ドラマ「海に眠るダイヤモンド(2024)」が”物足りない”理由と考察、その感想

④物足りない☆2

海に眠るダイヤモンド 英題:The Sleeping Diamond on the Sea

テレビ局-TBS プロデューサー-新井順子、松本明子 企画-中井芳彦、後藤大希

演出-塚原あゆ子、福田亮介、林啓史、府川亮介

脚本-野木亜紀子 音楽-佐藤直紀

出演-神木隆之介、宮本信子、土屋太鳳、国村準、斎藤工、清水尋也、池田エライザ、杉咲花、中島朋子、沢村一樹、美保純、他

ドラマ「海に眠るダイヤモンド」のあらすじ

時は現代、ホストの玲央は、道端で知り合ったいづみという白髪の老婦人に気に入られ、半ば無理矢理長崎に旅行に連れて行かれる。

長崎で観光船に乗り、今ではもうすでに廃墟になった端島、世界遺産でもある通称軍艦島の前に来ると、いづみはなぜか泣き崩れてしまう。

一方、時代は変わり、1955年の春、大学を卒業した鉄平は、同級生の百合子と共に、生まれ故郷の端島に戻る。

鉄平は、端島で働くことを父親の一平に告げるが、激怒されてしまう。

鉄平には、端島で働きたいある理由があった。

そんな時、端島にリナという元歌手が入島し、ウェイターとして働き始めたが、端島の炭鉱会社の社長を怒らせてしまい、クビになってしまう。

それを知った鉄平はリナに、社長と闘うことを提案する。

炭鉱では、鉱夫の若者の一人が行方不明になってしまい、一平や鉄平の兄の進平達が、他の鉱夫と共に捜索を始めるのだった。

「第1話-地底の闇を切りひらく」が”物足りない☆2″理由と考察、その感想

軍艦島が舞台のヒューマンドラマ

TBSの日曜劇場、海に眠るダイヤモンドは、世界遺産にもなっている長崎の軍艦島、通称端島と呼ばれる炭鉱の町が舞台のヒューマンドラマである。

第一話を見た感想としては、物足りなく、まるで軍艦島が舞台の教育用のドラマのように感じた。

軍艦島とはなんとも不思議な小さな炭鉱の島で、その歴史の一端を知るには良い機会、なのか?

今のところ何となく知っていることばかりで、真新しさは特にないので、これからそう思わして欲しい。

なぜ物足りなかったのか考えていきたい。

それっぽいセットや冗長な音楽

高度経済成長の熱気のある時代に、軍艦島という小さな町の中で繰り広げられるドラマを描こうとしているのは好感が持てる。

この時代自体のエネルギッシュな人達、炭鉱で働く苛烈さや、距離が近い住人同士の人間ドラマ、端島が世間的には低く見られていたことへの住人の葛藤など、面白くなり得る要素は多分にある。

音楽も相まって、オールウェイズ三丁目の夕日のような、今は亡き、雑多だが味あり、玉石混交の人間味が凝縮された時代の雰囲気に思いを馳せたかったが、そこまでには至らなかった。

序盤から、端島が映る場面あたりから、壮大な良い雰囲気の音楽が頻繁にかかるのが、先走っている感じで邪魔で、うっとうしく感じた。

まるで良いものを観させられているかのような気分にさせたいのだろうが、多用し過ぎで、逆に薄く感じてしまう。

もう少し抑え気味に、要所要所で流せば良いのにもったいない。

現代のシーンで、おばあさんが家族と食卓でしゃべっている時にコミカル風な音楽がかかるが、こういうのは安っぽく感じる。

コミカルなやりとりにはコミカルな音楽を、という安易な演出は実に古臭いし、素直に冷めてしまう。

音楽を入れるタイミングが分からないないなら、無理に入れない方が良いのにと思う。

ちなみにラストでかかる曲はスタイリッシュで今風なので、全然世界観と合っておらず不自然に感じた。

そして、こういう歴史物は特にしょうがないのかもしれないが、セットは作り物感がしてしまう。

端島を上から見た俯瞰図などはまだ良いが、人がいる周りの建物や建物の中は、ほとんどがぱっと見でセットと感じてしまい、リアル感に欠ける。

ドラマ自体がしっかりしてないのに、セットだけやたらリアルでも、どこに力を入れているんだとなるから、もうこれはしょうがないのかもしれない。

演技とストーリーが合わさった、ドラマが主体で人に真実を感じさせるのが目的だから、イメージだけ何となくでも伝わればもう御の字、と言えなくもない。

理想はセットもドラマも重厚であるものを観たいが、リアルなセットはお金がかかりすぎるのか?

