いタイトルに思えてくるだけのこと。
中身が面白くなければしょうがない。
明墨は今のところ、ドラマを邪魔する変なやつだ。

ドラマ 「アンチヒーロー(第3話-過去-)」

プロデューサー-飯田和孝、大形美佑葵 2024年-46分

脚本-山本奈奈、李正美、宮本勇人、福田哲平

出演-長谷川博己、北村匠海、堀田真由、大島優子、林泰文、田島亮、山崎銀之丞、野村萬斎、木村佳乃、他

第3話が“物足りない☆2”理由と考察、その感想

初めての面白いストーリー、赤峰の好演

全体のストーリーとしては初めて面白くなり得るストーリーだったが、良かったのは2話と同じく、最初の30分くらいだった。

なぜいつも1話通してガツンと来させないのだろう。

最初の30分くらいの、赤峰が事務所のチームと事件を調べ、ずっと抱いてきた疑問や不信感を明墨にぶつける感じまでは非常に良かった。

赤峰の感情の動きや振る舞い、新人のフレッシュ感や不信感を徐々につのらせていく演技など、ナチュラルでとても良い。

正義感にかられ、怒りを表に出す時にも、リアルな怒りをセリフを言いつつもしっかりと相手にぶつけられていて、演技に見応えがある。

このドラマの出演者のレギュラーメンバーの中では、突出してその演じ方にプロ感が感じられ、新人弁護士という役どころを見事に演じられていると思う。

演じ方が軽くなく影もあり、感情も理解して表現出来る彼のような若い俳優は、とても貴重な存在だろう。

派手ではないが、しっかりと仕事をしている。

粋なストーリーを台無しにする明墨の薄さ

そこからは、明墨の出番だが、相変わらず軽いうわべの演じ方で、せっかくの赤峰の好演や、面白くなるストーリーなのに台無しだ。

赤峰が不信感を明墨にぶつける最初のシーンでは、明墨がドライブレコーダーを外させたことを激しく問い詰めたが、明墨の第一声はふにゃふにゃで、ずっこけそうにった。

こんなに赤峰が感情をぶつけているのに、「ほう、弁護士らしい良い仮説です」というセリフを棒読みで言っていた。

あえて敬語を使ったんだろうが、はたから見ると、赤峰の迫力に押されて弱気になってしまったように見える。

手放しで、良い仮説だ、と強く褒めながら反論するなら分かるが、赤峰の感情のこもり具合に全く比例していない返答で、こんな会話をしていたら、何百回やったって面白くならない。

静かに穏やかに反論したいならそれなりの強さが言葉に秘められてないといけないのに、明墨はなぜこんなにふにゃふにゃなんだ。

勝新太郎が同じセリフを静かに言うなら深みがあるが、そんな雰囲気で演じられてないのに。

明墨はずっとそんな感じだ。

ストーリーとしては、明墨が悪徳政治家の息子を弁護するが、わざと失敗して敗訴し、悪に鉄槌を下す、という粋なストーリーだが、それがうまく見せられていないのでもったいない。

せっかく、こんな弁護士いて欲しい、と思うような話しなのに。

世に出すならそれに見合う演技もセットで出さなければ、ストーリーだけパクられてより良いものを外国に作られてしまう。

赤峰が思っていたのと違うドライブレコーダーの証拠映像を明墨に見せられ、明墨は赤峰に説教するが、その怒り方も迫力がない。

赤峰に中途半端な介入をさせないために、赤峰を騙す必要があり、赤峰の信念を試している重要なシーンでもあるんだろう。

なので、もっと悪に見えるくらい圧倒し、赤峰の心を折り、こてんぱんに言い負かすべきだった。

あれでもやっているつもりなんだろうけど。

その赤峰の反応でどれだけの覚悟でこの事務所に入ったか分かるし後々明墨が全て正義のためにやっていたことが判明した時に明墨の印象は跳ね上がっていただろう。

明墨が検察官の緑川に新たな証拠を提示された後の明墨の振る舞いもゆるい。

ちなみに検察の木村佳乃が演じる緑川は演技しているように見えず、自然で良い。

明墨は態度を一変させ、言葉も出ない、弁護人を辞退することも考えている、とあえてショックを受けた様な演技を披露するが、この一番の見せ場の大事な演技もあざとい。

本当にショックを受けて落ち込んでいると、視聴者も含め見ている者に思わせなければいけないのに、明らかに嘘演技をしているように見える。

もしそれが出来れば、わざとやっているのかどっちかわからない、という深さが出たのに、うわべの演技だ。
というか、無能のフリをして負けるなら、本当に無能に見せなければ。

