映画「ブンミおじさんの森(2010)」が“つまらない”理由と考察、その感想

⑤つまらない☆1

ブンミおじさんの森 英題: Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives

監督-アピチャートポン・ウィーラセータクン 114分 2010年

脚本-アピチャートポン・ウィーラセータクン

出演-タナパット・サーイセイマー、ジェンジラー・ポンバット、サックダー・ケアウブアディー、他

“つまらない☆1”理由と考察、その感想

パッケージとタイトルで惹かれた

名前は聞いたことがあり前から気になっていたこの作品。

目が赤い怪物のようなものが森の奥から覗いている感じが実に不気味で興味をそそられた。

しかし、実際見てみるとあまり中身のない作品に感じられ、特に中盤から後半にかけては意味が分からないが、さほど深みを感じるわけではない展開が続き、淡い期待を裏切られた。

不気味な序盤の雰囲気だったが・・・

死んだはずの妻が幽霊になって現れたり、行方不明になった息子が毛むくじゃらの猿人の様な姿で現れたり、序盤のそこら辺りは、のどかな自然を舞台に静かに時間が流れていく描写が逆に、不気味な気持ち悪さを際立たせていた。

夜の食卓を囲んで、妻の幽霊と怪物になった息子と会話をするシーンは実に不思議な雰囲気が漂っていて良い。

しかし、後半に物語が進むにつれ、昔の時代の王女とナマズが戯れたりするシーンや、ブンミが洞窟の奥に分け行って自分の死を迎えて未来を語ったり、甥っ子と叔母二人の分身が幽体離脱したかのように部屋に残っていたり、一見意味深に見えるシーンがたくさん出てくる。

前半のシーンも意味は分からないが、それなりに自然の神秘のようなものを勝手に感じられたからまだ良いが、中盤からの漠然とした描写は一気に見ていて退屈になる。

前半に漂っていた惹き付けられるような不気味な雰囲気が削ぎ落とされてしまった印象だ。

死や前世、輪廻などをテーマに哲学を盛り込むのは悪くないと思うが、それぞれのストーリー自体がぼんやりしていて、強烈なメッセージ性もなければ、深みも感じない。

王女は外見が醜い訳ではなく、心が醜かったわけで、決してかわいそうと同情されてしかるべき人柄ではない。

自分を愛して欲しいだけで自分から人を心から愛そうとはしなかった。

そんな王女がナマズに慰められた、だからなんだと思ってしまう。

そのナマズがブンミの前世ということだとしても、それをただ提示しただけだ。

それとブンミの未来の夢の映像は、なぜあんなにあからさまに適当に作ったような映像に仕上げたのだろう?

兵士は兵士にも見えないし、酷い世界の様にも見えない。

仮にきちんと仕上げからなんだということかもしれないが。

なぜ酷い未来を予言して息を引き取ったのか?

甥だって妹だってこれから生きていかねばならないのに。

登場人物の気持ちが分からない

特に登場人物達の感情や心理がほとんど平坦で起伏なく進んでいくので、意味深に見えるシーンがリアルに感じられなく、発想だけを淡々と見せられている様に感じた。

登場人物の気持ちの流れが全体を通して繋がっている訳ではなく、どう思っているのかというのもほとんど排除されている。

登場人物達が今まで経験したことのない不条理な現象を目の前にしても徹底して当たり前の様に振る舞うおかしな世界観でもなければ、かといって逆に全て否定に回るわけでもない。

最初はちょっと驚くが比較的すぐに受け入れ寄り添うという連続で、リアルに迫ってこない。

登場人物達は誰も深く考えようとしていないし、かといって自分の中でそれぞれ完全に理解し消化している様にも見えない描き方だ。

ただあまり考えない性格の人達という感じか。

不条理を目の前にした時にその人本来の人間らしさが出るものだと思うが、そこはほとんど描かれない。

その世界をどう理解しているのか、どう思っているのか、家族同士でお互いに対する思いはどうなのかなど、全編通してもほとんど何も分からない。

登場人物全員どんな人間か分からないまま終わる。

前世や霊魂や輪廻など、現象の提示が先行していて、人の気持ちは描かれていないに等しい。

そこらへんが中盤からがっさり抜け落ちている感じがして、途中から結構きつかった。

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