これが私の人生設計 Scusate se esisto!

②オススメ

見どころ→主人公の飾らない人柄

監督-リッカルド・ミラーニ 103分 2014年

脚本-ジュリア・カレンダ、パオラ・コルテッレージ、フリオ・アンドレオッティ

出演-パオラ・コルテッレージ、ラウル・ボヴァ、他

簡単なあらすじ

世界の大都市で活躍している女性建築家が、都会に何かしら寂しさを覚え、故郷に戻って仕事をしようとするが、そこでは女性建築家は低く見られていて、男性の偽名を使って大きなプロジェクトに参加することに成功するが、様々な困難が待ち受けていた・・・。

「これが私の人生設計」の感想

様々な差別がはびこる日常社会

女性建築家が、社会にはびこる差別に負けずに自分の意見を主張していく。

女性蔑視や、LGBT、パワハラなど、日常にはびこる様々な問題が深刻にならずに明るいタッチで取り上げられていて、最終的にそれらに打ち勝つという結末がポジティブで良い。

面接では女性だからと相手にされず、妊娠したらクビという条件を提示される主人公、女性から性の対象としてしか見られないイケメンのゲイの店長、自分を殺してパワハラ社長の召使のようにふるまう社長秘書や、その社長の顔色を窺って妊娠やカツラ、ゲイであることを隠したり、無理やり趣味を合わせる従業員たちなど、自分を偽らざるを得ない人達がたくさん出てくる。

軽さのあるコメディタッチで描かれてはいるが、現実的でシリアスな問題に切り込んでいるのが好感が持てる。

イタリアで大ヒットしたらしいが、イタリアはまだ普通にこうした差別がよくあるらしいから、これを見て笑っている人の中にも、実はドキッとさせられた人がいるのではないかと思う。

人は誰しも生きていくために少なからず自分を押し殺して生きているのだと思う。

押し殺させている社会に、それはおかしいと提示すると共に、押し殺している人にも隠す必要はないという両方に対するメッセージがこの作品には込められているので、普通のコメディよりも深いものになっていると思う。

主人公の生き方が面白い

中年であるというのもあるだろうが、飾らない性格の感じで人間味があって応援したくなる。

海外で大きなプロジェクトを次々こなし、建築家として大成功しているのに、平気でそれを捨てて母国に帰ってしまう、華々しい世界にどこか虚無感を感じてしまっているというのが良い。

確かに給料は良いし華やかだけど、どこか周りの人達に嘘くささがあって魅力的でなかったり、人に根差していない感じがあったりする。

だから帰ったは良いものの、母国では差別があり、それでもようやく自分のやりたい人の役に立つプロジェクトに出会えたが、またしても差別が邪魔をしてくる。

それに負けずに向かっていく姿が好感が持てる。

主人公は幼いころから建築に関する才能を発揮し、いわゆる天才であったわけだが、全くえらぶったりせず普通であるのが良い。

まあ本人は何にも自分のことをすごいとか思っていないわけだから、それが良いと言っても「何が?」という感じだろうが、いわゆる頭がそこそこ良い人達の中に高飛車だったり、上から目線の変なプライドが高い人達がいるのは事実だから、みんなこんな主人公みたいだったらいいのになと思う。

コメディタッチがちょっとくどく感じる所がある

コメディではあるが、無理に笑わそうという感じというより、人間味で滑稽に見せている所が多いので、いわゆる普通のコメディよりは大分見やすくなっている。

それでも、コミカルな音楽をやたらとかけたり、やり取りが長かったり、ちょっとくどく感じる所はある。

コミカルな要素として、ゲイの親友とのやり取りがかなり多いが、もう少し尺が少なくても良かったと思う。

中継の部分や息子との食事のシーンなど。

人間性的なおかしさなら良いが、単純なドタバタのドリフ的な要素はもうお腹いっぱいである。

ドリフはいかりや長介や高木ブーをはめたり、もちろん人間的なおかしさもあって良い所もあるので、ドリフを否定している訳ではない。

叫ぶようにしゃべる主人公の叔母さんのような作り物でないキャラクターや、勇気づけられた従業員がカツラをはぎ取る強い姿勢など、そういったものがたくさん見たい。

改築プロジェクトの詳細をもう少し知りたかった

世間の偏見や理不尽と戦い、己を貫く姿勢が描かれているのは良いが、もっとプロジェクトの詳細を知りたかった。

老人のために憩いの場を作ったり、殺風景な建物に緑を取り入れて雰囲気を変えたりする、その一流建築家としての高い理念や、難しいことを実現するために実際どんな技術を使ったりするのか、もう少し専門的なことが描かれていても良かったと思う。

アホ社長が言ってくる低い意見を、一流建築家として次々と論破していくような場面も見たかった。

例えば、社長が安い材料で作ろうと言ったら、その素材は確かに安いけど肌触りが悪いから、住んでる住民たちの感じ方が全然違ってくる、温かみのあるコンセプトで作ろうとしてるのに、そのコンセプトを理解しているのか?そもそもその素材のことを知っているのか?知ってたらこのプロジェクトでこんな素材は提案するはずがない、などと詰めていったり。

アホ社長はお飾りみたいなものだから、建築のことを本気で主人公と話し合ったらとても太刀打ちできないはずで、社長のボロなんてすぐにはがれてしまう。

最後にちょっと社長に物申したくらいでは全然足りず、もう立ち直れないくらい恥をかかしてコテンパンにして欲しかった。

一人の人間の意地で闘ったのは素晴らしいし、中々できることではないが、強い建築家だけでなく、すごい建築家なんだ、と思わしてくれるディテールも欲しかったなと思う。

この人は一流の建築家なんだという片鱗がもっと垣間見えても良かったと思う。

肝心の建築ということに関しては、ほとんど語られないので、人間ドラマはもちろんなくてはダメだが、途中から人間ドラマ一本になってしまっている、それがコメディ気質でもあるので、全体として軽い印象になってしまっている。

イタリアは建築に関しても造詣が深く、そういったディテールも織り込めるはずだから、そうすれば重みが出てさらに深い作品になったと思う。

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