法廷を去るときはもういつもの明墨に戻っているから、明墨のやりたいことは分かるけど爪が甘い。

法廷を出てもまだショックを引きずっている感じだったら、あの明墨が負けた、と周りを騙すこともできたかもしれない。

もしそれが出来れば、めちゃくちゃ面白い回になったはずだ。

法廷にいた人達も、視聴者も最後の最後まで明墨に騙されていた、というストーリーなら、実に見応えがあったが、残念ながらそうではない。

最後の赤峰と明墨の二人で会話するシーンも深くなったはずだろう

自分に怒ったのは嘘だったんですね、と赤峰が言ったら、いや、あれはあれで本当のことだ、と明墨が言ったって面白い。

明墨は自分の印象を自在に操る天才弁護士みたいに自分を思っているのかもしれないが、全然操れてない。

あ、こいつわざとやってる、とすぐに見抜かれ、なめられる。

その噂が広がり、悪人は明墨に弁護など頼まなくなるから、アンチヒーローとしてはやっていけなくなる。

ちなみに、赤峰が最後に明墨に、明墨が何のために犯罪者を無罪にするのか知りたいと言っていたが、意味不明だった。

犯罪者の弁護をする、あわよくば無罪にするのが弁護士の役目だし、明墨は少なからず正義のためにやっている訳で、誰もが死んで欲しいと恨まれるような犯罪者を面白半分で弁護して来たわけではない。

それを間近で見たきた赤峰から出るとは思えない、あえて言う必要のない、浅く中身のない言葉だった。

弁護士はなぜ犯罪者を守るの?という子供の疑問なら分かるが、赤峰はそうでない。

視聴者に説明するために、赤峰にこのドラマのテーマ的な何かを言わそうとしたのか知らないが、とってつけたようなセリフで残念だった。

第3話はアンチヒーローらしさがあったが。。。

この3話は、初めてタイトル通りアンチヒーロー感もあり、悪を無能のフリをして倒す、という今までで一番面白くなり得る、しっかりしたストーリーだったのに、足りない演技で台無しだった。

いい加減そこを作る側はわかった方がいいんじゃないか?

作るべきは演じ方を含めたキャラクターの作り込み、存在感で、ベテラン俳優にやってもらえば大丈夫っしょ、程度で後は丸投げではあまりに安易すぎる。

演技一つで、ストーリーがいくら良くてもあっという間に崩壊する。

そう演じさせられているなら監督が悪いが、それはそれで役者に大恥をかかせるパワハラだ。

ちなみに劇中の音楽は、スピード感のある音が捜査をもり立てたり、所々悪くないが、神がかっている讚美歌のような人の声はなんとも冷める。

ドラマに寄り添うような音ではなく、そこをさらに超えた非日常の嘆きのような音楽なので、大げさでうわ滑っているとも言える。

本当にどうしよもない不条理、理不尽に登場人物が直面した時などに流れるなら分かるが、そうではない。

音楽を作る側は、すごいものを見せているように演出したいんだろうが、飛び出していてドラマと合っていない。

どう見せたいのか目的もはっきりせず、音楽って入れれば良くなるってものではない分かりやすい例だと思う。

エンディング曲のmiletの曲調くらいの方がまだ合っているんじゃないか?