それこそゴジラ-1.0のように低予算で全部CGでリアルに、とか出来ないのか?

それはそれでセットを作るよりお金がかかるならしょうがない。

舞台も人間ドラマもどちらも重厚であれば、それこそ世界的にも評価されるドラマになるだろうが、まだかなり遠い印象だ。

リアルな雰囲気漂う玲央と爽やかな鉄平

主人公の玲央と鉄平を演じる神木隆之介の演技は、それぞれの役に味があり、総じてナチュラルで悪くない。

ホストの玲央は、演技をしているように見えない、セリフ感を削ぎ落としたリアルな雰囲気のしゃべり方で良い。

軽い感じで、その日暮らしをしている、他人に特に関心もないような若者風で良い。

ゴジラ-1.0での暗い演技も、このくらいストンと落としたナチュラルな演技でやって欲しかった

一方端島の鉄平は、逆に爽やかで人懐っこく、元気な感じに嘘でない華があり、軽さはあるが好感が持てる。

父親の一平にビンタされ、怒る演技は本当に怒っている感じには見えず、コントのようにあざとく感じてしまったが。

電車の中で、父や兄は毎日体を真っ黒にして働いているのに、なぜ踏みつけられるんだ、と泣きながらしゃべる感じも大分あざとかった。

なので、削ぎ落とした玲央の感じも良いし、爽やかで元気な時は他の俳優よりも素敵な存在感を出せるが、ネガティブな感情を表現するのは極めて苦手なんだろうと思う。

きっと普段から明るく、日常でネガティブな感情を出すことはほぼないタイプの人なのかもしれない。

そういう時こそ、玲央の様にストンと落ちた感じにしてしまえば、落ち込んだ、元気がない感じに見え、落差が感じられるのに、ネガティブな気持ちを出そう出そうとするのは、間違ったアプローチなんじゃないか?

全方位的にナチュラルに演じられる俳優など、ベテラン以外に日本ではほぼいないので、しょうがないのかもしれない。

それでも、このドラマの主軸である、明るい鉄平としては良い存在感があるので、まだ見ていられる。

鷹羽鉱業の社長に理不尽にクビにされ、島を出ようとしてした歌手のリナに、鉄平が、悔しくないか?人生変えたくないか?と問いかける感じも、言い方に前向きな深さがあり悪くない。

鉄平が端島に戻るきっかけの事件がよく分からない

鉄平は大学に行き、端島という地域の存在がいかに低く扱われているかを痛感したらしく、日本中に知れ渡るくらい端島を良くしたい、と父親に宣言した。

そのポジティブな姿勢は爽やかで良いが、そのきっかけの大学での事件に違和感を感じる。

鉄平や百合子達が電車の中で泣いていたが、なぜ泣いていたのかハッキリしない。

鉄平は、他の大学生に「そんな所から来る人もいるんだ」と言われ、百合子は、「あまり炭鉱の町出身って言わないほうが良いよ」と言われたらしいが、それだけ?と思ってしまう。

それで大学生二人がポロポロと泣くというのは、中身のないうわべの演技と言わざるを得ない。

脚本に、二人すすり泣く、と書いてあるからか?

こっちは何も涙腺を揺さぶられない。

小さい子供が言われたなら泣くのは分かるが。

前述した通り、鉄平の泣く演技はあざとい。

多くを語らずとも、つらい体験をしたんだ、とこっちに思わずほどの強い演技でもない。

それくらいの被害なら、むしろぷりぷりと3人で怒っている、くらいでちょうど良い。

賢将みたいな感じで、3人で怒りあって終わるのが自然で、泣くのは無理矢理に感じる。

むしろ鉄平は一人ひょうひょうとして、内心腹は立ってるけど、表に出さず、明るくしてる方が合ってるんじゃないか?

