映画「ぼくの伯父さんの休暇(1953年)」が“つまらない”理由と考察、その感想

⑤つまらない☆1

ぼくの伯父さんの休暇 英題:Monsieur Hulot’s Holiday

監督-ジャック・タチ 1953年 88分

脚本-ジャック・タチ

出演-ジャック・タチ、ナタリー・バスコー、ルイ・ベロー、他

“つまらない☆1”理由と考察、その感想

 昔のコメディへの期待

 フランスの白黒映画。

もしかしたら、昔のコメディに面白いものがあるんじゃないかと思ってふと手に取ってみてみたが、結構きつかった。

主人公のユロ氏が終始わざとらしくて見ていられない。

仮にユロ氏だけがわざとらしくても、周りが正常でガンガン突っ込んでいけばまだいいが、そういうわけでもなく、意図的におかしくしようとしている部分は、周りの登場人物もユロ氏につられてわざとらしくなってしまっているので、笑えない。

わざとらしい時点でそれは作為の表れであり、ユロ氏が一体何をしたいのか、どんな人間なのかがほぼ分からず、人間的なおかしさも感じれない。

上流階級の真似をしようとしてもうまくいかないが、本人は出来ているつもりでいる、というのをやりたいのだろうが、わざとらしいので、そんな人はいないと思ってしまう。

 ユロ氏の嫌がらせ

 ユロ氏は自分のミスには基本的には気づかない。

しかし、わざとらしいというのは最初から気づいているということだろう。

ごく自然におかしいことをして自分のミスに気づかない、気づかない素振りをしているというのは成立するが、わざとらしい素振りでおかしいことをしているのにミスに気づかない、気づかない素振りをしているというのはただの嫌な奴で、そこにおかしさはなく、実際にいたら腹が立ってくるだろう。

自然におかしいことをされても、なんだこの人はと思うのに、わざとらしくされたらそれはもう嫌がらせ以外の何物でもない。

じゃあユロ氏はなぜあからさまな嫌がらせを他人にしているのだろう、と考えだすともう訳が分からない。

要するに演技が下手ということだが、ユロ氏の振る舞いはこの作品の根幹をなす部分なので、絶対に自然でなければいけない。

おかしい部分が全くないかというとそうではなく、人の家に上がった時に、きつねの毛皮が足に絡みついて、振り返った時に気づいてびっくりする所は良かった。

びっくりするタイミングや表情が絶妙だった。

しかし、それはもう偶発的なもので、本当に驚いたから自然に見えたのかもしれないし、他はそうなっていない所から見てもたまたま出来たんだろう。

 ユロ氏に可愛げはない

ユロ氏は自分のミスにはほとんど気づかないが、たまに気づいた時には、全力で誤魔化そうとする。

その不誠実さはどうなんだ?

普段から堂々としていて礼儀正しい紳士に見える人間が、ミスした時にそれを全力で誤魔化していたら滑稽だが、ユロ氏は普段から挙動不審なので、ミスを誤魔化してもただ不信感が重なるだけだ。

まだそれを悪いと思って逃げずに受け止めて、謝っているが訳の分からない弁解をしている、とかの方が可愛げがあっていいのに。

最終的にホテルにいた宿泊客からは別れの挨拶もされずに無視され、落ち込んでいたが、そりゃ嫌われるだろうと思う。

悪気がなくて、たまたまそうなってしまったのに嫌われてしまったというのならかわいそうにも思えるが、ホテルでのユロ氏はただの迷惑な客だった。

あざとい時点で、悪気がないという設定は成り立たなくなってしまっている。

ユロ氏が起こした問題行動は、日々大して働きもせずに、良い暮らしをしている上流階級への皮肉というメッセージを感じなくもないが、ホテルに滞在している客は別にユロ氏に対して冷たかったり、邪険に扱ったり、懲らしめられてもしょうがないという様なことは特にしておらず、ただバカンスを普通に楽しんでいただけだ。

特に嫌な人間でもない普通の人たちの邪魔をし続けていたんだから、悪いのはユロ氏で、嫌われるのは当然だ。

ユロ氏、よくやってくれたという痛快感もなければ、ユロ氏かわいそうだなあと同情することも出来ない。

そんな落ち込んでいるユロ氏の元に、夫婦で来ていた老紳士が、「おかげで楽しいバカンスになったよ」と声を掛けていたのは良かったが。

夫婦で一緒に海に行って、貝拾いをしたり、散歩をしたりするのも悪くないだろうが、やはりまだ元気な男はそれでは退屈なはずで、ユロ氏がどたばた暴れているのを見ている方が楽しいと感じるのはよく分かる。

 リゾートの雰囲気は気持ちが良い

フランスのこの浜辺の感じは、白黒でも実に美しく、小さなホテルも味があって良い。

こんなバカンスは気持ちが良さそうだなというのは感じれた。

しかし、これがコメディとして面白いとは口が裂けても言えない。

これを見て笑っているのは、それこそ庶民とかけ離れた感覚を持つ上流階級の人たちかもしれない。

本当に面白いかそうでないかは判断できずに、面白そうなうわべの雰囲気さえ見せればもうなんでもかんで笑ってしまうようなゆるい人達だろう。

作られた時代は平和だったということなのか?

うーん、何とも難しい。

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