ドラマ「キャスター(2025)」が”つまらない”理由と考察、その感想

⑤つまらない☆1

キャスター

テレビ局-TBS プロデュース– 伊與田英徳、関川友理、佐久間晃嗣

脚本-槌谷健、及川真実、李正美、谷碧仁、守口悠介、北浦勝大

演出– 加藤亜季子、金井紘  音楽-木村秀彬

出演– 阿部寛、永野芽郁、高橋英樹、宮澤エマ、岡部たかし、音尾琢真、道枝駿佑、キム・ムジュン、北大路欣也、他

ドラマ「キャスター」のあらすじ

破天荒で型破りなキャスター、進藤壮一は、報道に力を入れる民放テレビ局、JBNの看板報道番組「ニュースゲート」の新キャスターに就任する。

初日から、カンペは読まない、原稿を急に差し替える、ギリギリにスタジオ入りするなど、独自のルールで番組スタッフを翻弄する進藤。

そんな中、急遽官房長官の出演がキャンセルされるが、進藤は、スクープ記事の差し止めを条件に出演を承諾させる。

ところが、進藤の目の前で倒れた官房長官は、救急で病院に運ばれることになり、向かった病院は、なぜか主治医のいる病院とは違う大学病院だった。

官房長官が倒れ、病院に運ばれる様子をいち早くスクープした進藤だったが、それに飽き足らず、病院を変更した背景を探っていくと、その裏に大きな闇が隠されていることを見つけてしまうのだった。

「第1話-毒を毒で制す男」が”つまらない☆1″理由と考察、その感想

足で情報を稼ぐ破天荒キャスターのニュース番組ドラマ

破天荒なキャスターが主人公のニュース番組作成ドラマ。

普通のメディアが報道しないスクープを、忖度無しに報道していくニュース番組らしい。

進藤キャスターは、スクープのためなら、違法ギリギリの大胆なやり方もいとわず、足を使って情報を集めている感じが好感を持てる。

本当は、テレビ番組のキャスターってこうあるべきだろう。

自分で取材せずに、人から得た情報を言うだけなのは、ただのアナウンサーとも言える。

その人に他の人には言えない独特の切り口や解釈がない限り。

一見普通の官房長官の入院のニュースかと思いきや、それが子供と官房長官の命が天秤にかけられていた事にまで繋がっていくのは面白い。

しかし、今ひとつ主人公に魅力を見つけられず、面白くは感じなかった。

なぜなのか考えていきたい。

滑舌が悪いだけでなく、中身のない進藤

主人公の進藤は、外見は格好良いけど、あまり深みがない。

キャスターのクセに滑舌が悪く、所々何を言っているのか聞き取れず、イラッとさせられるのは、もう論外かもしれない。

それが、逆にリアルで、滑舌が悪いけど味があって、という訳では全く無く、ただゴニョゴニョ言っているだけで耳障りである、という感じが多い。

何を言っているのか分からない、分かったところで迫力もないまくし立ては、相手をほとんど聞く気にさせず、こいつ弱い、おバカさんなんだ、と相手に思わせてしまうので、やってはいけない。

ビヴァンの時にも言ったが、こんなに滑舌が悪いのに直そうとしないのは、これも含め自分の味だと思っているからだろう。

味でも何でもない、ただの凡ミスをずっとやっているだけだ。

自分のことを勝新太郎だとでも思ってるのか?

普通は、こんな自分の映像を見たら一発で気づくはずだ。

というか、見なくても感覚があるはずなのに、ないならそれは俳優としてどうなんだ?

これで伝わるだろう、こんなもんで良いだろう、という感じの精神が、しゃべるということを舐めている感じがして腹が立つ。

監督が何も注意しないのは、ゴマすりながら撮影してるからか?

はい、もう一回、と言えるまで撮り続ければ良いだけだ。

むしろその方が、この役者も怒りが出てきて、見応えのある役になるんじゃないのか?

俳優にダメな意味で楽をさせているだけで、それが功を奏しているわけでもない。

誰も注意しないから、裸の王様にさせられたこの俳優は可哀想だ。

滑舌の悪さだけでなく、この俳優はセリフが変わっているだけで、基本全部同じ演じ方しか出来ない。

本当はそんなことないはずなのに、最近は、このリアルでなく強くもない、声を低くし、置きにいったセリフ回しばかりで、どんな人間か見えない人格をずっと演じている。

低い声と外見は確かに格好良い、しかし、いつも見かけ倒しだ。

なぜなら、そのセリフ回しや言い方に、本当に社会や他者に対する怒り、正義感というものが、大して込められてないからだ。

本当に怒っていたら、もっと伝わってくる。

明らかに感情が動いていないまま、この人はセリフを言い過ぎている。

それでも良しとされてしまっているので、本人も変える動機がない。

例えば、崎久保が、見ている人に笑顔になってもらいたいからJBLに入ったんです、というと進藤は高笑いして、じゃあ今すぐバラエティに戻ることをお勧めします、と言ったのが、効果的でない嫌味で物足りない。

わざわざ笑ったのに、時間を使って何を言うかと思えば中身がなく、敬語も効果的でなく、なぜバラエティに戻るのか理由を言わないし、強い感情でもないから薄い。

そのバラエティの基礎となる情報集めは報道がやってる、つまりバラエティは報道の枝葉でしかない、良いとこどりして楽しいか?とか、もっと踏み込んだことを言うべきだ。

崎久保が担当した病気の子供の母親にインタビューに行った帰り、裏取りをする、と言った進藤に崎久保が、どうしてそこまでするんですか?と怒るが、進藤がゆっくり振り返って、なんでそんなに怒ってるんだ、というのも薄い。

