今期は日本のドラマ豊作の兆し
私は基本的に日本のドラマというものに興味がないが、今やっているドラマは、珍しく気になって見てしまうものが多い。
日本のドラマもそこまで捨てたものじゃない、とちょっと思う。
なぜ見れてしまうのか、気になってしまうのか、考えてみたいと思う。
「ミステリという勿れ」
中盤まで見た感想
ミステリードラマであるが、刑事や探偵などが事件を解決するわけではなく、普通の大学生(全然普通ではない洞察力、思考力を持ってはいる)が、毎回ひょんなことから事件に出くわし、思ったことをさらっと口に出して、いつのまにか事件を解決してしまう、というストーリー。
これは、ひとえに菅田将暉の功績が大きい。
セリフを演じて言っている感じがせず、本当にそういうやつとしてそこにいる、自然な感じなので、見ようと思わなくても見てしまえる力を持っている。
例え周りの演者があざとくても、こういう主役の力が強ければ、まだ見れる、下手すれば周りを触発させて面白い作品になる、可能性もある。
今の所まだ全然見れるので、ここから菅田将暉の力で周りを巻き込んで、良いものにしていって欲しい。
というか、単純に面白いものが見たい。
普通ではないミステリーという設定も相まって、菅田将暉の独特の空気感とストーリーがマッチし、時にコミカルに、時にセンチメンタルに話が進んでいく感じは、今の所良い。
エンディングの音楽も非常に合っている。
一話完結でミステリーが解決していく所も、コストパフォーマンスが良いというか、飽きずに見れる。
わき役たちも、伊藤沙莉、筒井道隆、尾上松也など、あざとくない人達が固めているので、好感が持てる。
尾上松也は、半沢直樹の時の役は良かったが、このキャラクターにはまだはまってない感じがするが。
このレベルのドラマを、日本のドラマのデフォルトにして欲しいと思う。
半沢直樹ほどじゃなくてもいいから。
これであれば、俳優は立派に仕事をしている、むしろただで見れて嬉しいと思う。
漫画原作の日本のドラマって、ほぼとんでもなくうすら寒いものばかりだと思っているが、実際そうだったし、しかしこれは菅田の力か、そんなことはない良作になっている。
追記:最終話まで見終えて
面白かった。このドラマは面白かった、と久々に認定したい。
一話一話、ミステリーという要素だけでなく、罪を犯した人間にも感情移入させる、その切り口が中々グッと思わせる。
それは、単なるミステリーものではない秀逸なストーリーと、菅田将暉の足してないリアルな演技・反応がうまく絡み合い、そうさせるんだと思う。
病院での元刑事の牛田の回、別荘の橘の回、新幹線での手紙で謎を解く回、二重人格のライカの話が良かった。
最終話の風呂光の上司、備前の台詞で「助けを呼んで正解だ」とか、久能の先生の天達の「若いとは若いってこと、何も知らないってことだ」とか、所々セリフが良い。
セリフセリフにそういった哲学的な言葉が散りばめられていて、単なる哲学ではなく、人間味が感じられる知恵的なセリフ回しが、このドラマには随所に散りばめられていて、物語の人物描写に深みを与えている。
天達の奥さん、水川あさみ演じる美吉喜和も魅力的で良い。
これだったら、今の所ずっと見てみたい。
最後に流れるKing Gnuの曲も、なんともマッチしていて良い。
犬童我路と妹の話は、バッサリなくても良いとは思った。
あそこだけ、すごく浮いているというか、あれ以外の話が面白い。
犬童我路もその妹も、よくドラマで見る嘘くさい演出に飲まれているキャラクターで、どんな人間か分からないし、見ていて好きになれず、この話はどうなっていくんだ、とも思わせてくれないので、ない方が良い、もしくは演出を間違っているんじゃないのかと思う。
きっと原作は面白いのかもしれないが、このドラマでは、うんともすんともなっていない。
次のシリーズで何かが判明する、というのはあるかもしれないが、今までも結構出てるのに、犬童はパッとしない。
それでも、最後まで見ようと思わせてくれたこのドラマは貴重である。
ゲスト出演で、色々な人が代わる代わるちょろっとだけ出る、というこのスタイルは中々良いんじゃないかと思う。
あざとい人が多少なりともいても、場面が少ないからかなり紛れるので、見ていられる。
面白い、面白くないの天秤が、面白いの方に傾いた、私の中では珍しいドラマだった。
ゴシップ #彼女が知りたい本当の○○
ネットニュースを運営する、感情を表に出さない訳アリの女編集長が、世の中のゴシップに隠された真実を暴いていくドラマ。
編集長役の黒木華が良い。
