映画「マルホランド・ドライブ(2001)」が“オススメ”の理由と考察、その感想

②オススメ☆4

マルホランド・ドライブ 英題:Mullholland Drive

監督-デヴィッド・リンチ 2001年 145分

脚本-デヴィッド・リンチ

出演-ナオミ・ワッツ、ローラ・ハリング、ジャスティン・セロー、他

映画「マルホランド・ドライブ」の簡単なあらすじ

ハリウッド女優を夢見て上京してきたベティは、借りるはずの叔母の家に到着すると、見知らぬ女性がシャワーを浴びていることに気づく。

リタと名乗るその女性は、車の事故に合ったことで記憶をなくし、なんとかこの家にたどり着いたのだった。

心優しいベティは、リタが記憶を取り戻せるよう協力を申し出る。

警察には言わずに、二人で真相を突き止めようとしていくが、謎は深まるばかりだった。

深まる謎と反比例するように、しだいに二人は心を通わせていくが・・・。

“オススメ☆4”の理由と考察、その感想

惹きつけられる重厚な映像

非常に惹き付けられる、雰囲気のある映像の見せ方で、常に良い緊張感を伴って見れる。

何気ない仕草をアップで長めに見せられたり、不気味さをもり立てるBGM、予測のつかない展開など、まるでホラー映画の何かが起こる前ぶりのような雰囲気が全編に渡っていて、なんとも心地よい。

これがデヴィッド・リンチ節というものか?

撮っている側に明確な意図があるために、それが惹き付ける要素として端々に出てきているのだと思う。

仮に、話の中身がなかったり、理解ができなかったとしても構わないとすら思わしてくれる。

話し自体はさほど気にしなくて良い

初めて見た感想としては、終盤部分、話の全体像がなんとなく見える様になってからの方が、自分としては興味が薄れてしまった。

話の大元になっている主人公の強烈な嫉妬や置かれている現実の酷さなどに、さほど深みを感じられなかったからだ。

ハリウッドが舞台ではあるが、スターになるために他を蹴落とす類いとしては、想像するに難しくない範疇であり、特に斬新さなどは感じない。

ともすれば、なんだそんなことだったのかとすら、思ってしまう。

と、ここで考えるのをやめてしまえばそれまでだが、意味の分からなかった序盤の意味が分かっていくにつれ、深みを感じるようになって行く。

難解に散りばめられた謎が頭の中でつながってくるにつれ、だんだんと主人公の心情が立体的に浮かび上がってくる。

やはり名監督というのは、さほど深い話しでなくても、その描き方の秀逸さによって、まるで別世界のように見せてしまうことが出来るのだろう。

主人公は決して超人でも狂人でもなく、言ってみれば凡人に近い。

普通の描き方をしてしまえば、ただのちょっとしたサスペンスで終わってしまうものを、ここまで膨らませて惹き付けて見せるのはすごいと思う。

ヒーローやヒロインばかりでなく、別段突飛ではない人をも深く描いて見せるというのも、映画監督のやり方としてはもちろんありなんだろう。

独自の映像手法自体が監督の個性であり味であり、伝えたいことが凝縮しているのだと改めて思わしてくれた。

細かい前半の意図が分かると頭にこびりつく

欲を言えば、大元になっている話しがもう少し身に詰まってくるものだったら最高だと思った。

それでも、見せ方自体が秀逸なのと難解さも合わせ、見終わったあとに頭にこびりつき、じわじわと効いてくる映画ではある。

前半の夢は見事に主人公の願望が反映されていて、無意識のうちに都合よく現実が改ざんされている様もリアルだ。

夢がリアルだと言うのはおかしいかも知れないが、夢とはああいうもので、おかしな世界でも夢だとはっきり気づかずに成立してしまっている。

人間の夢を描いた作品で、ここまで細部にこだわった映画は見たことがない。

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