鉄平が、泣かないで爽やかに端島に戻ることを決めたなら分かるが、なぜ踏みつけられなければいけないんだ、と言っていた原因も明かされていない。

もしそれが、「そんな所から来る人もいるんだ」と言われただけでは弱すぎる。

端島出身ということが広まって、もっと酷い言葉でなじられ差別され、実際に不当な扱いを受け、大学も見て見ぬふりをしている、くらいの描写があれば鉄平のその言葉は腑に落ちるが、そうではない。

大学で3人が何をされたのか、ただ省略してるだけで今後描くつもりだとしても、ここで描かないとこの話が面白くならない。

本当は3人は酷い扱いを受けたけど、コンプライアンスが厳しくて具体的な差別描写は出せないなら、そもそも「〜と言われた」という告白自体全くなしにして、何も明かさずに演技だけで見せれば良い。

そうした上でも、二人がすぐにすすり泣く演技はゆるいので、すごく怒るやつやそれをなだめるやつもいて、3人で激しいケンカになってしまい、その後誰かが泣き出す、くらいしないといけない。

それなら、何があったんだ?と気になり、後半への伏線にはなり得ると思う。

というか、もし本当に端島の人達が差別されていたなら、それを隠さずに伝えるのが描く側の義務なのに、それをはしょって何が伝わるのかとも思う。

差別の酷さを伝えるための例は、決してコンプライアンス違反ではない。

でもきっとそんな裏事情はなく、単純にこれで成立している、と思って作ったんじゃないかと思う。

鉄平は大学に行き、炭鉱業に関わらなくても島の外でも働けるのに、端島を良くするために戻って来た、というのはこのドラマの大事なテーマなのに、そのきっかけがハッキリせず、もったいない。

リナの歌のシーンがイマイチ

鷹羽鉱業の社長にセクハラされた上に、仕事をクビにされる、という理不尽な扱いを受けたリナが、鉄平に促されて、その社長の前で歌を披露する、というシーンが終盤にあるが、物足りなかった。

これはこの一話の紛れもない見せ場でクライマックスにも関わらず、歌自体や歌い方に迫力がない。

歌がうますぎると、そんな人がなぜここに、となってしまうので、さほど上手くなくても良いから、魂の叫び的な迫力が欲しかった。

端島音頭、という歌自体、力を込めて歌うものではないのかもしれないが、ユリがこの時代に今までに感じてきた理不尽さや鬱屈した思いなど、ユリの気持ちを存分にぶつける事のできる良い機会だろう。

歌はプロのアフレコでもいいし、ユリも楽しそうにふんわり歌うのではなく、真剣に強く、気持ちを絞り出すような表情で歌って欲しかった。

なにはともあれ、こっちを魅了するほどの歌い方ではなく、社長を圧倒して頭を下げさせるほどのことはしていない。

せっかく良いシーンなのに、痛快ではなかった。

リナの通常の演じ方は、特にあざとくもないけど魅力的でもなく普通なので、このシーンが良ければ跳ね上がったが、そうはならなかった。

すこし謎めいたキレイな歌手というだけで、しゃべり方にも、立ち振る舞いにも、存在感はさほどない。

鉄平に直接、人生変えたくないか?と言われた人物で、リナは現代のいづみの若かりし頃かもしれず、重要なキーパーソンなのかもしれないが、人物描写が物足りなかった。

物足りない炭鉱ドラマ、暴力的な進平

端島での採掘作業は、気温35度、湿度80%という異常な環境下で行なわれ、粉塵で肺を患うものも多く、荒々しい男達の怒号も飛び交う、過酷な肉体労働だというのはよく分かった。

しかし、特に感動するドラマではなかった。

鉄平の父の一平が炭鉱のリーダー的存在であり、その振る舞いには重厚感があって良い。

一方、鉄平の兄の進平はどんな人間か分からず、良いスパイスにはなっていない。

というか、むしろ浮いているので、いなくても良いんじゃないか?