そもそもまともな演技を詰み重ねたドラマがあれば、音楽なんて添える程度で十分だし、なくても良いだろう。

せっかく頑張って音楽を作っても、あざとい演技に重ねては、それがカバーされるどころか、より薄っぺらさが際立つだけである。

なにはともあれ、もっと根幹のドラマ部分、主役の演技をしっかりと作って欲しいと思った。

日本のドラマにおいていつものことではあるが、3話は話しが良かった分、よりそう思う。

ドラマ 「アンチヒーロー(第4話-冤罪-)」

プロデューサー-飯田和孝、大形美佑葵 2024年-46分

脚本-山本奈奈、李正美、宮本勇人、福田哲平

出演-長谷川博己、北村匠海、堀田真由、大島優子、林泰文、藤木直人、早見あかり、渡邊圭祐、野村萬斎、木村佳乃、他

第4話を“見て損はない☆3”理由と考察、その感想

明墨は権力に対するアンチだった

悔しいけど、4話はちょっと面白かった。

なるほど、明墨は一般的にヒーローとされている権力に対するアンチだったんだ。

第2話で緋山を無罪にしたのは、検察の不正を行う姿勢を世にさらすためだったのか。

それに気づかなかった自分は、顔から火が出て家がボヤになった。

赤峰が説明してくれなかったら気づかなかった。

検察に対する自分のイメージはそもそもそういうことをする組織という認識なので、2話は見ただけでは、明墨にそんな意図があったとは夢にも思わなかった。

しかし、そうだとしても、明墨の大演説や振る舞いがあざとく、2話の評価は変わらない。

むしろ、話が良い分より残念に感じる。

話自体が分かりやすい3話、謎がはっきりして話の方向性が分かる4話まで、主役のマンパワーで強引に引っ張る必要があった。

もしそれが出来ていれば、この4話で制作陣の意図通り跳ね上がっただろう。

軸となる謎が解明されないまま普通の法廷劇っぽく、主役に魅力も少ないのに、なぜ引っ張れると思ったんだろう。

主役の剛腕で謎を引きずったまま視聴者を釘付けに出来ない、と自覚していたら、一話から、検察を吊るし上げるために殺人者を無罪にする、と明かしても良かっただろう。

でもそうではない高度なチャレンジをして失敗している。

しかし、演技度外視で言えば、しっちゃかめっちゃかのヴィヴァンより意味の分かる、筋のある謎で、全体のストーリー自体は悪くない、今のところは。

そしてこの4話に関しては、演技もストーリーもヴィヴァンのどの話よりも面白い。

ヴィヴァンより安上がりなはずなのに。

明墨の狙いの輪郭が見えてきたこの4話は、5話にも期待感を持てる一番面白い回だった。

一応見続けて良かった、頑張った甲斐がある。

頑張らせないで見せてほしい。

だけど、明墨の露出が増えたらまた変なことになるんだろう。

だから、薄目で見ていくようにしよう。

赤峰の紫ノ宮の若手コンビが見やすい

今回の話は、赤峰と紫ノ宮の露出が多く、二人とも自然なので、ドラマとして非常に見やすかった。

赤峰がナチュラルなのは前述した通りだが、紫ノ宮も良い。

紫ノ宮はいつもあまり感情を表に出さない感じだが、ただツンとしている表面上の演技をしているわけではなく、感情がちゃんと表に出ている。

赤峰に、羨ましいんですか?と釘を刺す言い方も良いし、デレデレしている赤峰を見る顔の表情、自分の父親の話になって顔色が青ざめていく感じなどリアルで、ツンとしているキャラを守りつつも、感情に幅があって深みがある。

紫ノ宮にはだんだん味が出てきている。

ちなみに、以前この役者がエレベーターの中で赤ちゃんに笑いかけるCMを見たことがあるが、演技に見えず、感情が自然で大分良いと思っていた。

本当に楽しんでいるように見えた。

だからなんだ、ということだが、ポテンシャルは高い人なんだと思う。

どうかこのままの自然な感じで行ってほしい。

赤峰は相変わらずナチュラルで、このドラマの軸のような存在だ。

この二人の会話を中心に、紫ノ宮が明墨に雇われた理由や、明墨が刑務所にいる志水の冤罪を晴らそうとしている狙いが判明していく展開は、期待感があって大分良かった。

良い意味で点が線になった4話

明墨は今回は警察の不正に目をつけ、そのために警察関係者の父を持つ紫ノ宮を雇っていた、という展開は面白い。

明墨が検察をやっていた時に、紫ノ宮の父と口論していたという回想シーンなども含め、明墨がなぜこの事務所を立ち上げたのか、明墨が弁護する事件を選ぶ目的などが、明墨の口からではなく、周りの人間の会話やドラマから浮き彫りになっていく感じが、明墨という異質な弁護士の人間像を深く見せている。

本人が語るときっとペラペラだから、こういう見せ方はより明墨に合っているだろう。

権力に対するアンチというのも格好良く、これからじゃんじゃん悪を切り、一番トップの伊達原もやっつけて欲しい。

まだ何か悪いことをしているのかは分からないが。

今回の話は、良い意味で点が線になったと言えるんじゃないか。

演技自体で見せるドラマ描写が良く、ストーリーの深さともマッチして、これはドラマが最低限あるべき姿だと思う。

せめて、このクオリティで毎話見せてくれたら、テレビ人気は復活するんじゃないか?