わざわざ溜めたのに、言うことは普通で拍子抜けだ。

これも、セリフは普通だが独特な感情で見てしまう、訳でもない。

ただ言っているだけだ。

セリフも、悪者を身動き出来なくさせるために決まってるだろ、バラエティ感覚捨てろ、とか、もう一つ進んだ内容を言うべきだ。

そしてそのセリフを言う時に、本当に思っている感がなければ、それもまた薄くなる。

進藤は、中身のないセリフを、強い独特な感情で言う訳ではなく、さらっとなぞるだけなので、より薄くなる。

そのセリフが薄いならより強く、濃いなら少し弱めに、あえて濃いものに強さをたして油っこくするとか、そんな判断も何もせず、全部同じ言い方をする。

そりゃ薄くなる。

そのセリフの一つ一つの質自体を判断出来ない、というのは役者にとって致命的だ。

彼なりにやっているつもりだろうが、トンチンカンだ。

序盤で進藤が崎久保と電話で話している時、雨が降ってる、降ってない、という意見があったらどうする?と崎久保に聞き、何の話ですか?と返した崎久保に、いいから答えろよ、とキレた言い方をしていたが、キレるのが早すぎてクズに見える。

感情を使うってこういうことじゃないぞ。

どういうことですか?何の話ですか?その話関係あります?とか中々崎久保が答えないなら言っても良いが、いきなりクイズを出されて、ちょっと聞き返しただけでキレるのは、イカれている。

そこは丁寧に、報道マンとしてのテストだ、大事なことだ、答えてくれ、とか余裕たっぷりに促すべきだ。

答えも、外に出て自分の目で確かめないのか?ってふんわり言って終わりって、やっぱり聞く必要なかった。

というか、いいから答えろよって圧迫したくせに、崎久保の答えを全く利用せずに答えを言うだけって、全然会話になっていない。

自分が名言を言いたいだけか?

崎久保がイチゴって答えたって同じこと言いそうだ。

それはまずいな、どっちも報道したら視聴者はパニックになるだろう、一番やっちゃいけないことだ、と言い、じゃあどうするんですか?と崎久保に言わせて、まず自分の目で確かめに行くんだよ、と言って電話を切り、崎久保が電話越しに、もうっなんなの?みたいになっていれば面白かった。

しかし、一方的に名言を言っただけだし、わざわざ崎久保に言わせた意味もない。

会話をはしょリたかったのかもしれないが、はしょるというより意味が変わってしまっている。

アメリカのドラマみたいな会話にしたいんだろう?

彼らは感情が十分あるが、彼はそうではないので、真似になっていない。

この人は、根本的に会話が苦手で、不器用なんだろうと思う。

本人は、自分のことを会話巧者だと思っていそうな怖さがあるが。

こういう会話の問題点に、そもそも彼は気付いてなさそうな感じだ。

進藤は、こういう一見深い風で浅い、というのがデフォルトでちらつくので、長く演技をすればするほど、その印象は薄まっていく。

ラストシーンの一番重要な、崎久保と2人で真相についてしゃべる部分も、回想シーンも含めしゃべりが薄い。

良い声なだけで迫力もなく、ただセリフを言っているだけだ。

一番の見せ場でこれなんだから、セールスポイントがよく分からない。

本当はハードボイルドな人じゃない

肝心のまくし立てるセリフは、滑舌が悪くて何を言っているのか分からず、分からないけど、何かを強く感じるわけでもない。

強い感情でもなく、何を言っているのかもわからない、というダメな二枚看板で、いつも萎えてしまう。

なぜこういったことが起きるのか、というと、本人はこんな人じゃないからだろう。

本当は、仲間由紀恵主演の、トリックの上田のような、天然でぬぼっとした感じの人なんだろう?

ニコニコしてチャキチャキ元気に愛想を振りまく人でも、逆にいつも何かに怒っている人でもなく、特に世間の理不尽さや社会問題に対しても鈍感で、興味もさほどない、という様な感じの人なんじゃないか?

それがダメという訳ではなく、演技している時より、言葉を発さずに微笑んで静かにしている、素の時のほうがよほど魅力的だ。

心優しきウドの大木、というような。

それなのに、社会派のハードボイルド的な役ばかり演じるのは無理があり、自分にない人間すらも演じるのが役者だと言うなら、それに失敗している、と言える。

失敗しているのになぜ続けているのかというと、世間的には失敗ではない、バレてないからだろう。

本人も、視聴率が酷くて、直接怒られるようなことなどがなければ、自分は大丈夫だ、と誤魔化しがきく。

そうやっているうちにどんどん年を取り、もう誰も助言などしてくれない。

彼の周りが冷たいとも言える。

しゃべるのが苦手なら、もっとセリフを減らし、まくし立てるのもなしにして、ポツリポツリとしゃべるような、朴訥な感じの方がよほど合っているんじゃないかと思う。

もしくは、もう格好つけるのなど捨てて、トリックの上田のような、ちょっと抜けている人格を素直に演じる方が楽だし、魅力的なんじゃないか?

本人は、こんなハードボイルドな人ではないのに、なまじ外見がハードボイルドチック、劇画チックだから、ある時期からそういう役を求められてしまい、やってみたら世間の反応も良かったから、無理して自分を合わない型に押し込んだんじゃないか?

それは、いいね、と言ってくれる事務所や制作関係者をはじめ、自分がやることで仕事にありつける全ての人達の存在を背負って。

もしそうだとしたら、そんな物全てぶち壊して本当の自分をさらけ出せば良い。

本人がやりたくてやってたらもう知らないが。

とにもかくにも、この役者は、その演技からリアルな感情は感じず、滑舌も悪く、遠目からの外見が格好良くて低い声がたまに良いだけの、プロ風のアマチュアに見える。

自分のパブリックな役者像をなぞるのに精一杯で、本当にその役になりきる、という所までいつも行き着かないんじゃないか?

ビヴァンの時よりも滑舌も酷く、近くで見ると目に力もなく、おじいちゃんの様にも見える。

なぜこの人が日本の俳優のトップに位置しているのか、主役をやれるのか、不思議に感じるが、何も思わない人の方が多いんだろう。

それはこの人に限ったことじゃないが。

他にこのハードボイルドジャンルを演じられる人がいないからって、出来ない人に押し付けてもしょうがない。

もういい加減解放してあげたらどうだ?

