サイダーハウスルール 英題:The Cider House Rules
監督:ラッセ・ハルストレム 131分 1999年
脚本:ジョン・アーヴィング
出演:マイケル・ケイン、トビー・マグワイア、シャーリーズ・セロン、他
“見て損はない☆3”理由と考察、その感想
マイケル・ケインの老獪な演技が光る
マイケル・ケイン演じる産婦人科が非常に味わい深い。
自分の信念を貫くためには、時に法を破ることもいとわず、破天荒で頑固だが心は子供達への愛情に満ちていrる。
そんな癖のある役をマイケルが老獪に、軽妙に表現している。
言う言葉もウィットに富んでいるものが多く、そこそこ楽しめた。
ホーマーの思春期物語
トビー・マグワイヤは強い主張はしないが心優しい青年という役ががぴったりだ。
そんなトビー演じるホーマーの成長物語のような気もするが、分かりやすい成長物語というよりは、思春期の家出物語だと思う。
一度親のもとを離れ、自分の目で世界を見てみたいという自我の芽生えであり、ラーチが手紙で言っていた「反抗期」という言葉は一理ある。
ホーマーは既に精神的にそこそこ成熟しており、初めての問題に直面しても、困るような素振りはほとんど見せない。
自分が思い描いていた理想など絵空事に過ぎず、実際体験してみても、そこまでの感動などないというような。
なんとかく知っていたというような感覚。
ホーマーもうすうす気づいているように思う。
それでも、自分は様々な体験をしたいんだと家を飛び出すのが若者の常だ。
言ってみればただの現実逃避で、長いバカンスに過ぎない。
それでも、回り道をして「これは現実逃避じゃないか」と気づけたとすれば、それは決して無駄ではなく、大いに価値のある回り道だろう。
ホーマーに関して言えば、産婦人科医という職で孤児院で働くことが自分に合っていることを再確認するために旅に出たとも言える。
ホーマーは確認を終え、元の孤児院に戻った。
それは恩師であり父でもあるラーチという存在と引き換えであったが、それでも遅すぎることはない。
長旅を終えたホーマーは、以前にも増して意欲的に自分の仕事に取り組めるはずだ。
ホーマーとラーチの近つ離れつの心の関係が実にいい。
どんなに離れようが、お互いのことを誰よりも理解している。
それは例え命を失ったとしても変わることはない。
少し間延びする
ホーマーの生き方だけでなく、堕胎や人種差別や浮気など、様々なテーマが盛り込まれており、考えさせられる所も多かった。
全体のストーリー自体は悪くないが、ホーマーの葛藤や気付きなどの描写をもう少しいれてほしかった。
ホーマーが問題に直面して呆然として考え込んだり、自分のいくべき道が分かってはっとしたり、そういう部分がほとんど見られなかった。
ホーマーの感情が全体的にのぺっとしていて、後半は少し間延びしてしまった。
自分のやるべきことに気付き、孤児院に帰ろうと思ったタイミングで、ラーチの訃報を聞くのがベストのタイミングだったんじゃないかと思った。
一足遅かった、というような。
そうでないと、ラーチが死んだから帰るという、自分が作った理由でない理由で帰ることになってしまう。
何を考えているのかを秘める青年だから、もう手術を行った時点で戻ることを決めていたのかもしれないが。
まあいずれにせよ、ラーチとホーマーの関係は味わい深いものだ。
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