採掘が始まる前、荒くれ者の新人二人が一平に突っかかり、それを進平が止めて、みんなで歌を歌いだすシーンは、それっぽいだけでよく分からない変なシーンだった。

よくわからないけど魅力的でもなく、何を表現したいのか不明だった。

まず、一平が若者二人に、「お前ら山は初めてか?威勢の良いこった」と言っただけなのに、若者達が「なんやこら、やるのか」といきなり激昂する意味が分からない。

一平は特に嫌味な言い方をした訳でもないのに、これでつかみかかるのは無茶苦茶だ。

むしろ褒めているように捉えることも出来るので、こんな奴らはいないと思う。

若者が「威勢が取り柄やからな」と返して、一平が「その威勢が続くと良いが」と吐き捨てるように言った、とかなら分かるが。

それを止めに入った進平が、歌の一節を歌い出すが、誰に言っているのかよく分からず、格好つけている感じもして、訳が分からなかった。

止めに入った後、その若者二人に面と向かって怒りながらしゃべる感じで、その歌の歌詞を言い続け、周りも一緒になって大合宿とかなら面白かったが。

それならきっと、この歌の意味はなんだろう、下らない争いなんてしてる場合じゃない、とか、深い意味があるのかな?などと想像も駆り立てられた。

誰かが歌い始めたらみんなで大合唱になる、という、どこかで見たような、一致団結感を見せたかったのかもしれないが、唐突で上手く出来ていない。

みんな疲れていて、雰囲気が悪いのを鼓舞するため、進平が音頭を取って歌わせ、最初はみんなしょうがなく歌っているが、歌っている内に元気になった、とかなら分かる。

進平はムードメーカーで、みんなを元気にしてしまう華があり、ついついみんな歌わされてしまった、という訳でもない。

ただ歌を歌ったらみんなも歌った、というだけで中身がなく、特に感動もない。

感情をちゃんと出さない進平の立ち振る舞いも相まって、このシーンをより不可解にしている。

なのでこのシーンは、この若者二人と同様、ポカンとしてしまった。

後半でこの若者の片割れが行方不明になり、捜索するためのミーティングで、進平がその若者の連れに苦言を呈する場面も変だった。

進平が、もう死んでるかもしれない、などと言い、その連れが、なんやと、と言っただけなのに、進平は、おーいと声を上げて肘を若者の首に押し付け、お前をいつでも殺せる、的な脅しをするのは怖すぎる。

連れが死んでるかもしれない、と言われたら、なんだと、と言うのは特におかしなことではなく、暴力を振るうのが早すぎる。

進平はサイコパスか?全然格好良くはない。

なんやと、と言われ、進平が、なぜすぐに俺たちに言わなかったんだ、と返して、それでも、お前らのせいだ、などといちゃもんをつけてくるならまだ分かるが。

進平は他の鉱夫がトロッコから降りたのに、なぜか最後まで座っていてゆっくり降りる感じとかもよく分からない。

余裕があって格好良い、とかじゃなく、何を考えているのか分からず、格好つけている様にも見える。
助ける気ないのか?

最後に降りて、他の鉱夫が若者を探し出せないのを、進平が知恵を働かせてあっという間に見つけてしまう、とかならさすがだともなるが、そういう訳でもない。

若者の片割れには、脅しのような怖いことを言っていたが、いざとなると率先して助けようとするなら人間味もあるが。

結局、他の鉱夫が倒れている若者を見つけ、進平が水を飲ませたりして、助かったのを満面の笑みで喜んでいたが、助ける素振りがなかったのにそれは嬉しいのか、とよく分からなかった。

せめて、進平だけほくそ笑んでるとか、真顔のままくらいの方が合ってるんじゃないのか?