でも見ている人は、ハードボイルド風なだけで満足なんだろう。

見ている方も見ている方だ。

悪人風で悪人だった進藤

進藤はダークヒーロー的な雰囲気で、さも悪を暴き、既存のぬるま湯メディアを壊す、という姿勢だったが、本当に悪寄りでどうするんだと、思った。

進藤は、上述した通り、内面も振る舞いも薄い。

普通に考えて、出した結果だけは信用出来ても、常に信用出来る人間ではない。

アシスタントの声を盗聴して生放送で流し、悪者にしてすまんかった、と裏で可愛く謝るわけでもない、気を抜いてはいけない人だ。

悪に対して追及の手を緩めないが、身内も平気で陥れる、そんな人が官房長官から賄賂をもらって、スクープ内容を変えた、というのは、なんの落差もない。

進藤の足りない演じ方も含めて、第一話では、悪そうに見えて実は良い人にしなければいけなかった。

ラスト前までで、実はすごく良い人だったんだ、魅力的な人なんだ、と思わせられていないので、その手前ではしごを外されても、何も壊せてないし、なんだよ、としかならない。

脚本では最後に進藤が裏切るまでに、ものすごい盛り上がっているはずだったんだろう。

でも進藤の聞き取りづらいだけの滑舌の悪さと、強く見せかけただけの弱い感情表現による演技で、進藤を信頼するどころか、不信感はラストまで続いていた。

そんな状況で裏切られても、やられた、騙された、となる訳がない。

だからせめて最後くらいは、進藤に華を持たせて、まだ良い人で押し切るべきだった。

そうでなければ救いがない。

脚本に演技が絡むと印象がガラッと変わり、脚本で予定していたことも出来なくなり、逆に出来ないと思われていたことが出来るようになることもあるだろう。

役者の演じ方で180度変わってしまうのは当たり前で、それも込みの脚本でなければ何の意味もないと思う。

脚本という話の流れと、役者による印象操作の二つが二本柱で互いに奏功し、化学反応が起こり、脚本以上のものが出来るんだと思う。

日本は脚本を書くのは好きな人が多いようだが、肝心の登場人物の印象の管理については、いつも放ったらかしである。

それでは仮に脚本が秀逸でも、背伸びしているように、机上の空論の様に、頭でっかちの様に見えるのは当たり前だ。

役者に演じることが出来ない脚本なら、セリフや役者を変えるか、そもそもそのシーンをなしにするか、などしなければならないのに、そこは猪突猛進の様に無理やりやらせるだけだろう。

セリフを変えてはいけない、と脚本家の権利は守られるのか?

脚本家を守りたいのか、作品を面白くしたいのか、どっちなのか分からない。

この作品もそれらの例に漏れず、登場人物の印象を操作しているつもりで出来ておらず、意図しないマイナスの印象を見ている者に与え続けた結果、制作側の意図と視聴者側が感じる印象に大きなズレが生じている。

もし、進藤の滑舌が良く、本当に社会やメディア、政治に対する怒りがリアルに感じられる、ただの嫌なやつではない、深い人間像であったら、最後のどんでん返しも効果的だったかもしれない。

残念ながら、そこまでに引き込まれていない。

こういう時に、脚本家は役者のせいに、役者は脚本のせいにするのか?

それを取り持つ監督は何をしてるんだろう?

毒を制してないラスト、スクープを取り下げる弱い理由

タイトルには、毒で毒を制す、とあるが、進藤は思い切り普通に毒にやられているので、よく分からない。

買収されて劣化版のスクープを出しただけだろう。

官房長官はトカゲの尻尾切りをしただけでノーダメージで、何が毒を制した?

本当に官房長官と少年は平等に扱われたのか、あの一人の医師だけの証言で、みっちり取材もせずに何が分かる?

進藤の言葉を借りれば、自分の目で確認したいと思わないのか?

よく調べもせず、長崎医師は最後まで平等に命を救おうとした、とよくカッコつけて崎久保に演説出来ると思う。

いくら医者だって、政府の要人の手術は、いつも以上に手厚くやるに決まっている。

そうじゃない医者ももちろんいるだろうが。

あの冷徹な秘書だって圧力をかけていた訳だろう?

崎久保の言った通り、その発言だけで糾弾するには十分だ。

少年の手術に手を抜かなくても、官房長官の手術にいつも以上に力を注いだら、それは命の選択が行われた、と言っても良い。

それを言われてもしょうがない立場で、むしろやましいことがないなら、政府側はスクープを止める必要もないし、止めてはいけない。

進藤がスクープを取り下げた理由が、官房長官と少年が平等に扱われたどころか、むしろ少年の方にたくさん血液が使われていたことが、利用記録の書面から判明したから、とかならまだ分かる。

官房長官を陥れるどころか、これが判明したら美談に利用される可能性もあり、官房長官に有利に働き、自分達の立場も危うい、とかなら。

進藤が、危ない所だった、官房長官を悪者にした後に、この書類が出回ったら俺らは終わりだった、とか言ってたら、なるほど、とはなる。

一人の医者が、手術は平等だったと証言している、それなのに少年が見殺しにされた、と嘘を報道してはいけない、だから取り下げる、では理由も証拠も弱く、モヤモヤしか残らない。

崎久保の言うように、買収されたんだ、と思ってしまう。

進藤は、官房長官が機密費からお金を出した音声を録音していて、後々スクープとして出すためにとりあえず寝かせるつもりか?

後々官房長官を失脚に追い込むつもりだとしても、今この話を面白くして欲しかった。

この話ではなく、この先で毒を制しますよってことか?