きっとそれを持続するのは難しく、また下降するだろうから、過度な期待は厳禁だろうが。

音楽も、今回は中身のあるドラマチックな展開や役者達の浮いていない演技に比較的合っていて、違和感は序盤のちょっとを除いて特になかった。

むしろ、盛り上げる良いスパイスになっていたと思う。

ドラマの音楽って、同じ音楽を毎話使い回す、使わなければいけない契約なのか知らないけど、そりゃその話によってドラマの雰囲気や展開、良し悪しが変わるわけだから、合わない回が出てきて当然だ。

毎回音楽家が映像を見てその都度音楽をつける、という緻密な演出はしないのか?

そうでなければ、音楽が合う合わないは、運次第ということになる。

ドラマ全般に感じる違和感の一つはこれだ。

自分が音楽家なら、合ってない音楽をつけている、大した事ない、と思われたくないから、毎回音をつけたいと思うだろう。

それにはお金がかかりすぎるのか?

中身のない派手な演出にお金をかけるんじゃなく、そういう緻密なことにはもう少しかけてもいいんじゃないか?
もう十分お金がかかってるのか?

ヴィヴァンで使いすぎたか?

必ずしも手の込んだ音楽をかけなくても、役者の演技がイマイチな時は、それなりに抑え気味の音をつければいい。

音楽家にそんな判断はできないか?

何はともあれ、4話はネックの明墨の演技があまり邪魔をせず、総合的に一番良い回だった。

もし明墨役が堺雅人だったらと思うと、ヴィヴァンとは比べ物にならないくらい面白くなったんじゃないか

また堺か、となるし、他の役者の面白いドラマも見たいが、案の定こんな感じなんだから、堺でいい、いや堺がいい、と思ってしまう。

他に、深みのある主役を出来る新星はいないのか?

新星と言っても、別に50代、60代でも良い。

明墨は抑え気味の振る舞いでまだ良かった

明墨は大立ち回りをするような露出が少なく、あまり邪魔してなかったので、ずっとこのくらいの感じならまだ見ていられる。

序盤で、明墨が今回の事件の担当弁護士を降ろさせるため、その弁護士家族の前に現れるシーンだけは良かった。

サングラスをかけてニコッと笑い、風船を子供に渡して、マジックを披露しだすシーンは優しい変質者という感じで味があり、良い意味でコミカルだ。

格好つけた悪のヒーローぶるんじゃなく、こういう気持ち悪い弁護士の方が魅力的である。

主役だから全能感がなくちゃいけないなんて固定観念で、気持ち悪くても確かな味があれば、どんどん人間像は深くなっていく。

今までの明墨も気持ち悪いけど、気持ち悪さの意味が違う。

ちなみに、屋上で空を見上げる感じはあざとかった。

相変わらず語尾を伸ばす、です〜とか、だね〜などの喋り方が軽いのが邪魔なので、出来ればちょっとづつバレないようになくしていってもらいたい。

強くしゃべろうとする時に、力が入ってセリフの羅列になるのも避けて欲しい。

格好つける演技もいらない。

味のある人格を自分で見つけられないなら、何も演じようとせず、誰かになろうともせず、素の長谷川博己でいいじゃないか。

きっとそっちの方がよほど魅力的だ。

第5話以降、この良い流れを明墨が自分で壊してしまわないことを願う。

初めて5話は少し楽しみだ。

ドラマ 「アンチヒーロー(第5話-因縁-)」

プロデューサー-飯田和孝、大形美佑葵 2024年-46分

脚本-山本奈奈、李正美、宮本勇人、福田哲平

出演-長谷川博己、北村匠海、堀田真由、大島優子、林泰文、藤木直人、早見あかり、渡邊圭祐、野村萬斎、木村佳乃、他

第5話が“物足りない☆2”理由と考察、その感想

紫ノ宮は良かったが、全体としては物足りない

途中まで、警察のでっち上げを暴くために、被害者に嘘の証拠音声を聞かせて揺さぶったり、事件を担当していた元弁護士と接触して写真を取って脅したり、普通の弁護士事務所がやるとは思えない危険なやり口で、あの手この手で裁判の準備を進めていく描写は悪くない。