進平は普通の鉱夫と違っていつもひょうひょうとしている感じだが、それがいまひとつドラマに合っておらず、このキャラクター設定は失敗なんじゃないかと思う。

もしくは、鈴木亮平のような、素直に男臭い人間を演じられる役者の方が、兄貴感もあり良いんじゃないかと思う。

ひょうひょうとした奴を入れたいなら、キムタクとかの方が良い。

キムタクはしゃべり方は棒読みっぽいけど、兄貴感や熱い感じは進平よりある。

進平は統一感がなく、よく分からない。

そもそもセリフや台本に書いてある振る舞い自体がおかしいなら、それは俳優にとって不憫この上ないが、それを受け入れてしまっているので、セリフや台本だけが悪いとも言えない。

若者が助かった後、一平が若者の連れに静かに説教をしていたが、その説教が終わると、進平がその若者の尻を蹴ったシーンも浮いている。

確かに、怒られているやつをおちょくって、場を和ますパターンはある。

しかし、それは生死に関わらないミスの時、もしくは仲が良いというお互いの関係性が完全に出来ている時に限った遊びだと思う。

昨日今日入ってきた新人に、しかも相棒が死ぬかもしれない怖い思いをして、すいませんとちゃんと謝ってるやつに、蹴る振りではなく、普通に蹴りをいれるのは、ありそうでないし、どうかしている。

この新人は進平にキレても良いと思う。

進平は暴力は合ってないから、もうやらない方が良い。

この若者は、威勢が良いだけでとんでもなくムカつく悪いやつでもないのに、逆に進平が出すぎておかしいやつになっている。

そんなこんなで、一平の重厚感は良いのに、進平が絡んだシーンも不自然で、炭鉱夫達のドラマもいまいち面白くは感じれなかった。

進平抜きで、一平と鉱夫達だけの物語の方がまだ面白くなったんじゃないかと思う。

突き抜けない1話、2話の予告編は面白そうだった

一話を見て感じたのは、やりたいことは何となく分かるが、ほとんどそれっぽい止まりだということだ。

鉄平の明るさは主役として悪くないが、個々のドラマにガツンとくるものがなく、魂のやりとり的な、目を見張る描写もほぼない。

それっぽい、こんな人間ドラマきっとあるでしょ?的な、中身のない机上の空論のような描写が多かった。

昔見た映画やドラマの良かったシーンを真似したいのであれば、ちゃんと中身も伴った上で真似した方が良いんじゃないかと思う。

そもそも根本の脚本がうわべで、それを変えてはいけないんだとしたら、もうどう頑張っても面白くならない気もする。

頑張って現場で修正してこれなのか?

音楽やセットなどはもう安っぽくてもハリボテでも何でもいいから、せめて人間ドラマだけは重厚にして欲しい。

鉄平の明るさのおかげでまだ見ていられるが、全体としては物足りない。

鉄平といづみが今後どう関係してくるのか、気になるようで気にならない、気にならないようで気になるという感じで、何でもいいや、とも思う。

予告編の凝縮された感じは面白そうだったから、これから面白くなるのかも。

「第2話-スクエアダンス」が“物足りない☆2”理由と考察、その感想

少し味が出てきた人間ドラマ

第2話は人間ドラマ自体はちょっと面白かった。

主要キャラクターに大方魅力があり、ドラマが一話より深く感じられた。

この先の人間関係が少し気になり始めてしまった。

相変わらず舞台にセット感があり、演劇臭がして、頻繁に流れる音楽が少し耳障りだが、ドラマ自体は悪くない。

5角関係とも言うべき交錯する恋愛事情、水を券で毎日買わなきゃいけない端島の生活環境、命の危機すら感じる暴風雨にてんやわんやになる住人の様子、無料の映画に観客が熱狂する終盤のシーンなど、興味を惹かれるシーンがいくつかあった。

めちゃくちゃ面白い訳ではないが、味は少し出てき始めたので、この調子で端島のドラマを爽やかに展開していって欲しいと思う。

嫌な女の百合子が良い

人間ドラマが良かった理由として、主役キャラクターに魅力があった、というのは大きいと思う。

ホストの玲央は、いづみとソファに座ってしゃべっている時、三角関係とか?などと、イタズラっ気を出して言う感じなど、かわいらしく、相変わらず愛嬌があって良い。

鉄平、賢将、百合子、朝子、リナの入り組んだ恋愛の5角関係は、複雑だが、それぞれナチュラルな立ち振る舞いで、今後どうなるのか興味を惹かれた。

賢将は、昭和の男前という雰囲気の好青年で好感が持てるし、食堂の看板娘の朝子は、いつもナチュラルな振る舞いで、演技しているように見えなくて良い。

リナは、1話ではあまり魅力を感じなかったが、笑顔や仕草など、ナチュラルな感情表現が出ていて、それなりに魅力を感じられた。

端島で生きることを決意し、ここでの生活も少しは慣れてきた、ということか。

百合子と接する時に、急に歌を歌いだす感じなど、楽しそうな感じが伝わって来て、自然で悪くない。

主要メンバーの中で、特に2話の主役とも言える、百合子のキャラクターが良かった。

百合子はきっと普通の清純派のヒロインなんだろう、つまらないな、と勝手に決めつけていたが、自分で子供が嫌い、とか、私性格悪いの、などと言う感じが百合子に合っていて良かった。

