映画「新喜劇王(新喜劇之王)」(2019年)のあらすじ・感想 

④物足りない

見どころ→チャウ・シンチーのユーモアセンス

監督-チャウ・シンチー 2019年 90分

脚本-チャウ・シンチー

出演-エ・ジンウェン、ワン・バオチャン、他

簡単なあらすじ

10年も端役のエキストラでなんとか生計を立てながらも女優を目指すモンは、父親に反対されながらも、夢を追いかけていた。

ところが、自分の演技などは一切見てもらえず、現場では先輩の俳優にいじめられたり、同居していた友人がスカウトされて映画デビューしたり、しまいには応援してくれていたはずの恋人にも裏切られてしまう。

もうダメだと、ずっと追いかけていた夢を一度は諦めたモンだったが・・・。

感想

楽しみにして観たチャウ・シンチーの新作だったが・・・

チャウ・シンチー監督のコメディドラマ。

エキストラを続けて食つなぐ売れない女優が、自分の夢を諦めずに奔走する話し。

すごく期待外れだった。

正直がっかりした。

チャウ・シンチーの久々の監督作品だと、楽しみにしたが、今まで自分が見たチャウ・シンチー作品の中で一番面白くなかった。

チャウ・シンチー独特のユーモアは悪くない。

平気で裏切る友人の振る舞いや、下手くそな演技のエキストラばかり選ばれるおかしな状況、落ちぶれた俳優マーの変なマネージャー、モンが受けるいじめなど、随所に独自のユーモアが散りばめられていて、そういった場面は惹きつけられる。

しかし、逆に言えば、その部分しか、楽しめる所がないと言っていい。

全体を通して見ると、なんと薄い話なのか。

本当にチャウ・シンチーが監督したのか、と一瞬疑ってしまった。

ありきたりなストーリーで、内容にも深みがない

色んな映画で見たような、なんともありきたりなストーリー。

しかし、内容に深みがあればそんなことは関係ないが、モンが上り詰めていく様が薄くしか描かれていないので、心動かされない。

この程度なら、「ラ・ラ・ランド」の方が色々思わされるし、「ブラックスワン」の足元にも及ばない。

なぜこの作品を監督は作ろうと思ったのか?

映画を何も見ていないのか?

自分が見たチャウ・シンチーの作品は、決してこんなことにはなっていなかった。

他の作品にはない、独自のストーリー展開に心奪われていたが、この作品には、そのチャウ・シンチー独特のオリジナリティあるストーリーというものが入っていない。

モンがオーディションで選ばれ、それがきっかけでスターになった、ということだが、あの程度の演技で、なぜスターになれる?

あそこで、本当に見ているこっちをアッと思わせるような演技を披露しなければ、このありふれたこのストーリーは最低限成立しない。

それを、ただ詐欺をした男、詐欺をされた自分の気持ちを普通にやってみただけで、見ていて何もすごいと思わない。

本当に見る目がある審査員なら、ふーん、ああそう、という感じだと思う。

それも回想を交えてコメディタッチに仕上げ、実際のオーディションの、モンが審査員の前で演技をしている描写は省くという、せこい手法で乗りきっている所も非常に引っかかる。

スタニスラフスキーの「俳優修業」という本を持って歩いているモンだが、モンは決して演技が良いわけではない。

エキストラの中に、演技のことを日頃から研究していて、実際に演技も独特で、顔は普通だが本物の俳優が混じっている、それがモンだった、という訳ではなく、モンは、言ってみれば演技が好きだと思っている、俳優に憧れている演技が普通な素人でしかなかった。

俳優を夢見ていた人の多くが、若い時にはそうであったように、演技演技と言っているだけで、俳優を目指している自分のことが好きなだけで、実際大した実力はない、という典型的なフワフワした夢見る若者ではないかと思う。

なぜモンをこういう人物にしたのか、分からない。

そうではなく、モンは、本当に誰かを圧倒するような演技が出来る、そういったフワフワした若者達や、適当に稼いでいるエキストラとは違う、という片鱗が見たかったのに、一切なかった。

モンを演じた俳優に、わざとフワフワした若者を演じさせていて、オーディションで本気を出させて圧倒するなら、つらい経験を経て何かが覚醒したと思えるし、もしくは最初からそういった演技が出来るという片鱗が散りばめられていて、オーディションでは容姿ではなく、演技が正当に評価された、というのなら良かったが、そのどちらでもない。

ただの、俳優に憧れている、演技が良いわけでもない普通の若者が、辞めずに頑張っていたらたまたま売れた、というだけの話になってしまっている。

もし、モンを演じている俳優が、あれしかできなく、深い演技が出来ないのであれば、そもそも起用してはいけないし、そこが出来るかどうかすら分からなかったのであれば、そもそも作る目的が分からない。

そういった肝になる部分が完全にすかされているので、チャウ・シンチー独自のユーモアがいくら散りばめられていようと、全体を見るとなんだかなあという感じになる。

これは、昔チャウ・シンチーが作った作品のリメイクらしいが、だからあまり変えられなかった、ということか?

そんなことは関係ない、自分のリメイクだろうと何だろうと、チャウ・シンチーなら、良い物に昇華させられるはずだろう。

チャウ・シンチー、どうしてしまったんだろうか?

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