映画「マーターズ(2008)」が“物足りない”理由と考察、その感想

④物足りない☆2

英題:Martyrs

監督-パスカル・ロジェ 2008年 100分

脚本-パスカル・ロジェ

出演-ミレーヌ・ジャンパノイ、モルジャーナ・アラウィ、カトリーヌ・ベジャン、他

映画「マーターズ」のあらすじ

長年自分を監禁し、むごい虐待を続けてきた人間に復讐するため、リュシーは一人ショットガンを片手にその人物の暮らす家庭を襲撃し、家族もろとも皆殺しにしてしまう。

駆けつけた友人のアンナと成功を分かち合ったリュシーだったが、突如として襲ってくる幻覚に苦しみだし、リュシーは自ら命を絶ってしまう。

呆然とするアンナの元に黒い服を着た集団が現れ、訳も分からず拉致監禁され、今度はアンナが拷問される日々が始まる。

この組織は、リュシーを監禁していた人物の組織であり、拷問をするのにはある目的が隠されていた・・・。

“物足りない”理由と考察、その感想

後味の悪い終わり方

冒頭から中々引き込まれる展開で、悪くない。

自分にしたことへの復讐をするということで、この一見平穏な一家が、この女性に一体何をしたのかと思わされる。

そこから話は変わり、今度はその女性に連れ添っていただけの女性がひたすら拷問されるという展開になる。

ここまで長く拷問シーンを見せられた映画は他にないかもしれない。

まあ、嫌な気分になる。

別に悪いことをしたわけではないのに、目的もはっきりと明かされずに拷問され続ける。

そして、最後の結末がまたすっきりしない。

拷問をしていた組織は、拷問された人が稀にたどり着く精神的境地があり、その境地に行った人には死後の世界が見える、と信じている。

拷問された女性はどうやらその境地に行ったらしく、組織のボスがその女性に死後の世界があるのか聞くと、その女性から耳打ちされたあと、そのボスは自殺してしまう。

結局、死後の世界はなかったから自殺した、ということなのだが、それだけ?と思ってしまった。

ここまで残忍に拷問されるシーンを見せられて、この結末は割に合わないと思った。

死後の世界がないことに絶望してボスは、今まで自分がやってきたことはなんだったのか、と自殺したとしても、もっと絶望している感じが欲しかった。

あまりに死ぬ前に落ち着きすぎてないか?

もう、死後の世界には何もなかった、ということをすんなりと受け入れてしまっている感じだ。

受け入れているんなら、自殺などせずに余生を生きようとするはずなんじゃないのか?

それとも、死後の世界がないことを受け入れたが、単に投資家たちに合わす顔がないから、死後の世界がないと知りつつも、逃げるために自殺したのか?

もしそうだとしても、せこい死に方で、割に合わない。

死後の世界はとても良い世界だ、とアンナが嘘をつき、それをボスが発表して金持ち達がみんなうずうずして自殺しだし、自分も殺してくれと殺し合いに発展し、全員死んでしまう。

一方アンナは力尽きる前ににやっと笑って幕が下りる、とかならまだすっきりしたと思う。

もしくは、絶望したボスが投資家たちに銃を乱射するでも良いが、とにかく何か組織側にダメージらしいダメージがないまま終わるから、非常に後味が悪く、もやもやを残される。

良いもやもやじゃなくて、嫌なもやもや。

むしろ、一番見せたかったのは拷問のシーンなんじゃないかとすら思ってしまうから、そう考えると、ただの制作者側の異常性で、心に訴えかけてくるものはない。

根拠のない組織の言い分にすがる金持ち達

死後の世界というのは様々な考えがあるが、死後の世界なんてない、という考えもポピュラーであり、想像に難しくない。

誰もが死後の世界なんてないんじゃないかと頭をよぎるんじゃないか。

この組織のボスは一体何を求めて巨額の金を投資し続けたのだろう。

彼らが殉教者と呼んでいる瀕死の人達の顔の表情が恍惚の表情だったから?ただそれだけで裏付けもないのに?

そんなに気持ちよさそうな顔もしているとは思えなかったが、それだけで勝手に死後の世界にはきっと良いものがあると思い込んでいたのか?

そして、なぜ死後の世界が見えていると分かるのか?

今まで死後の世界を見て帰ってきた人がいたらもう殉教者を作る必要はなかった訳だから、今まで死後の世界を見て帰ってきた、という人は一人もいなかったということか?

それならなおさら、勝手に、死後の世界が見えている、死後の世界には良いことが待っている、とボスが思い込んでいる感じが、もう不自然でよく分からない。

めちゃくちゃな理論だが、死ぬのが怖いからそう思いたい、という願望だったのかもしれない。

こんなやわな理論でも金持ち達がお金を出してしまうというのは、どんな金持ちでも死ぬのが怖くてしょうがない、という皮肉かもしれない。

コメント