そして、紫ノ宮が葛藤しながらも今回の事件のキーパーソンである、警察の父親と向き合うドラマは、紫ノ宮の演技が非常に良く、彼女自身に関しては見ごたえがあった。

長年付き合いはあっても深く踏み込んだことのない父に、勇気を出して涙がこみ上げながらも問い詰める序盤のシーン、裁判後に父が隠していることを聞き出そうとするシーン。

紫ノ宮は演技をしている感じに見えず、黙っている時も感情が流れているのが見えるので、終始自然で引き込まれる。

父親と接している感じも自然で、しゃべっていて自分で自分の言っていることに気づき、自然と感情が高ぶって父を問いただしていく描写など、リアルでかなり良い。

間違いなく今回の話の主役である。

この俳優は若いだろうがとても良い。

ちなみに明墨はそもそもナチュラルな感情の流れなどいつもほぼ見えない作り物の演技ばかりで、そもそも流れてすらいないんじゃないかと思う。

流れていたら漏れてくるはずだが、ほとんど見受けられない。

いかんせん、赤峰と紫ノ宮の振る舞いが良いがゆえにそれがより際立つ。

この若手二人の様な、ナチュラルな役者のみでドラマを作って欲しいものだが、そんなことは作ってる側は分からないからしょうがない。

見ている人達の大多数もあまり分かっていないんじゃないか?

何はともあれ、そんな紫ノ宮の好演もあり、裁判になるくらいまでは良かったが、全体としては大分物足りなかった。

それは、若手が良くても、ベテラン勢の振る舞いがいまいちだったからだと思う。

ドラマの足を引っ張るベテラン勢

第5話がいまいちだったのは、ストーリーの軸となる明墨の露出がそこそこ多かったから、というのは言うまでもないが、今回のキーパーソンである紫ノ宮の父親に存在感がなかったことも大きい。

裁判後に、終盤で紫ノ宮が父親を問い詰めるシーンも、紫ノ宮自体は良かったが、父親がいまいちだった。

せっかくリアルな生の感情を父親にぶつけているのに、その反応が特に深みもなく、普通なので、面白いドラマにはなり得ない。

言えないことだらけで言葉が少ないのかもしれないが、言葉が少ない中に言いたいことが詰まっている感じ、怒りやもどかしさ、娘への愛など入り混じった深い感じは特になかった。

紫ノ宮のように、しゃべっていない時もしゃべっている感じはない。

警察が来て連れて行かれる時も、きっとこの人には深い理由があるんだろう、と演技で思わせられていない。

下手をすれば、この連れて行かれる時に視聴者を号泣させられるくらいに、その振る舞いで持っていけた可能性もある。

せっかく、それを見送る紫ノ宮が感情を高ぶらせて、ドラマチックになり得るピースは揃えているのに、このシーンしかり一方通行なドラマになってしまった。

父親役はもっと年を取ったおじさんで良かった。

寺島進なんか悪くないんじゃないか?

いや、大分良い。

この父親を演じた俳優は以前より老けて顔に味が出てきたけど、まだ中身も含め若くてイケメンよりな気がして、物足りない。

イケメンという枠に入るであろう人達が全てダメと言っているわけではないが、彼らには捨てきれない何かが残ってしまう印象がある。

言葉少なで難しい役どころと言えばそうだが、この回ではこの父親の露出は多かったし、一番の見どころとも言える、娘の紫ノ宮との対峙シーンが今ひとつなので、全体のドラマの盛り上がりに欠けてしまった。

明墨に関しては今回は露出もそこそこあり、いつもの通り独特の存在感のなさで、ストーリーを盛り上がらせなかった。

気持ち悪い伊達原は悪くなかった

冒頭の明墨と伊達原の対峙シーンでも、すでに明墨は物足りなかった。

伊達原が、検察の膿を出せて良かった、今後も容赦なくお願いしますと、強烈な嫌味を明墨にぶつけるが、明墨は「そのつもりですー」と棒読みで語尾を伸ばす言い方で反論していた。

せっかくのヒリヒリしたセリフのやり取りなのに、実に間が抜けた迫力のない言い方で、拍子抜けだった。

静かに強い人間に見せたいのだろうが、ただの普通の人だった、むしろ頼りないやつに見えた。

なぜ撮り直さないんだろう?