美人で天真爛漫で、闇もなく清純である、というヒロイン的なキャラクターは、圧倒的なマンパワーがなければ嘘くさく、物足りなくなると思う。

しかし、百合子はそうではなく、腹黒く、家庭の事情で闇も抱えている、というのが良い。

自分で、性格が悪い、と言っている感じが、逆に魅力的に見える。

大学時代には、鉄平が自分を好きなことを知っていたから、自分を好きでない賢将と付き合った、というのも、百合子なりの恋愛哲学が感じられて良い。

賢将は朝子のことが明らかに好きだが、鉄平のことを好きだと知っているから、お土産をあげたり、外側の態度で示すことしか出来ない、もどかしい感じも良い。

ダンスの練習の時、朝子は鉄平と踊ることになり、朝子が、リナと踊れなくて残念だったね、と鉄平に裏腹なことを言う感じも、やきもきさせられる。

百合子は、賢将は好きな人には手も触れられないと言っていたから、賢将は、最初のダンスパートナーには朝子ではなくリナを選んだんだろう。

この5角関係、いや、リナを波から守った進平も加わった、6角関係がどうなっていくのか少し気になってしまった。

悪女の百合子に、かき乱しまくって欲しい。

振り切れない進平のキャラクター

若い鉱夫からすでに兄貴と慕われていた進平は、これと言って魅力を感じれなかった。

自分の部屋に来た鉄平を追い返す感じや、リナにゴミ捨て場で、海に幽霊が出る、という話をする時も、格好つけている感じで、薄く感じてしまった。

鉄平が進平の結婚写真を見た後、お願いがあると言い出すと、進平は眠くなったから帰れと鉄平に言ったが、自分に都合が悪い雰囲気を察知して先回りして言っている感じが弱く感じた。

鉄平にかぶせて、部屋なら譲らん、あいつは生きとる、と怒るとかならまだ分かるが、すねる子供のようだった。

リナに海の幽霊の話をする感じも、自作のポエムを聞かせて、悦に入っている様にも見える。

この一連の進平の感じは、奥さんに思いを馳せたり、普通の人には分からない苦しみを感じている、という深さは特に感じない。

闇を抱えているというより、単純に薄く見える。

いつもみんなの前では明るく振る舞っているけど、ゴミ捨て場では神妙な面持ちで海を見つめる、とかならギャップに魅力も感じるが。

明るくない雰囲気もあるが、ほとんどしゃべらない訳ではなく、寡黙な様で饒舌な時もあり、どんな人間かよく分からない。

特にしゃべらずとも、背中で語る感じが出来ないなら、この俳優の爽やかさを素直にもっと出した方が、むしろ奥さんを失ったという設定も相まって味が出ると思う。

暗くなく爽やかで魅力的な青年で、島の女性からモテモテで引く手あまただけど、一切誰とも付き合おうとしない、夜になったらゴミ捨て場で遠くを見ている、とかの方が演じやすいし、面白くなったと思う。

あんなに素敵なのに独り身なんてもったいない、まだ奥さんのことを引きづっているんだね、誰が彼の心を開くんだろう、などと島で噂されている、くらいの、アイドル的な描写があっても良い。

そんな進平の心をついにリナがこじあけるのかいなか、という展開だったら面白かったが、そうではない。

顔は格好良いけど、今のところ島の女性みんながとりこになるほどの素敵な人物ではないし、若い鉱夫達には兄貴と言われていたが、兄貴感もない。

この中途半端な状態で仮にリナと、もしくは他の誰かと恋に落ちようが、ヌルっとしていてあまり感動がなさそうだ。

これから進平はどうなっていくのか?

