ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 原題:Män som hatar kvinnor
監督-ニールス・アルデン・オプレブ 2009年 153分
脚本-ニコライ・アーセル、ラスマス・ヘイスターバング
出演-ミカエル・ニクヴィスト、ノオミ・ラパス、他
“今すぐ見るべき!☆5”理由と考察、その感想
ナチュラルな出演者の演技
長めだが、終始飽きずに見られた。
出てくる出演者もみなナチュラルでいい。
主人公ミカエルの力の入っていないおじさん感がいい味を出している。
決して熱血漢というわけではない物静かな男だが深みがあり、大げさでない自然な演技がリアルで惹きつけられる。
なにがリアルかは作品にもよるだろうが、大げさな演技で引き込もうとする演出はよく見ても、ミカエルのように力がかなりそぎ落とされた、一般にいる人の感覚に近い演技というのはあまり見かけない。
ただ力が入ってないだけだとやる気がないように見えるが、ミカエルには深みがあるので、見やすいしリアルに感じる。
物静かな粋なおじさんという感じだ。
リスベットも個性的で魅力的だ。
欲を言えば、リスベットにもう少し人を遠ざける雰囲気があったらよかったと思った。
リスベットはあんな感じだが、ミカエルが呼ぶと毎回ちゃんと返事をするか、振り向くかでリアクションがかなり良い。
もし自分がそれをされていたら、この子は素直な子なんだと思うので、あまりリスベットと距離は感じない。
難しいかもしれないが、リアクションの良さをなくしていくともう少し距離感が出たかもしれないなんて思った。
それでも、かなり作りこまれている世界観を醸し出しているので、十分だと思う。
一見相容れなさそうなパンクロック調の恰好をした人に心を閉ざしている少女と、普通のおじさんとのコンビが面白い。
ミカエルに調査の依頼を頼むヘンリックも優しいおじいさんの味が出ていて、ハリエットを思っている感じがよく伝わってくるし、ハリエットが慕うのも分かる。
見つかったハリエットもそうだが、出てくる登場人物がそれぞれ人間的で、ミステリーである以上に濃い人間ドラマである。
リスベット役のノオミ・ラパスのインタビューを聞いてみても、この作品は演じるときの即興性を重んじた撮り方をしたらしく、それが見事に自然な人間同士のやり取りを実現している。
映像の見せ方が心地良い
言葉で説明しなくても映像の並べ方や映し方だけで理解できるように節々作られていて、見ていて心地よく感じる。
気づいたら自然と話に引き込まれているという感じだ。
序盤のリスベットの独特の雰囲気など語る言葉は少なくても映像自体がそのまま説明になっているし、ミカエルが一人で調査しているところも引きこまれる。
あまりに映像自体で説明的になると短絡的になるんじゃないかという心配があるが、決してそんなことはなく、必要な分かりやすさで、丁寧でいい。
かゆいところに手が届く
ミカエルがこの調査の依頼を受けることになったのは自分自身ハリエットに優しくされた記憶があるからで、自然な動機だ。
ハリエットが残した暗号を長年解読できなかった老警官にミカエルが暗号の答えを教えたとき、「気づかなかった」というちょっと悔しそうな驚きのリアクションがリアルで、なんで警官は気づかなかったのか、真相を知っている、もしくは能力が低いんじゃないかという不信感をこの自然なリアクションで払拭してくれる。
本当に気づかなかったんだろう。
終盤でリスベットは追いかけた犯人を助けなかったが、それで終わるのかと思いきや、ちゃんとミカエルがそれに関して問い詰めていたから安心した。
ハリエットが毎年贈っていた押し花も、犯人からのものと思っていたヘンリックに対して、そのことについてハリエットが触れていた。
そういった、普通であればそのままにして変な方向に行ってしまうような引っかかる点が次々に解消されていくので気持ちが良い。
層の厚いストーリー
最初から中盤までがかなり人物相関図がややこしいので、序盤のうちに結構気にしておかないと誰が誰やらわからなくなってしまう。
自分はDVDで見たからいちいち巻き戻したりが出来るので、もし映画館で見ていたらと思うとちょっと怖くなる。
それでも、写真からハリエットが何を怖がっていたか割り出していくところ、暗号の真相にたどり着くところ、さらに犯人が分かった後にもう一個展開があり、さらにリスベットが単独で最後に起こした行動など、実に盛りだくさんだが飽きない。
リスベットが非道な後見人にし返しをする所、ハリエットが生きていると伝えたときのヘンリックと弁護士のリアクションなど、痛快な要素もありスカッとする。
話しがそれぞれ濃いが、決して邪魔をせずにつながっている。
原作は読んでいないが、もし多少変わっていたところがあっても、これはこれで面白いことに疑いはない。
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