ちなみに、そのセリフを受けての「頼もしいねー」と言いながらの伊達原の笑顔は気持ち悪くてとても良かった。

伊達原は、笑っていてもいつも目が全く笑っていないのが、すごく不気味で良い。

人間の皮を被った化け物のようだった。

伊達原は、特にリアルな演技とかではない、セリフ回しも独特すぎてこんな検察は存在しないと思うが、存在感があって敵役として悪くない。

しかし、終盤で警察の裁判の失敗に伊達原が激怒して声を張り上げるシーンがあるが、怒り方がヒステリックで薄かったので、少しがっかりした。

嘘笑顔でしゃべっているときは怖くて良いのに、いざ怒るとこんな薄い感じになるのでは、この先の主役との真っ向勝負の激しい言い合いになった時に、物足りない悪役になってしまうんじゃないかと思う。

半沢直樹で言えば、大和田常務のような太い悪にはなり得ない。

そもそも激しく怒る演技は難しく、これほど日本人が不得意な演技はないと思う。

それは欧米の人達に比べて、普段からあまり怒らないからだと思うが、そういうシーンでは、日本人俳優はほとんど薄っぺらい演技になる印象がある。

アル・パチーノやフィリップ・シーモア・ホフマンなどのように、怒りで見ている者を圧倒するような演技なんてほど遠い。

そういう意味では堺雅人はちゃんと強く怒れる、最近の日本では珍しい俳優だし、今はなき香川照之も良かった。

なので、今のところ伊達原が稀代の悪役になれるかどうかは少し疑問だが、静かに怒る感じは良いので、頑張って欲しい。

あの普段落ち着いた伊達原が、明墨にこてんぱんにやられ、最終的に青筋立ててヒステリックに叫び、醜態をさらして散っていくとすれば、それはそれで見応えがあるかもしれない。

漫画的で、変な悪役だった、となるかもしれないが。

面白く振りきれないモヤモヤの5話

明墨はいつも通り、全編通して薄かった。

裁判が終わって、赤峰に問い詰められた時、後ろを向いてニコッと笑う感じは特にあざとかった。

今回は明墨の露出が要所要所を締めているので、そこそこ邪魔をしていた印象だ。

主役が足を引っ張ってしまっては致命的だが、明墨の演じ方を今さら変えろというのは、時すでに遅しだろう。

いくらドラマの中で誰かが良い演技をしても、周りがそれに追随する、もしくはサポート出来なければ、全体としてつまらないものになる。

この現象は、日本のドラマや映画でよく見られる。

いくら紫ノ宮や伊達原が光っても、焼け石に水だろう。

一人芝居じゃなく、みんなで作ってるんだからそりゃそうだ。

逆に一人が良いだけでなく、その相手役も良い、脇役も敵役も良い、と良さが重なっていけば、とんでもない物が作れるはずなのに、なぜそれをやろうとしないのか?

4話はそういう相乗効果の兆しがあったのに、5話はいつも通りの物足りない日本ドラマだった。

このアンチヒーローというドラマは、ヴィヴァンと違って変ではなく、比較的地に足をつけたストーリーで、真面目に頑張ってドラマを作ろうとしているのはまだ分かる。

しかし、ストーリーは良くても、良い演技をする役者はいても、なんか面白くならない、モヤモヤするこの回のようなドラマは、日本ドラマの超えられない壁を感じた。

4話が良かったのは、キャスティングや話の展開、映像の配分などがたまたまハマっただけだったんだろう。

この回の最後のシーンで、緋山が再び登場し、緋山と明墨が協力してこれから何かをすることが示唆された。

次の回で明墨のやりたいことがより明確になるのかもしれない。

このドラマが仮に全10話あるとして、今の段階では、全体を通して面白かった、という大団円は迎えられそうにない。

話しは面白かったのに、というよくある結果になるんじゃないかと思う。

今後明墨の狙いが明確になるにつれ、明墨の露出はますます増えていく訳だろう。

せっかく格好良いヒーロー像になり得るのに、またうわべで格好つけたような振る舞いをたくさんしていくことだろう。

明墨の露出を極力抑えてドラマを作っていこう、などという修正が途中で入るとは思えない。

それに気付くような制作陣なら、そもそも明墨にこんな演じさせ方はしない。

なので、光る若手の演技や伊達原の暴れっぷりを見ていくことにしよう。

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