映画「勝利への旅立ち(1986)」が“つまらない”理由と考察、その感想

⑤つまらない☆1

勝利への旅立ち 英題:Hoosiers

監督-デヴィッド・アンスポー 1986年 115分

脚本-アンジェロ・ピッツォ

出演-ジーン・ハックマン、デニス・ホッパー、バーバラ・ハーシー他

“つまらない☆1”理由と考察、その感想

中身のない作品

非常に中身のない作品だった。

コーチや選手の心理描写や、必要と思われる練習風景などがほとんど省かれてしまっている。

時間の都合でしょうがないのかもしれないが、あまりにも何もないまま進みすぎて、気づいたら終わっている感じだった。

主人公がどんな人間か分からない

主人公のコーチが抱えているトラウマが描かれず、最初こそ町に馴染めないものの、あとはほぼとんとん拍子にチームを勝ちに導いていく。

なぜコーチを一端やめ、軍に入り、また10年ぶりにコーチをやろうと思ったのか、今はそれをどう思っているのか、などの心理的な動機の描写がほぼ皆無で、語らずとも感じ取れるところもない。

確かに周りにとやかく言われてもやり方を曲げなかったり、選手に対して厳しく接していたりするが、何のためにコーチに復帰したのかずっと分からないまま話が進んでいく。

女性教師と恋仲になるが、なぜ好きになったか分からず、急に唇を重ねていた。

女性教師もこのコーチのどこに惹かれたのか分からず、強いて言えばチームを勝ちに導いたくらいで、このコーチに人間的な魅力は見ていて感じない。

ジーン・ハックマンの演技は細かい心理を表現出来ていなく、表現する気もないくらいに淡々とざっくりしていて、心を揺さぶられるものは何一つなかった。

よく言えば、迫力があるコーチに見えるといったところか。

どうやって勝ちに導いたのか?

名コーチはその独特の練習方がそれぞれあるものだと思うが、それがほんのちょっとしか描かれてなく、結局一体どうやってチームを勝ちに導いたのかが分からない。

変わった独自の練習方なのか、勝負に必要な哲学やメンタルを叩き込んだのか、どうやって自分に従わせ、バラバラになっていたチームの心をまとめ、自分を慕うところまで持っていったのか…何も描かれていない。

強いて言えば練習に参加してなかった名選手のジミーが参加したからチームは強くなったが、それは単にジミーの手柄になってしまう。

ジミーはなぜチームに参加することになったのだろうか?

あれだけ練習にくる気がなかったジミーは一体何を見てコーチを助ける気になったのだろう?

ただコーチが住民から反対されている様を見ただけでコーチを助けるには動機がなさすぎる。

あまりに選手やコーチの心理的なでこぼこがなく平坦なまま、話だけが前に進んでいく印象だった。

元名選手だった父と息子の交流

元名選手で今は酒浸りで落ちぶれた中年男が、コーチに促されてチームをサポートする所は悪くない。

酒浸りで問題ばかり起こす父が、バスケットになると目付きが変わり、選手である息子に指示を飛ばす。

息子も今まで見たことのないような父の姿を目の当たりにして、心を揺さぶられる。

コーチのおかげで、父が立ち直るきっかけを持つことが出来た良いシーンだ。

しかしもう少し描いて欲しかった。

自分なんかもうだめだと、自分を卑下している人間が、かつて一番好きだったバスケットを通して、恐る恐るではあるが、徐々に自分に自信を取り戻していく様は、実に良い。

自分が息子だとしたら、嬉しいやら見直すやら尊敬するやらで、目頭が熱くなる。

そこがちょびっとしか描かれてないのが寂しい。

実話を元にした話

これは実話を映画化したようだが、なんとも難しい。

存在する話を忠実に全てを盛り込もうとしたのかもしれないが、一つ一つの話が掘り下げられていないので、全体として浅い印象になってしまっている。

あまり実話から離れたものも出来ないという意識で、話を省いたりは出来ないが、時間にはおさめなくてはいけないと、がんじからめになってしまったんだろうか?

大事な部分がごっそり抜けてしまっているように感じた。

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