よく分からない。

面白そうなタイトルだが、このタイトル自体も中身がなかった。

ナチュラルな崎久保、あざとさの混在する登場人物達

進藤のアシスタントの崎久保は自然で悪くない。

進藤にも所々ちゃんと怒っていたし、まだそこまで存在感はないけど、そのナチュラルさが悪くない。

いそうな感じのADの雰囲気として、リアルであると言えるかもしれない。

進藤がふにゃふにゃじゃなければ、進藤とは良いコンビになり得ただろうに、もったいない。

それ以外の登場人物は、あざとい人とそうでない人、同じ役者でもあざとい時とそうでない時とがごちゃごちゃに入り交ざっていて、非常に厄介である。

あざとさがあってはいけなく、光よりもあざとさが大分目立ったので、総じてリアルでない、と言って良い。

序盤のテレビ局のスタッフ達の初登場がほぼみんなあざとい。

女性アナウンサーの過度な反応も、編集マンの嫌味な態度も、サブというのか、モニターがいっぱいある所で、局長の声掛けも、プロデューサーやディレクターの愚痴も、みんなそれぞれあざとい。

女性編集長はそうでもない。

みんな、湧き上がったセリフを自然に言っている訳ではなく、自分の中で決めた言い方のセリフを言おうとしているのが見える。

あざとい小劇団の舞台みたいだ。

名のしれたプロと言われる役者でも、なぜか日本人はセリフを置きに行く人が多く、イラッとする。

置きに行くのなんて一番やっちゃいけない素人演技なのに、日本人はプロでもよくやっている。

進藤もそうなんだから、もうしょうがないか?

日本人の人間性の、シャイと真面目さが裏目に出てるんだろうと思う。

カメラが回ってない普段から、日本人は決してずっと置きにいったしゃべりをしているわけではない。

この最初のシーンから一つ一つ全て、置きに行かなくなるまで、何回も撮り直していけば良い。

いくらあざとい人でも、疲れて言う気力がなくなったくらいの方が、変な力が抜けてちょうど良くなるんじゃないのか?

でも良いと思っているから撮り直さない訳で、撮り直す世界など存在しない。

というか、そもそもそんな人をキャスティングしてはいけないし、キャスティングする前に出来るか確認するべきだ。

政治家の秘書、官房長官の息子はずっとあざといし、強面のスポーツコンサルタントも、進藤に言われて鼻をピクピク動かす怒ってますよテクニック演技があざといし、官房長官を手術した医師もずっとあざとい。

官房長官はあざとくないが。

崎久保が間違えて入った研究室の研究員もすごくあざとい。

そういえば、冒頭で40年近く前のテレビに映っていたアナウンサーもあざとい

普通に原稿読んでいる感じではない読み方になってしまっている。

アナウンサーだからしょうがない。

カタコトの韓国人ADチェはあざとくなく、可愛くて良い。

進藤のアシスタント、本橋も、自然な若者らしさがあって悪くない。

100歩譲って、まだ第一話なので、現場に慣れていない、関係性も作れていないので、自然に見せる方が難しいのか?

それをあらかじめ構築した上で見せる方が良いに決まっているが、そこまでの労力は割きたくないのか?

役者があざとい、あざとくないも全て、基本的にはそれを取りまとめる監督の責任だ。

同じ状況であざとい人もそうでない人もいるなら、なぜその人はあざとくなるのか探り、セリフや人物設定も含めて、役者が本来の自然さを出せる環境を作る義務があるんじないか?

それを、あまりに役者に丸投げしている様な感じもするが、いつものことと言えばそうなので、もうしょうがない。

きっとポテンシャルのある役者達も含まれているんだろう?

とにかく、総じて作り物感がくさい。

少ない人数ならまだしも、人がたくさん出ると、あざとい人が増えてカオスになっていく。

日本のドラマは、3人くらいの少人数ドラマを作るべきだ。

人数が増えるとその分管理が行き届いていない。

でもやっぱり派手に見せたいから、大人数でやりたいんだろう。

もうあざとい人はいてもいいから、せめて主要キャストくらいは、あざとさゼロで、ナチュラルか、もしくは強い演技を出来る人にやって欲しい。

主要キャストに圧倒的な魅力があれば、脇役のあざとさには目がいかなくなっていく。

でもこの作品は、崎久保は良いのに、主役があんな感じだからまとめられておらず、もう崩壊している。

テレビ局がテレビ局を舞台にドラマを作っているのに、なぜこんなにちゃっちくなるんだ?

本当のスタッフにそのままやってもらった方がマシなんじゃないのか、とすら思う。

第一話でこの引きのなさなので、これがあと9話くらいあると思うと、天を見上げる感じになる。

しかし、手を出した以上は、最後まで見よう。

「第2話-オンライン賭博とスポーツの闇」が”つまらない☆1″理由と考察、その感想

スポーツ賭博を報じるニュースゲート

バレーボール選手とアナウンサーのスポーツ賭博疑惑を追究する進藤

結局アナウンサーもバレボール選手も潔白で恋仲であり、バレーボール選手のトレーナーが賭博をしていた悪いやつだと分かった。

最近のトレンドであるオンライン賭博や、大谷翔平の通訳水原一平の事件を合わせたような話だった。

進藤がアドリブでアナウンサーを追究し、疑惑のバーに酒も飲まない選手と居合わせたのは、実はその選手にプロポーズされたからで、2人とも賭博に関与してないことが生放送中に発覚する、という展開はちょっと面白い。

しかし、独特の展開はそのくらいで、全体的に作り物感が強く、深い人間ドラマも特になく、物足りなかった。
なぜなのか考えていきたい。

主役の進藤がどんな人間か分からない

主役の進藤は、所々噛んだり聞き取りづらい部分はあるが、一話よりは滑舌は良くなっていた。

進藤は、局長や編成などに文句を言われながらも、自分なりの正義を貫く、孤高の破天荒キャスターだが、特に魅力は感じなかった。

全編を通して、どんな人間が分からなず、かといってそれがミステリアスな魅力を醸す訳でもない。

存在感があるようでない。

ダークヒーローなのか、本当にダークなのか、実はすごく良い人なのか、どれでもなく、演技にリアルな人間性が垣間見えないので、あまり愛着が沸かない。

そういう役だからやっているだけ、という演技の域を出ず、会話に生感も特になく、見ていて引き込まれない。

怒りや正義感、優しさ、余裕感など、どれも強くなく、もしくは弱く、リアルではない。

この役者本来の得意分野や魅力的な部分を、周りや本人すらも分かっておらず、十分に生かせていないんじゃないか?