物足りない嵐のシーン

嵐が端島にやってきて、住民がてんやわんやになるシーンは、アクション的に迫力が足らず、物足りなかった。

送電線は次々と切断されて停電になり、トイレの水が逆流したり、水の配給もなくなり、一階の住居は浸水し、長屋は波で流される前に住民が映画館に避難する、という一大事だが、そこまで緊迫感は感じなかった。

住人の誰かが命の危機にさらされる、という明確な映像描写は特にない。

映画館の館長の大森くらいか?

長屋が丸ごと流された、というのは説明だけだし、鉄平が長屋の住人を避難させて、そのすぐ後に長屋が波でなくなった、という一連の映像があっても良かったんじゃないか?

長屋ってどこのことか分からないけど、映画館にいた人達は結構多かったから、比較的大きな住居なんだろう。

食堂の朝子は、店主に、道が川になっとる、と言っていたが、地面は浸水している訳ではなく、大雨で少し水たまりが出来ているだけだった。

その後も道が浸水したわけでもなく、詰所の前の地面はただ濡れているだけだったのに、食堂内はなぜか激しく浸水し、みんなでパン焼き機を外に運び出していた。

食堂は坂の一番下にあるから、水が貯まるのか?

でも朝子が助けを呼びに行こうと店の外に出ると、道はただ濡れているだけだった。

そのくらいなら、積んでいた土のうで防げそうだし、もしそれでもダメなら、別に嵐じゃなくても普通の雨で浸水するはずだ。

あの大量の水は一体どっから来たんだろう?

20センチくらいでもいいから、本当に道を浸水させてしまえば分かりやすいのに、それは単純にお金がかかりすぎるのか?

食堂から流れ出た缶を、食堂の店主の子供が外まで追いかけ、それをリナが見つけて保護するが、外は風は少し強いが特に洪水でもないので、何が危ないのかもいまいちよく分からず、良かった、ともなりづらい。

もう少しヒヤヒヤさせて欲しかった。

子供が海岸のゴミ捨て場に突っ込んでいくなら怖いけど、そうではない。

そして、食堂が坂の下の地面よりさらに一段低い場所にあるとしたら、その食堂の中の水に浮いていた缶が、一体どうやって食堂よりも上の位置にある、あの濡れた地面の上に流れ着いたのか?

水が上に登るのは物理法則を無視しているし、勝手に外に出るなら水をかき出す必要もなく放っとけば良い。

どっかの穴から奇跡的に缶だけ水に押されて外に出て、後は風で転がったとかか?

もし、つじつまが合う構造が仮にあったとしても、これだけ分かりづらく描いてはダメだと思う。

さらに、リナは海岸沿いのゴミ捨て場に近づき、大きな波が壁を超えて襲ってきた所を、進平が身を挺して守ったが、これも何が危なかったんだ?

進平が行かなくても、リナは波を浴びただけだろう。

地面が完全に洪水になっており、ゴミ捨て場のドアも波で外れていて、大きな引き波によってリナが連れて行かれる所を進平が何とか抑えた、とかなら格好良かったのに。

武蔵のフィルムは小さい隙間らしき所に吸い込まれ、また戻ってきたが、その隙間にリナは吸い込まれる所だったのか?

リナと隙間とは少し距離があったし、地面は浸水してないので、そこまで危なくもないんじゃないのか?

それ以上行ったら危ないぞ、とリナに警告する必要はあるし、映画館の館長の大森は、放っといたら隙間に入って行きそうだから、大森を止めるのは分かるが。

波は高さはあったけど、大した量が入ってくるわけでもなく、フェイクの波だった。

二人して波をかぶっただけで、それを進平が身を挺して守った風になり、進平とリナが見つめ合う、というのは何ともこっ恥ずかしい。

二人共、何かと理由をつけて恋に落ちようとしている根っからの恋愛体質なのかもしれない。

嵐と言っても、土砂降りに加え風は少しあっても、詰所前の地面は濡れているだけ、長屋が流されたのは描かれていないし、店主の子供もリナも、危ない大分手前で保護されていて、ハラハラ感がちょっとしか煽られないで終わってしまった。

アクション的に描くなら、CGを使っても良いからしっかり描いて欲しいし、予算がない中でこれが限界なら、もう少し工夫は出来たんじゃないのか?

