映画「アンコール!!(2013)」が“つまらない”理由と考察、その感想

⑤つまらない☆1

アンコール!! 英題:Song for Marion

監督-ポール・アンドリュー・ウィリアムズ 2013年 94分

脚本-ポール・アンドリュー・ウィリアムズ

出演-テレンス・スタンプ、ヴァネッサ・レッドグレイブ、ジェマ・アータートン、他

映画「アンコール!!」のあらすじ

頑固な性格のアーサーは、がんとの闘病を続けながらも合唱サークルに参加している妻マリオンと、ささやかながらも愛情に溢れた日々を送っていた。

アーサーは、闘病中にもかかわらずサークルに行く妻を日々心配しながらも、送り迎えは欠かさない。

口には出さないが、マリオンを何よりも大事に思うアーサーと、そんなアーサーに素直に愛情を注ぎ続けるマリオン。

しかしとある日、病院の検査で、マリオンの余命がいくばくも無いことが分かってしまう。

マリオンが所属する年配者ばかりの合唱サークルは「年金ズ」と命名され、屋外コンサート開くことになり、マリオンも力を振り絞り、ソロパートでアーサーへの気持ちを歌に込めた。

コンサートは大成功、それを見に来ていたコンクールの主催者からオファーがあり、「年金ズ」はコンクールに出場することになる。

しかし、その矢先マリオンは旅立ってしまうのだった。

“つまらない☆1”理由と考察、その感想

老夫婦の愛

コメディ要素も入っていて、老人達の奮闘ぶりが微笑ましい。

何よりも、テレンスとヴァネッサの演じる夫婦の姿が心に残る。

テレンス演じるアーサーはマリオンにだけは心を開いている。

マリオンはアーサーの頑固な性格や、周りから曲者扱いされていることを知りながらも、包み込んでアーサーを愛している。

そんな二人の関係に深みを感じる。

マリオンが病院で検査結果を宣告されたあと、ベッドで二人がより添う姿は、こみ上げるものがある。

テレンスの、頑固だけれど決して浅い訳じゃない、マリオンへ静かに愛情を向ける演じ方は重厚でいい。

それに答えるヴァネッサの姿もいい。

老役者ならではの味わい深さと自然さだと思う。

マリオンが亡くなるまでの前半部分で、非常に心揺さぶられた。

もったいない後半

後半部は何か前半とつながっていない感じがして、もったいない気がした。

アーサーが別の人格になってしまっているような印象を受けた。

アーサーがサークルに参加するが、気持ちの移り変わりがいまいちよく分からない。

気持ちが弱まってサークルに入っている感じがして、それは前半部分のアーサーの重厚な人格とは相いれないものだ。

自分の大事な人が亡くなったのだから、弱まるのは普通かもしれないが、少なくとも前半のアーサーはただの頑固なおじいさんではなかった。

テレンスが重厚すぎたからか、そのギャップに違和感を感じた。

前半のアーサーがサークルに入るのであれば、考え抜いた末、弱さを見せない感じで「みんなのためじゃない、俺はマリオンのために入る」と強い顔で入るのが自然だと思う。

そうでなければ、せっかくの今までのアーサーの重厚な描き方がどこかに行ってしまう。

前半でももっと弱々しく、息子とのやり取りでも戸惑ったりする部分があればまだ分かるが、そんなことはなく堂々としていたのに。

前半で少なからず超人のような弱さを見せないおじいさんだったのに、急に普通の人になってしまっている。

息子との確執なんてあったか?

息子との確執という事実が急に出てくる。

今まで息子とのやり取りも比較的普通で、そんなところはほとんど感じられなかったのに。

前半での息子との喧嘩も伝達の行き違いが原因だったはずだ。

その事実が出てから、確執があるやり取りも後付でつけられている感じがあり、息子も急に態度が変わったように見える。

前半でマリオンとの生活に重きを置きすぎたからなのか分からないが、そこらへんの描き方が足りなかったように感じる。

なので、息子に自分は良く思われていないから、自分がマリオンのために歌っている姿を息子に見せたい、というアーサーの発言もピンとこない。

マリオンがアーサーのために歌を歌ったお返しに、アーサーも勇気を振り絞って歌を披露する最後のシーン自体はとても感動的ではあるが・・・。

前半と後半では別物の映画と思った方がいいかもしれない。

序盤で心惹かれただけに、もったいない感じがしてならない。

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