映画「パラサイト 半地下の家族(2019)」が“物足りない”理由と考察、その感想

④物足りない☆2

英題:Parasite

監督-ポン・ジュノ 2019年 132分

脚本-ポン・ジュノ、ハン・ジンウォン

出演-ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、他

映画「パラサイト 半地下の家族」のあらすじ

半地下のアパートに住むキム一家は、仕事にありつけず、宅配ピザの箱を組み立てるなどの内職でその日暮らしをしていた。

ある日、長男で浪人生のギウは、大学生の友人から、高級住宅地にある裕福なパク家の家庭教師になることを頼まれる。

入学証書を偽造して高校生の家庭教師の職にありついたギウは、その家の下の子が美術教師を探していることを知り、美大を目指す浪人生の妹ギジョンを、信用の出来る知り合いの先生として紹介し、妹も家庭教師になることに成功する。

続いて、あの手この手の裏工作で、パク家で働く者を次々クビにさせ、ついにその家の運転手に父のギテクが、家政婦に母のチュンスクが雇われることになり、お互いに身分を隠したまま、キム一家全員がパク家に就職することに成功する。

生活に困らなくなったキム一家だったが、クビになった元家政婦が現れ、この家にある秘密を告げるのだった。

“物足りない”理由と考察、その感想

序盤は引き込まれた

半地下の家族が、裕福な家で働くために計画を立て、次々と成功していく序盤の感じはワクワクして、引き込まれた。

コメディではあるが、無理に笑わせようとしている訳ではなく、演技もナチュラルなので、悪くない。

母、息子、娘、と、非常にナチュラルであり、こんな家族居るんだろうな、と思わせてくれる。

たいそうな音楽に合わせてスローモーションになっている所など、特に違和感なく、心地よく見ていられる。

韓国の役者は、この作品に限らず、はっきりと感情を表に出せているので、日本人にあるようなあざとさをほとんど感じず、非常に見やすい。

日本人は、これを真似して似たような作品を作らないでほしい、きっと無理だから。

しかし、中盤くらいからラストシーンまで、見やすいものの、なんだかなあという感じだった。

この家族に魅力が欲しかった

この家族は、一体何をしたいのか分からないし、統一感もないし、魅力的な人物が一人も出てこない。

うまく金持ち家族の家に入り込めるスマートさがあるはずなのに、土砂降りなら金持ち家族はキャンプ中止して帰ってくるだろうくらい簡単に予想が付きそうなのに、ダラダラしていてピンチに陥ったり、もう少しうまく描けないものか?

天気予報で晴れなのに、急に土砂降りになったという事にして欲しかった。

以前から先に地下で暮らしていた男性とその妻にきつくあたるような不人情さも、本当にそんな態度とるか?

自分たちも貧しい暮らしをしているのに、心まで貧しいとしたら、そりゃ良い暮らしは出来ないのは当たり前だと思ってしまう。

自分達も金持ちになったと勘違いしているのかもしれないが、それならそれで、最後まで非道な家族を演じて欲しかった。

むしろ、そこは助けて一緒に暮らす方がむしろ自然なんじゃないかと思う。

最後に父が娘の手当をほっぽりだして金持ちの主人を刺しに行った所も、そんなことするか?

臭いと思って我々貧しい人間をなめた、という気持ちだとしても、死にそうな娘を前に、そんなことはどうでも良いと思わないか?

父がまるで貧しい人間を代表したかのような、悦に入った終わり方がなんとも鼻につく。

今まで先に暮らしていた二人に対しても、なんの敬意も払っていなかったくせに、ヒーローぶっているというか、筋が通っていない。

ポン・ジュノの作品って、描き方自体は迫力があったり、ダイナミックな展開があって悪くはないが、こういった机上の空論的な要素がチラホラ入っているのが、いつもすっと入ってこない。

ソン・ガンホはポン・ジュノ作品において、父を演じることが多いが、人情味がなく、暴力的であり、そのくせ格好つけるという、なんとも好きになれないキャラクターばかり演じている。

この作品ももれなくそうだ。

実はダメに見せかけて家族を陰で支えていた、とかではなく、そのままのダメおやじである。

そのままのダメおやじではない風に見せてくるのが、とても鼻につくが。

どっちが悪いのか、どっちも悪いのか、どう見せたいのか?

この家族のコンセプトが、はっきりと決まっていないんじゃないかと思った。

極悪非道で、自分と似たような貧しい人に対しても牙をむくの家族なのか、人情味があり、悪い金持ちを退治するために他の貧しい人達とも結束して闘う家族なのか、どっちかであったら良かったと思う。

どっちでも、今より面白くなったんじゃないかと思う。

どちらかというと前者だが、完全に非道でもないので、中途半端で振り切れていない。

そうしたいなら、最終的に負けてはいけなく、あの家を完全に乗っ取る所まで強い家族を描いて欲しかった。

そうして本当の金持ちになったら、新しく雇った家政婦が今度は自分たちを乗っ取ろうとしている、所で終わるとか。

もしくは、金持ちを悪にして、貧しい人達が次々とみんなで協力しながら乗っ取っていく、しまいにはその地区全てが乗っ取られた、とかでもいいだろう。

どっちでもないのがリアルだ、と言われればそんな気もしなくもないが、リアルに魅力がないのであれば、わざわざそれを選ぶ必要はない。

この話だと、完全に半地下に住む一家が悪い、ということになってしまうので、社会的に格差があることへのアンチテーゼというメッセージには全然なり得ていない。

ここに出てくる金持ちは、別に、人畜無害の金持ちとしてしか描かれていないので、むしろ普通の一般市民に近いと思う。

半地下の家族は、人格的にも、能力的にも優れている、ただ機会に恵まれていないだけ、という人達で、悪い金持ちの連中を能力で操っていく、ということだったら格好良かったのに、と思った。

余談だが、必要以上に、金持ちの夫婦がイチャイチャする描写が生々しいので、家族で見ている人はその部分は結構地獄だと思うので、注意が必要だ。

話しの流れ的に、この生々しさは必要か?と思った。

そういう雰囲気で十分伝わる流れなのに、こういうシーンを入れたいんだろうなと思う。

どっちかというと家族的で見れる的な映画なのに、こういう描写をしっかり入れてしまうあたりが、野蛮だなと思ってしまった。

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