この役を演じている楽しさの様な物も、演技からは特に感じない。

外見は格好良く、深そうな雰囲気があるだけで、見終わると何も残らない。

前話で述べた通り、きっと本人はこういう人間ではなく、このうわべの演じ方を何回見せられても心は動かない。

名和と賭博の関与が発覚したらスポンサーを降りる、と配信会社の社長に言われて、進藤は一回下を向いた後に笑顔を見せたが、余裕のある強い笑いではなく、弱まって笑っている様に見える。

一回溜めてから、カッと笑う訳でもないので、溜めが効果的でなく、ただ間延びしただけだ。

局長にどういうことだ、と強く詰め寄られた時も、何とかしますから、的なことを言っていたが、その言い方も弱い。

怒られて弱まっている感じのまま言っている感じだ。

本当に全く動じない人間の、強い心の流れから来る演技ではない。

外見は強そうだけど、内面は普通で、全然心の中で押し返せていない。

そうであってはならない、器のでかい、肝の座った役なんだろう?

こいつ怒られてるのに、全く動じてない、となれば面白い。

そういう一挙手一投足に強い雰囲気ががあれば魅力的だが、そうではない。

そんなほつれがポロポロ蔓延していては、強い人間像を作るのは不可能だろう。

別に外見はどうでも良く、小柄で優しそうな顔をしてても、内面が強く動じない演技が出来る役者にやらせるべきだと思う。

最終的に、スポーツ賭博予想サイトを運営するアランこと今井が、空港で警察に捕まり、名和と会話を交わす場面を生中継する、という大きなスクープを報じることが出来たが、それを進藤がコントロールしているリーダー的格好良さも特になかった。

進藤はこの場面では、どちらかというとアナウンサーの様で、気持ちが乗って来るが、それを秘めて抑えている感じでも、楽しくてニヤニヤしている感じでも、悪を許さない怒りの感じでもない。

淡々とMCをしている、そこに静かな深さがある訳でもなく、演じ方にオリジナリティは特にない。

ほぼ無感情と言っても良いし、この事件に興味がなさそうだ。

アランから連絡があった時は、新聞を投げ捨て、興味がある素振りを装ってはいたが。

スポーツ選手の賭博報道自体、ゴシップに近く、どうでもいい寄りであるが、この事件は進藤が率先して調べたんだろう?

なんで進藤がこんな感じなのかは知らないが、どんな奴か分からないし、非常に盛り上がりに欠ける。

もっとギラギラして、悪が暴かれるのを楽しそうに見ているくらいでも良い。

その演技もまた取ってつけたようであれば面白くはならないだろうが。

なのでこのシーンは、名和と今井のドラマの浅さ、映像自体のちゃっちさ、好きになれない小池の感じに加えて、この進藤の無感情さが相まって、クライマックスにしては全然引き付けられなかった。

せめて進藤にもっと深みがあれば、まだ締まったかもしれないが。

魅力のないアナウンサー像

ニュースゲートのアナウンサー、小池は、バレーボール選手の名和と同じバーにいて、実はプロポーズされたことを明かすことで、名和も自分も賭博に関わっていないことを生放送で証明したのは面白い。

体調管理に細心の注意を払い、酒も飲まない名和がバーに行くのは不自然で、その理由として、プロポーズをしていたから、というのは絶妙な理由かもしれない。

ただ友人の付き合いで行った、では弱く、こんなことを小池が嘘で言う訳ないし、賭博をしていた可能性を低く出来得る数少ない理由だ。

プロポーズもしたし、賭博もしていた、という可能性も無きにしもあらずだが。

それでも疑惑は再燃してしまうが、最終的にはトレーナーが名和の口座を使って賭博をしていたことが判明し、2人の仲は保たれた。

しかし、特に小池も魅力がなく、どんな人間かも分からないので、特に良い話でもない。

小池は会議に加わり、この番組をどうしていきたいか、などと熱く話している様子などもなく、スタッフとの関係性もよく分からない。

小池はギャンブル好きだ、というぐらいで情報も少なく、ツンとした感じでニュースを読んでいく、お飾りのアナウンサーという感じだ。

それがバレーボール選手と実は恋仲だった、となっても、祝福したい感じも沸かない。

もっと人間味があり、スタッフとも距離が近く、慕われているような描写があれば、一連の展開もよりドラマチックになったかもしれないが、そうではない。

むしろ、有名スポーツ選手と付き合う、というのも含め、ステレオタイプで嫌なアナウンサー像になってしまっている、と思う。

なぜ小池の人間像を魅力的に描こうとしないのか分からない。

アナウンサーってこんな程度か?