わざと暗い感じの人間を演じている感じがないし、静かにしゃべるが言葉に力があり、聞いてしまう。
編集部関係者もナチュラルで、感情を出さない瀬古との対比が悪くない。
瀬古が良いので、周りも際立つということだが。
また、一話限りで出てくるトラブルメーカーたちは、結構わざとらしいが、それでも主人公の瀬古の感じがリアルなので、見ていられる。
常識に囚われない考え方をする瀬古が、黒木華によく合っているし、どうするのか、窮地をどういう風に解決しようとするのか、なども気になってしまう。
ストーリーが急展開になった時にかかる音楽が非常にダサいが、重要なシーンにピアノの少ない音で表現される音楽は非常に良い。
エキストラの適当な動きや、安っぽいセットの感じ、臨場感のないカメラの撮り方なども含め、日本のテレビ局ドラマ特有のチープな演出感は否めないが、それでも見ていられる。
これは、褒めている。
真犯人フラグ
中盤まで見た感想
母子行方不明の犯人とされてしまった夫を取り巻くサスペンスドラマ。
前回は全然見ていなかったが、今は見ている。
あざとい役者も多いけど、協力する二宮を演じる芳根京子、ぶっ飛んだ女性連中、菱田を演じる桜井ユキ、小幡を演じる香里奈、本木を演じる生駒里奈などが、本当にそういう人間に見えて良い。
菱田のずれている人間性とか、かなり良い。
中でも一番見てしまうのが、刑事の阿久津を演じる渋川清彦である。
私は彼を見るためにこのドラマを見ていると言っても過言ではない。
大袈裟でない、良い意味で抑えられたナチュラルな演技で、社交的ではないが一度疑ったら離さない、堅いけど正義を求める信頼出来るキャラクターが良い。
どっち?という個性的な口癖も魅力的だ。
演じてるように見えない。
サスペンスものに、こういう揺るぎないリアルな正義感がいなければ、悪も立たないし、スッキリしない。
たくさんの登場人物が現れ、たくさんの事件が起こり、状況は二転三転していく、そんな雑多な状況で、阿久津というスパイスが、ボヤけた味をはっきりとさせてくれている。
影の主役というか、ハリーポッターで言ったらスネイプのような感じか。
もし、阿久津が渋川清彦でなければ、確実に目が止まっていなかっただろう。
彼の功績は大きい。
ちなみに西島は西島、可も不可もなく、抜群の安定感。
ガツンともこないが、ガッカリもしない、何の役も出来る、現代日本ドラマの申し子である。
目が止まるとか、止まらないとか、そういう存在ではない。
今日もそこに西島がいる、ということだ。
だから、西島を見てもいいし、見なくても良い。
追記:最終話まで見終えて
そんなこんなで最終話を迎え、犯人も判明した。
主役じゃないからしょうがかもしれないけど、最終話に向けて、もうすこし阿久津をたくさん出してほしかった。
いや、出さなければならなかった、善側の筆頭株主なんだから。
犯人が判明したけど、何も感じなかった。
最初から全てちゃんと見ていた人は、ショックなのか?やられた、という感じになるのか?
こいつが犯人か、この野郎とも思えず、ふーんという感じになってしまった。
全然どんでん返しではない。
どんでん返しする、と言っている訳ではないけど、なんなんだこれはと思う。
これは、物語を面白くするなら、ミスキャストだと思う。
私は誰が犯人だろうとワクワクして予想して見ていた訳ではないから、演技度外視で犯人当てゲームをしていた人は、純粋に当たりはずれで一喜一憂して楽しんでいるのかもしれない。
そういう人はそれでいいだろう。
だけど、もし真犯人にするなら、芳根京子演じる二宮にすべきだった。
自分の身内、味方チームの中に真犯人がいる、とするなら、一番疑いのない演技が出来ている人を真犯人にすべきだ、なぜなら、そうでなければ落差がないから。
味方チームの、バーの店長日野、雑誌編集長の河村、相良の部下の二宮、IT会社の橘だったら、演技的に信頼度が高いのは、ぶっちぎりで二宮である。
これは、二宮の役がそういう役だから、信頼される度合いが高い、と言っているのではない。
謎解きとのつじつまは考慮せず、演技に関して、である。
日野も河村も、その役回りで、十分に見ている者を信頼させることは演技的に出来ると思う。
出来なければ、セリフを増やせばいい。
しかし、本作ではそれが出来ていない。
橘も二宮に次ぐ信頼度だが、もう犯人に操作されていたことが判明して、真犯人の容疑からは離脱したから、真犯人は河村、日野、二宮の三人になる。
これは、このドラマの脚本の筋書きをいかに秀逸に書くか、という作家・秋元康の闘いであると同時に、いかに自分を真犯人と思わせないか、という役者の闘いでもあると思う。