リナが行方不明になり、水浸しになったリナを進平が抱えて戻り、ゴミ捨て場で流される所だった、と言葉で説明するだけなら、あの中途半端な大波を見せる必要もなかっただろう。

長屋のシーンは省いたのに、このゴミ捨て場のシーンはどうしても水を使って描きたかったのか

せっかくここまで描くなら、もう少し頑張って欲しかった。

嵐ってきっとこんな感じなんだろう、といううわべの感じがして、少しゆるかった。

これら一連のアクションシーンが見応えのあるものならば、2話は大分面白くなったと思う。

興味深い端島の生活環境

端島では水が配給制で、住む場所も時々入れ替えるが、場所が限られているので振り分けがパズルのように難しく、一人部屋より二人部屋、低い部屋より高い部屋が人気である、などという、端島独特の生活環境の描写は面白い。

長い水道管を作って水を送る計画があったが技術的に先送りせざるを得なかったり、嵐で送電線が切れて、長屋も流され、てんやわんやになる感じなどもドラマチックでいい。

前述した通り、アクションは物足りなかったが、軍艦島という存在は何となくは知っていても、知らなかった詳細がちょこちょこ出てきて興味深い。

この端島という小さな世界に愛着が湧いてきているのは否めない。

なので、実際に勉強するよりも分かりやすいドラマという形式で、文化的な歴史を伝えつつ、人間ドラマも頑張って欲しい。

ちなみに、一平が寝坊し、水の配給をもらい忘れた所を奥さんに見つかり、逃げ出した一平を奥さんが追いかけて人の家の中で鬼ごっこになる、というコミカルな描写があるが、あまり面白くなかった。

まず奥さんが一平を見るなり、水をもらえなかったことを見抜いて、お父さん、お水は?といきなり怒鳴る感じがもうよく分からない。

同じ様な前科が何回もあったのか?

ずっと寝っぱなしの一平の前に来て同じことを言うなら分かるが。

お父さんお水ありがとね、とか言って奥さんは一平に近づき、いやいや別にいいんだ、などと言いながら、一平は桶を見られないように後ろに隠すとかの方が良かった。

奥さんはその挙動不審さに気づき、お父さんお水もらえたよね?と言って桶を覗こうとしたら一平は桶を隠し、なんで隠すの、と言って一平の体を動かそうとしたら、一平が、こぼれるこぼれる、と怒って言うとか、いくらでも出来たと思う。

奥さんが一平をいきなり怒鳴り、一平は違うんだ、と言いながら逃げ出して奥さんと追いかけっこになる、というのは、ありそうでない、リアルでないコミカルさだと思う。

奥さんがいつも鉄拳制裁を必ずする人なら逃げるのは分かるが。

本当にやっているとしたら、むしろ周りを笑わすためにおどけている様な行動で、自然な成り行きじゃない。

お魚くわえたどら猫を追いかけ回す、サザエさん的な昭和な描写にしたかったのか?

猫がサザエさんから逃げるのは分かるが、一平はこの島の長的な存在で、プライドもあるだろうし、いきなり逃げるのではなく、取り繕うんじゃないかと思う。

確かに人情に厚く、困った人を放っておけない親分肌の反面、飲んだくれで適当な親父、というのはあるだろうが、このシーンの一平は似合っていない行動をしていた。

一平が子供ならまだ分かるけど。

映画館の館長の、映画狂とも言える大森は味があって良い。

命よりも映画、という感じがコミカルで悪くない。

終盤の、嵐が去った後の無料映画館で住民が熱狂する感じなども、良い昭和感があって味がある。

ラストにかかる音楽はこの世界観と合っていないと言ったが、サビの後のエネルギッシュなコーラスの感じだけは、このドラマと合っている。

そこを引き伸ばして前半部分をカットして、このドラマ用に変えてしまえば良いんじゃないかと思う。

タイアップした曲を必ず全部使う、という常識にとらわれる必要もないだろう。

どうにかして面白いものを頑張って作ってほしい。

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