名和はヨーロッパに行くことになったが、2人の結婚は先延ばしにすることになり、小池は、まだキャスターは続けるよ、と言ってAD達が喜んでいたが、特に嬉しさもない。

よろしくお願いします、と大きな声で言っていたADのチェは爽やかで可愛くて良いが。

薄い名和と今井の友情ドラマ

名和は、アランの正体であるトレーナーの今井に、なぜ借金があることを言ってくれなかった、お前に賭けると言ってくれた、一緒に海外に行くため頑張った、復活を待ってるぞ、と声かけをしたが、2人の関係性に濃さも感じず面白いドラマではなかった。

選手とトレーナーとして世界を目指そう、という目標があり、それを達成しつつある最中、ギャンブルに手を出す、というのはあまりに唐突で、中身がない。

理由がないなら、別に今井じゃなくても、監督でも良いし、もう誰がアランでも良いだろう。

例えば、一緒に世界を目指そうと誓ったのに、世界が近づくにつれ、名和が今井に対してだんだんと素っ気ない態度を取るようになったり、他のトレーナーばかり良くする様になり、今井が疎外感を感じてギャンブルに手を出した、とかなら分かる。

それも、名和は今井と旧知の仲であることは知られているから、今井ばかりひいきしているように見えないようにわざとそうした、名和なりに気を使った結果のすれ違いだった、とかだったらまだ面白かった。

そういうドラマも何もなく、実は同郷で元ライバルで現トレーナーが犯人だった、と言われても、ポカンとしてしまう。

トレーナーだから、表沙汰にならない名和の体調の細かい良し悪しを賭博予想に反映できる、ということだけはつじつまが合っているが。

それで、名和が2人で世界に行きたかった、復活を待ってる、と言い、今井が自分が全てやりました、と素直になって告白したところで、中身のない感動話で、涙腺は何も動かない。

全体的に作り物感が多い

このドラマは、人物描写の足りなさはもちろん、その空間の緊張感のなさ、作り物感を強く感じる。

例えば、ニュースゲートのロゴ画面がもう嘘くさい。

青い画面は一見格好良いが、本当のニュース番組では見かけないアンリアルさだ。

実際のニュース番組で見かけたら、違和感を感じるちゃっちさがある。

まるでフリー素材のようだ。

番組内で映るニュース映像、賭博疑惑のあるバーの外観映像やラストの今井の逮捕劇映像もリアルじゃない。

みんなで話し合うデスクもそうだ。

バレーボールの試合映像も嘘くさい。

選手達の背が低いだけでなく、観客とコートとの間に距離があり、ついたてがまばらで、わーっと沢山いるはずの関係者や控えの選手達もパラパラとしかいないのが違和感がある。

もし、実際のコートでエキストラを入れてこんなに中途半端に撮影するくらいなら、合成にするか、CGで人を増やした方が安上がりでそれなりに出来るんじゃないのか?

配信会社の社長の、有名人とのツーショット写真達も、名和との写真はギリギリ誤魔化せても、それ以外の写真は作り物感が強い。

社長の嘘笑顔も大きいが、本当のツーショット写真はあんな浮いた感じにならないだろう。

今井が逮捕される空港のドタバタ劇も、本当にこれが空港で起こっているんだ、という緊迫感、リアル感などない。

カメラで撮ってるの丸出しの撮り方というか、撮られている側もカメラを意識している動きになってしまっているんじゃないか?

役者がカメラを意識せざるを得ない撮り方をするのもダメだし、役者はカメラを忘れるべきだろう。

どっちもどっちもかもしれない。

隠し撮りみたいな撮り方をするのが理想だが、それでも変わらずあざとい人達も多い気もする。

そんなこんなで、よくこんなにちゃっちい、嘘くさい物や空間を量産できるな、と思う。

不思議なもので、見た目は同じでも、同じにはならない。

そこに、役者の演技同様、作り手側のあざとさがたくさん含まれているからだと思う。

本当にその物を作る時の気持ちで作れていないんじゃないか?

オカルトみたいだが、実際にリアルでないんだから、そうとしか考えられない。

ニュースゲートのロゴだって、今度こういう報道番組が始まるんですよ、と作り手を騙して作らせたら、もっとシックでリアルなロゴが出来るんじゃないか?

実際のニュースのロゴには、プロデューサーやディレクター、局長、編集長、もっと言えば上層部の幹部たちの意見すら取り入れて、細かく修正しながら作る訳で、リアルな気持ちが自然とそこにこもるんだろう。

架空のロゴを作る時は、そういうプロセスを経ずにすぐにオッケーになるから、甘くなるのかもしれない。

でも、そんなことを写真一つから全て作っていては、あまりに膨大な時間と労力がかかるから、現実的には無理なんだろう。

それを短い時間で低コストでリアルに仕上げるのが演出家の役目だと思うが、機能はしてないのかもしれない。

しかし、ツーショット写真がいくらリアルでも、演技を含むドラマ部分がスカスカなら結局つまらないし、どこに力を入れてるんだ、となる。

だから、ドラマ部分以外は、少しちゃっちいくらい適当な方がハードルが下がる、とは言える。

このドラマの場合、今のところどっちもそうだと言えるが。

あざとい裏方のドタバタ劇

進藤が裏方に秘密にして生本番で勝手なことをする度、裏方スタッフがいちいち騒ぐ感じがあざとい。

局長やプロデューサー、ディレクターの怒声が特に鼻につく。

進藤は有名な破天荒キャスターなんだろう?

進藤がそんなことをするのは、この局ではなかったとしても、今に始まったことでなく、容易に想像がつくはずなのに、まるで初めて体験するかのような反応が嘘だ。

むしろ、ため息混じりに青ざめ、静まり返るような感じの方がリアルなんじゃないか?

噂には聞いていたけど、ここまでか、いざ体験するときついな、というような反応が本当じゃないか?

怒っている人もいて良いだろうが、苦笑いや苦笑したりしてる人もいる方が自然だ。

中には、いいぞ、面白い、と思って興奮する若いスタッフもいるかもしれない。

そういう多様さもなく、みんなで一緒に戸惑って怒号が飛ぶ、というのがあざとい。

大変だー、わーって感じのイメージか?

このリアルでないドタバタ劇が冷める。

多分進藤は言うことを聞かないんだから、進藤と念入りに会議で内容を確認し、これで行くんですね?いきなり変えないですね?などと釘を差し、大丈夫です、変えないですから、とちゃんと言わせて、本番でやっぱり変える、という描写があったら面白い。

変えないって言ったじゃないですか?と詰められ、あの時はそう思ってたんですけど、緊急のニュースが入ったんで、すみません、などといつもとぼけてはぐらかすお決まりの描写があっても面白い

しかし、そういう進藤との細かい会話もなく、今日は大丈夫だろう、という感じで裏方が本番に臨むのは嘘だし、何も跳ね上がらない。

進藤も、むしろそうやってとぼけたふりしてヘコヘコしながらも、勝手にやりたい放題していく方が、合っているんじゃないか?