その闘いに、相良を取り巻く役者陣は失敗している。
日野も、河村も、二宮演じる芳根京子と同じレベルの信頼度の演技が出来ていれば、この三人の誰が真犯人でも驚くことになると思う。
言っちゃ悪いが、日野を演じる役者はただセリフを言っているだけ、河村演じる役者は相変わらずの演技的な演技なので、ナチュラルな芳根の二宮とは一線を画する。
芳根以外の二人も、芳根と同じレベルの演技をさせる必要がある。
そうでなければ、芳根以外の二人どっちが真犯人でも、拍子抜けで驚きはなくなる。
驚きがなければいけない、と言っている訳ではなくて、そうでなければ、ドラマとして面白いものにならない。
仮に、三人とも芳根に演じさせて、信頼度を見てみるとすると、バーの店長役の芳根はセリフが少ないから、見ている者を信頼させるに足りない、としたら、制作側に直訴してセリフを増やしてもらえばいい。
それは河村役も同様。
もしこのままのキャストで行くならば、日野はもっと存在感があり、セリフが少なくても信頼させるくらいのかなりの深みがなくてはいけない。
河村は、現状セリフが多くても薄くなってしまっているので、もっとおじさんの役者、もしくは出来る人をオーディションすればいい。
とにかく、味方チームの演技的信頼度が各々全員高いレベルにいれば、相当面白くなる。
逆にそうでなければ、面白くはなくなる。
それが出来たら、次はそのレベルの輪をもっと広げて、相良も含め全出演者が高いレベルになれば、全出演者の中で誰を真犯人にしても良い、となり、可能性は無限大になる。
本来、ミステリーってそこまでの役者の状態で、初めて入り組んだ脚本が生きてくると思う。
そうでなければ、原作の小説を読んで、頭の中で登場人物に理想的な演技をさせて楽しんでいる方がよほど面白いし、それを実写で超えることはまずない。
正直、私から見ると相良もそのレベルは高くない。
だから、現状では相良が真犯人だ、となっても、なんだかなあとなってしまい、相良を真犯人にするという大胆な可能性もなくなってしまう。
なぜ彼が昨今こんなにも重宝されているのか、私には毛頭分からない。
主役としては、私が見た中では、どの役でもいまいちずっと振り切れない。
滝藤賢一とか、堺雅人とか、ならそれが出来そうだし、見てみたいし、もしくは堤真一とかも出来なくもないかもしれない。
まず、主役選びから失敗している、と言える。
そして、このドラマの登場人物で、善側の人間と悪側の人間がいるが、悪側の人間、上記に書いたように板についた菱田、小幡、本木など強い悪側の人間に結果として引っ張られぱなしになった、という感がある。
信頼出来る善側が、二宮と阿久津くらいで、阿久津も後半登場シーンが少なく、全体として悪の演技に負けてしまっている。
悪と善では、悪の方が演じるのは簡単である、というはあるだろうが、その悪が捕まったり、真犯人ではない、となったら、もう善側に力がないから、ドラマとして面白くなくなってしまった。
本来は、相良の同級生二人がもっと強くなければいけなった、それが出来ないなら阿久津をもっと出し、味方チームに完全に加えてしまえば良かった。
謎解きを楽しむだけの人はこれでいいかもしれないが、私は物足りなさを感じ得ない。
ストーリーがいくら良くても、脚本が秀逸でも、ドラマの本質である基本の演技をもっと大事にしたドラマを日本の制作陣は作って欲しい。
謎解きを話題にしてSNSで盛り上げ、制作費を大幅に回収できたとしても、これはドラマの本流ではない。
最近の日本のドラマも役者も捨てたものじゃないとは思ってきているが、アメリカとか英語圏の役者が10人出演していたら10人出来ていることが、日本人は3~4人しか出来ていないから、こういうドラマをやった時に、露呈してしまうと思う。
だから、この脚本をそのままアメリカに売って、向こうの役者にやらせたら、相当の人気シリーズになると思う。
秋元康がどこまで関わっているのかは知らないが、ストーリーと合わせてキャスティングや演技もくっついてこなければ、世の中をひっくり返すことにはならない。
ストーリーだけでなく、そこも合わせてプロデュースして欲しいと願う。
カムカムエヴリバディ
朝ドラはしばらく見ていなかったが、深津絵里が気になって見てしまった。
主人公の10代の内気な感じとか、この秀逸だが自然に演じている女優は誰だ?と思い、まさか深津絵里じゃないだろうなと思ったら、深津絵里でびっくりした。
18歳の女性を演じていて、さほど違和感もなく、これはすごい。
これをやられてしまうと、本当の10代の女優は誰も太刀打ちできないと思うが、良いものは良いので、その役を深く演じられる人であれば、ベテランでも何でも遠慮する必要はないと思う。
