映画「メランコリア(2011)」が“オススメ”の理由と考察、その感想

②オススメ☆4

メランコリア 英題:Melancholia

監督-ラース・フォン・トリアー 2011年 135分

脚本-ラース・フォン・トリアー

出演-キルティン・ダンスト、シャルロット・ゲンズブール、キーファー・サザーランド、他

“オススメ☆4”の理由と考察、その感想

不思議な作品

不思議な作品だ。

相変わらず、普通の映画では感じないような感覚を味わえる。

前半では盛大な結婚式が台無しになる様子、後半では地球の終末の人々の戸惑いなどが描かれている。

あんなに盛大な結婚式が、ジャスティンの情緒不安定な振る舞いで台無しになって行く様は、これは一体何を見せられているのかと思う。

役者のリアルに嫌な演技と共に、ぶち壊されていく。

ジャスティンは鬱病という事だが、実際にここまで情緒不安定でおかしいと、さすがにこの人は病気なんだろうという事は分かるし、常にこんな感じだったらここまでたくさん人は集まらないだろうと思う。

彼氏だってある程度理解していないとおかしいし、これじゃあ人前に出てはいけないレベルだから、治療はどうなってるのかと思う。

だから少しデフォルメしているのだろう。

後半の惑星がどんどん地球に近づいている様子は、実に怖い。

街のニュースが大騒ぎして、人々がパニックになる様子など一切描かず、大きな屋敷で静かに少しずつ、惑星が近づいてきて、これはもう終わりだ、という雰囲気が逆に怖い。

まだワーワー騒ぐ人達と一緒にいた方が、怖さは薄れるかもしれない。

現に惑星は近づいてきているから滅亡するけど、静かがゆえにそんな実感がない、というのが、実にリアルで嫌だ。

怖い夢を見ているようだ。

もし惑星が実際に地球に接近するなんてなったら、現実はもしかしたらこんな程度なのかもしれない。

実感がないけど、受け入れざるを得ない。

これほど嫌なことはない。

子供の前で、頼もしい父親を演じていたあの父も、いざとなると一人で逝ってしまうというのがリアルだ。

決して人格者という訳ではなく、うわべの感じはしていたから、そんな行動をしてもおかしくない。

鬱病を患っていたジャスティンが、家族の中で一番落ち着き払っている、というのも面白い。

日常に希望など感じていないのだから、そんな時に落ち着けるというのもうなずける。

むしろ、鬱傾向にある人は、心のどこかで常にそんな瞬間を待っているかのような心持なんだと思う。

地球が滅亡するかもしれない、ということを描くときは、地球が助からなければ話にならないが、平気で助からない結末に向かって行くというのが嫌だ。

嫌だが、こんな展開は中々見れないので貴重だ。

嫌だから良い。

最終的に地球がなくなったか否かは描かれていないが、ぞわっとする。

こういう危機的状況でもうろたえるな、というメッセージでもなく、地球なんてなくなってしまえ、という人間を批判したメッセージでもない。

何のメッセージ性もないか、というとそうでもなく、ないようである、あるようでない、という不思議な作品だ。

病気だったらしょうがない訳だから、人間の嫌な心の部分をえぐり出したわけでもない。

しかし、地球の滅亡はもうどうしようもないから、もうジタバタせずに落ち着き払っている方が人間の精神としては良いわけで、どちらかというとポジティブなメッセージかもしれない。

それが例え病気が関係していてもいなくても、人間として胸を張って死んでいける。

もしかしたら、人間が全員ジャスティンの様に落ち着き払っていたら、惑星は面白くないから引き返すかもしれない。

中々普通のアクション映画などが絶対に見せない展開に、一票。

最初の美しいスローの映像も含め、気持ちの悪い、へんてこな作品だ。

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