編集長に、番組をぶっ壊す気はあるのか?などと格好つけたことを聞くのが、似合っていない。

「第3話-美しき科学者の罠〜新細胞は存在します!」が”つまらない☆1″理由と考察、その感想

スタップ細胞事件のオマージュ

IL細胞という夢の細胞が大学の研究所で見つかったが、進藤はそれが不正であることを追究していき、最終的には他の研究者の協力のおかげで、その細胞が実際に存在することが証明された。

進藤が、若手ADを鼓舞し、俯瞰した立ち位置から真実に向けて報道チームを導いていく、いぶし銀的立ち振る舞い自体は悪くない。

今度はスタップ細胞事件のオマージュのような話だが、最終的にデータ改ざんを指示した教授が裁かれることもなく、その研究を継続する、という訳が分からない終わり方で、ポカンとしてしまった。

キャラクターが変わった進藤、オラオラは捨てるべき

進藤は、今まででは一番落ち着いたキャラクターで、まだ見ていられた。

スタッフがてんやわんやしながらも自分は意に関せず、本橋を鼓舞して動かしていく、リーダー的な感じは少し感じられた。

序盤の研究所を視察する穏やかな感じなどは悪くなく、やはり優しい感じの振る舞いが、この役者の味なんだと分かった。

崎久保がチェに、進藤さんの前で余計なこと言わないで、と進藤が食いつきそうな情報を与えることを制し、それを聞いていた進藤も特に何も言わず、ぬぼっとした感じが良い。

ここだけは良いコンビ感だと思う。

本当は、崎久保にいつも、しっかりして下さいとか言われ、すまんすまん、などと謝ってばかりで、いざという時にガっと力を発揮する、とかのほうが格好良い。

強いことを言ったり、怖い言い方で恫喝する振る舞いは、全く似合っていない。

その言い方に薄さしか感じず、ダメなパワハラ親父風で、見ていてムカつくだけで魅力がない。

今話では、そんなダメな言い方をするシーンは比較的少なめで、今まででは一番進藤に魅力を感じられた回だったと思う。

ただ、それでもまだ全然足りない。

滑舌は前回より悪く、聞いていてイラッとするシーンがちょこちょこあったので、これをなぜ直さないのかよく分からない。

早口で言おうとする時は、もう全部ダメだ。

自然でない、言おう言おうとする作為的な意識が入っているし、魂の早口でも何でもない。

本橋を鼓舞する時も、お涙ちょうだいか、などと強く言う一連の感じが似合わない。

そういう強がる言い方は一切せず、厳しいことを言う時も、もっと優しく、包み込む様に相手を動かす言い方が出来れば、大分深い主人公像になったと思うのに、もったいない。

多弁も合っていない。

例えば、刑事コロンボの様に、いつも優しく声を荒げないしゃべり方でも、十分すぎるほど格好良いヒーロー像になり得る。

彼は、悪さを出すのではなく、それを目指すべきだ。

悪役ならまだ良いんだろうが。

本当は、人格的にそっちの方が合っているんだろう?

時折垣間見える、オラオラして格好つける感じも薄く鼻につくだけなので、いつもぬぼっとして適当で、怒ることもなく、だけど優しい語り口で悪を追い詰めていってしまう、ならめちゃくちゃ格好良い。

オラオラしている悪人に見えるけど、実はヒーローなんて、出来ないなら無理してやる必要はない。

もっと等身大の方がよほど魅力的だ。

そして、この話の進藤は良い人よりだが、第一話で官房長官から賄賂を受け取った悪的な描写は一体何だったのか、と思う。

この話だけでなく前話も、名和と今井に話す機会を与えていたり、良い人方向に振れているのがブレていると思う。

良い人に見えるけど、裏で高い視聴率の数字を見てニヤニヤしているとか、そんな描写もない。

それなら、最初からあんなダークヒーロー感は全くいらない。

もうダークヒーローではなく、ちょっと厳しめで、言うことをあまり聞かない普通のキャスターだ。

それなら、最初からそれで行くべきだ。

でも賄賂は、終盤で使うために必要だったのかもしれない。

いずれにせよ、浮いた描写になっていて、あれで盛り下がったんだから、下手な描き方だ。

黒猫の教授とIL細胞の研究者を結びつけたのも、黒猫の教授がアメリカに100億で売った権利のいくらかをもらう約束をしていて、実は社会貢献のためじゃなかった、とかなら分かる。

崎久保に、お金とかもらってないでしょうね、と詰められ、そんな訳ないだろう、と一瞬ドギマギして怪しい返事をして、崎久保に、もうっと呆れられるとかなら面白い。

でもそうではなく、本当の善人っぽく振る舞っているのがもうよく分からない。

ブラックジャックの様に、基本全て金でしか動かない、という訳でもない。

金で動く時もあれば、金がなくても動く時もある。

自分の意図を隠すために、金でしか動かない汚い人間だ、とわざと見せ続ける、深みがある訳でもない。

そこを徹底してたら、ダークヒーローになり得るのに、普通に良い人の時もある。

進藤はどういう人間でどう見せるか、これで行こう、というのをちゃんと決めれていなかったんじゃないか?

でなければ、あれは何だったんだ?などとはならないだろう。

視聴率=金に直結するのであれば、それはそれで、高ければ高いほど進藤はボーナスがたくさんもらえる、という設定を視聴者に知らせておくべきだ。

進藤に、もっと視聴率を気にする小ささがあって良いのに、そこも大きい人間ぶっているのがつまらない。

一番悪い教授が成敗されず、なぜか嫌われてる栗林

IL細胞のデータ改ざんに関わった本橋の先輩の栗林准教授は、良心の呵責から自殺未遂をしてしまったが、データ改ざんを指示した一番悪い小野寺教授は、進藤の提案により、その責任を公にされず、罰を受けなかったのが訳が分からかった。

栗林准教授は、意識不明の重体になり、小野寺教授からデータ改ざんの濡れ衣を着せられたままなのに、小野寺は社会的罰は何も受けずに、IL細胞の研究に参加する、というのは理不尽にも程がないか?