日本人の女優って童顔の人が多いが、童顔の人はこういう起用の仕方があるとすれば、それは一つのアドバンテージになり得ると気付かされた。
深津絵里がすごい、ということかもしれないが。
彼女が主人公でなくなってからは、もうとんと興味を失ってまた見なくなってしまった。
おまけ DCU Deep Crime Unit~手錠を持ったダイバー~
DCUは見ていないし、気になってはいないが、その理由を余談として書きたいと思う。
このドラマが好きな人は見ないで下さい。
海上保安庁の水中事故のタフな捜査官達が、難事件を解決していくサスペンスドラマ。
主演の阿部寛は、どこかの番宣で、このドラマを鼻息荒く宣伝していたのを覚えている。
なんでも、ハリウッドのスタッフがバックアップしてくれているらしく、お金も結構かかっているらしい。
確かに、船に乗ったり、水中のシーンがあったり、そこそこお金はかかっているようだ。
しかし、よし、見ようという気になれないのは、まず芝居がくさいからである。
それを煽る壮大風な音楽、感動させようという演出も合わさってチープである。
熱い人間劇を描きたいのだろうが、熱い人間を演じようとしているだけで、ぐっと来るものが感じられない。
大声を出したり、泣いたりするのをただ見せれば良いというものではない。
本当に内から込み上げてくるものでなければ感動などしないが、役者陣からはそれは感じられない。
海上保安庁ってきっとこんな感じなんだろうで描かれた作品。
いくら架空の部署でも、もうちょっといそうな人物描写が出来ないものか。
憧れる非日常を提供しているわけでもない。
典型的な、つまらない日本のドラマのタイプのひとつ。
それぞれのキャラクターに魅力がなく、特に一番引っ掛かるのが、主人公のベテラン隊長である。
彼は、顔は渋いし、体も大きいし、一見深い人間に見えるが、見ていてそうは感じない。
平たく言えば、薄い。
うわべだけ深い雰囲気を持っているだけで、見ていて惹き付けられることはない。
阿部寛は、きっと表向きは頑固で曲者だけど、実は深い、という人間像を演じたいんだろうが、そうはなっていない。
肝心な主人公がこれなんだから、こりゃ見ていられない。
せめて主人公だけでも深ければ、周りも引っ張られる、もしくは周りがあざとくてもなんとかなる可能性があるのだが。
彼は、完全にこういう上司役に合っていない。
そこそこおじさんだろうが、まだ早いというか。
彼は、どちらかというと、適当なひょうひょうとしている無責任な感じの役があっている。
トリックとかドラゴン桜の感じは悪くないし、アメリカドラマのドクターハウスとかも良いんじゃないかと思う。
声を張り上げたり、武闘派のようなキャラクターは、彼に合っていない。
彼はきっとそういうのをやりたいんだろうけど。
怒鳴る感じも、ただ威圧感があるだけで薄い。
半沢直樹のような怒鳴りとは、深みが全然違う。
この新名役の演じ方なら悪役として出る方がまだ良い。
主役がまた別に必要になるが。
まあ、それもこれも阿部寛のせいじゃない。
役者にそうさせる方が悪い。
こういうドラマを面白いものとして日本人の大半が捉えていたとしたら、日本のドラマ界に未来はない。
日本に未来はあるとしても。
ハリウッドがバックアップしているからなんだ?
イーストウッドの硫黄島のように、ハリウッドとして十分お金を注ぎつつ、日本人俳優もそれなりに違和感なく演技させてしまうなら素晴らしいが。
ハリウッドに対する憧れなんて抱いているようでは、何も見えていない。
阿部寛が憧れていると言っている訳ではなく、そう思っている役者、関係者が少なからずいる気がして。
気持ちは分からなくはないが、日本という狭い場所で、最高の低予算ドラマを作れば、十分出し抜ける。
お金もない、演技も下手では、誰からも相手にされない。
半沢直樹は、間違いなくハリウッドより面白い。
あれもあれで、お金はかかっているだろうが、ハリウッドに比べたら全然安いだろう。
昔で言えば黒澤明の映画、これはお金がかかってはいるが、日本にしか作れない、かつ面白いものだろう。
日本にしかというか、黒澤明であるが。
DCUと関係ない話になってしまった。
いや、なさそうである話でもあるか。
でも最近、上述しているように、若い役者陣は、悪くない。
だから、そういう人達が頑張って、良い意味のガラパゴスドラマを作ってくれることを望む。
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