それとも、小野寺教授の罪は報道され、本橋が篠宮を訪ねるまでの一週間でコテンパンに社会的制裁を受けた、という体なのか?

もしそうなら、その描写を省いたのはどうかしているし、小野寺からはそんな感じは一切なかった。

こんなに勘違いさせる様な描き方は、モヤモヤしか残らない。

そもそも、もし小野寺教授への制裁がなかったら怖すぎる。

世界の研究者でIL細胞を研究する、という進藤の発言を小野寺教授が研究室で聞いている描写があり、特に小野寺教授への言及は、進藤の口からは何もなかった。

誰かをスケープゴートにするより、前向きに画期的な研究を後押しする、という、従来の報道を超えた平和的なやり方が、進藤の言うぶっ壊す、ということか?

それは、部下を自殺に追い込んだ教授への制裁とは別にやればいいことで、制裁自体を無くす理由にはならないだろう。

また一話みたいに教授に金をもらったのか?

そんな描写もなかった。

本橋の不法侵入の訴えを取り下げることを天秤にかけたのか?

それは、篠宮が、実は私が招き入れたから不法侵入ではありません、と言えば済むことだ。

小野寺教授の不正が暴露されれば研究が止まるから?

栗林准教授に濡れ衣を着せたまま、黒猫の教授にIL細胞の研究を引き継がせるなんて、あまりに非人道的ではないのか?

結局、栗林准教授は犯人扱いのまま、篠宮と小野寺も協力して黒猫の教授とIL細胞を発見することが出来た訳で、そうなると、やっぱり栗林が悪いやつだった、と今以上になるだけで、自分が栗林だったら、この訳の分からない状況に、なおさら生きててもしょうがない、と思うだろう。

ここから、栗林の汚名を晴らすのは、何大抵のことでは無理だろう。

あの栗林の涙は、うれし涙じゃなくて、そういう悲しみの涙か?

栗林、かわいそうすぎないか?

もし、風評被害で研究が続けられなくなる可能性があったとしても、黒猫の教授と篠宮が研究を引き継ぐ、というニュースと同時に、小野寺教授の不正を伝えれば、何も問題はなかっただろう。

小野寺教授は、大した反省の態度も見せず、黒猫の教授の研究所にしれっと姿を現し、あきらめられないのよ、私も、と本橋と篠宮に言うのは常軌を逸している。

栗林は昏睡状態だとしても、小野寺は見舞いに、謝りに行った訳でもなさそうで、怖すぎる。

行ってたら知らないが、そんな描写はない。

ここで、ボロボロ号泣して崩れ落ちて謝罪する、とかですらない。

本橋が怒るのは当然で、本橋の助言を振り払って、小野寺教授は男性社会から私を守ってくれました、と擁護する篠宮も狂っている。

栗林、どれだけ嫌われてるんだ?

栗林を自殺に追い込んだことより、自分を男性社会から守ってくれたことの方が重要か?

小野寺の改ざん指示を知らないのか、黒猫の教授も小野寺を研究に誘い、栗林はないがしろのままIL細胞の研究は進んだ。

仮に、IL細胞の研究には篠宮だけでなく、小野寺の技術や知識が不可欠だったとしても、一回ちゃんと謝罪して、反省してから研究に参加すべきだ。

そんな描写は一切ないのが、むずがゆいというか、もう言葉に出来ない。

そして、そんな小野寺教授を成敗せずに、前向きな研究の継続をすがすがしい顔で報道した進藤は、アホに見える。

前回のバレーボール選手賭博事件では、終盤の今井の逮捕劇も、進藤は特に興味がなさそうな感じだったが、このIL細胞研究継続のニュースに関しては、その振る舞いから少し楽しそうな感じを受けた。

俺、こういうのが報道したかったんだよ、というような。

栗林をないがしろにして、そういう悦に入っている感じがアホだし、気持ちが悪い。

進藤は、栗林のことはどうでも良く、自分は良い人間だと思われたいだけの危ないやつである、という、ニュースキャスターを揶揄したような、アンチテーゼ的なメッセージでもないだろう。

ドラマとしても、このシーンはとても良いシーンだ、としてクライマックスに持ってきている訳で。

そんなこんなで、このキャスター第3話は、日本ドラマの近年稀に見る、訳の分からない不可思議なストーリーだったんじゃないか?

悪は成敗されず、とても良い話であるかのように終わって行った。

偽善の空気も強く感じる。

ちなみに、ADの本橋は、本当に先輩を慕うかわいい後輩の感じで好感が持てるし、栗林の濡れ衣を晴らすために奔走する感じは悪くない。

あの人が捏造なんてする訳ない、と訴える感じが、本当に必死に見える。

研究室に忍び込んで、篠宮に必死に栗林の弁明をしている時、目が右左に激しく動きながらしゃべっている感じが、演技っぽくなくて良い。

あえて外側から真似してやろうとしても、絶対に出来ない演技だ。

演技してないから、こうなったんだと思う。

演出の崎久保は自然で、進藤にも強く怒れるし、江頭に泣かされた人とは思えない。

進藤より江頭の方がリアルで怖いのかもしれない。

本橋が復帰して戻れることになり、進藤に、もう少し見てみることにした、などと言われ、崎久保が本橋に、良かったじゃん的な意味で、目配せする素振りは自然でとても良い。

一見普通の雰囲気だが、自然で、強さも出せる感じが、進藤とのチームにおいては必要不可欠な存在感がある。

それゆえに、進藤のキャラクターがちゃんとしていれば面白くなり得たのに、なんとももったいない。

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